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BRAND · CH · EST. 1856

Eterna

エテルナ

1856年創業、自動巻ローター用の五球ベアリングを発明しETAの母体ともなった、スイス・グレンヘンの時計製造の老舗

COUNTRY
CH
FOUNDED
1856
HEADQUARTERS
スイス・グレンヘン
GROUP
シティチャンプ・ウォッチ・アンド・ジュエリー・グループ(Citychamp Watch & Jewellery Group)
FOUNDERS
ジョセフ・ジラール、ウルス・シルト
01 — OVERVIEW

概要

エテルナは1856年、スイス・グレンヘンに開かれた小さなエボーシュ工場を起源とする時計製造である。1948年に発表した五球ボールベアリング・ローターはその後の自動巻機構の標準として広く普及し、五つの球はそのままブランドのロゴとなった。1932年に分社化されたムーブメント部門は ETA SA として独立し、後にスウォッチグループの中核工房へと成長していく。1947年のコンティキ号探検でも採用され、KonTiki シリーズの起点となった。現在は香港シティチャンプ・グループの傘下で、Eternity、KonTiki、Heritage の三系統でコレクションを展開する。

02 — PHILOSOPHY

設計思想

What this house values
「実用に資する技術革新」

エテルナを貫いてきたのは、「実用に資する技術革新」と「外注に頼らない自製主義」という二つの軸である。19世紀後半に完全自社製の懐中時計を完成させて以来、ブランドはエボーシュ供給者にとどまらず、設計と量産を一貫して内製する道を選び続けてきた。

その姿勢が結実したのが、1948年の Eterna-Matic である。直径0.65mmの五球ベアリングをローター軸に組み込むという解は、当時の自動巻機構が抱えていた摩擦と摩耗の問題を一挙に解決した。重要なのは、この方式がのちに自動巻機構の標準として業界全体に広まった点である。五つの球をそのままロゴに据えたのは、発明の成功を自覚した経営判断であり、以後この五点がブランドの名刺となった。

意匠面では、複雑機構による誇示や装飾過多を避け、可読性と耐久性を優先する道を歩んできた。クロノメーター志向の精度規格、防水性と防塵性、視認性を担保するダイヤル設計。1947年のコンティキ号探検で、乗組員が宝飾的なドレスウォッチではなくエテルナの防水腕時計を携えたとされることは、このブランドが何を目指して設計してきたかを端的に物語る。

商業哲学としても、エテルナはマーケティングよりエンジニアリングを優先する性格を保ってきた。同じスイス独立系の中でも、パテックフィリップが伝統と複雑機構を、ロレックスが堅牢性とブランドエクイティを、それぞれ追求してきたとすれば、エテルナの軸足はムーブメント開発そのものに置かれてきた。2013年に発表された自社製 Cal. 39 が88種の派生展開を前提に設計されていることは、いまもブランドが「機構の地層」を作る側に立っていることを示している。

03 — STORY

物語

A narrative of the house

01グレンヘンの教師と医師

1856年11月7日、スイス北西部の小さな町グレンヘンで、ひとつの工場が産声を上げた。共同創業者は地元の医師ジョセフ・ジラールと、27歳の元教師ウルス・シルト。社名は「Dr. Girard & Schild」、業務はエボーシュ(時計用半完成ムーブメント)の製造だった。当時のスイス時計産業はラ・ショード・フォンやジュネーヴを中心とする分業構造のなかにあり、グレンヘンは小さな部品供給地のひとつに過ぎなかった。

1866年、ジラールが事業から退き、シルトが単独の経営者となる(1860年とする資料もある)。1870年には自動製造機械を導入し、1876年には完全自社製の懐中時計を発売する。エボーシュ供給者から完成時計の製造業者へ。この一歩が、後のエテルナの性格を決定づけることになる。1888年、シルトが世を去る。事業は息子のマックスとテオドール、弟のアドルフが継いだ。アドルフは1896年に独立して A. Schild SA(ASSA)を設立する。この分家は半世紀後、同じ枠組のなかでエテルナと合流する運命にあった。

02「永遠」という商標

「Eterna」の名は1889年に懐中時計の文字盤に初めて現れた。語源はラテン語の aeternus、「永遠」を意味する形容詞である。1906年には社名も「Eterna-Werke, Gebrüder Schild & Co.」へと改められた。

20世紀初頭のエテルナは、技術的野心を次々と形にしていく。1904年に可動式の安全ラグを持つ腕時計ケースの特許を出願し、1908年には世界初とされるアラーム付き腕時計の特許を取得して1914年に発売した。1930年には7.25×22.5mmのバゲット・ムーブメントを積む、量産品として最も細い腕時計を発表する。「世界初」「世界最小」を更新していく姿勢は、すでにブランドの性格として定着していた。

03ETAという分身

1929年に世界を襲った大恐慌は、スイス時計産業にも壊滅的な影響を与えた。需要急減、過剰生産、ダンピング競争を抑えるため、スイス政府と銀行団は1931年、ASUAG(スイス時計産業株式会社)という持株会社を設立し、業界の再編に乗り出す。

エテルナはこの再編の中核となった。1932年、社内のムーブメント部門は Eterna SA から分離独立し、ETA SA として再出発する。完成時計部門は引き続き Eterna SA の名で残り、ETA は Ebauches SA(ASUAG 傘下)の管轄に入った。1896年に独立したアドルフ・シルトの A.シルト社も、1978年に同じ枠組へ統合される。

つまり、いま世界中の時計ブランドに完成ムーブメントを供給するスウォッチグループの中核工場 ETA は、エテルナという母体から派生した分身である。

04五球のロータ

ジョン・ハーウッドが1923年に特許を出願したバンパー式自動巻、ロレックスが1931年に確立した全周ローター式自動巻。自動巻機構の進化は20世紀前半に大きく前進したが、軸受の摩擦と摩耗という根本問題は残されていた。

1948年、エテルナはこの問題に対する解を提示する。直径わずか0.65mmの五つのボールベアリングをローター軸の周囲に配置する、という単純な機構である。摩擦は劇的に減り、回転は自由になり、しかも遊びが少ない。婦人用の極小ムーブメントでも自動巻が成立するようになった。最初に搭載された Cal. 1198 を備える Eterna-Matic は、瞬く間に世界中で売れていく。エテルナはこの五球をそのままコーポレートロゴに据えた。控えめな円形に配された五点は、以後70年以上にわたり文字盤や王冠に小さく刻まれ続けている。発明者の控えめな署名のような佇まいだが、背景には産業全体を動かした実装がある。

05コンティキの航海

時計史と冒険史が交差した瞬間は、1947年4月28日のペルー・カヤオ港で始まった。ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールは、ポリネシア人の起源を南米に求める仮説を実証するため、バルサ材の筏「Kon-Tiki」で太平洋横断に挑んだ。

ブランドによれば、ヘイエルダールと乗組員はそれぞれエテルナの腕時計を腕に巻いていた。同社は遠征のために防水性を高めた腕時計を少数製作したとされる。101日後、約8,000kmの航海の末、筏はトゥアモトゥ諸島ラロイア環礁の珊瑚礁に乗り上げて停泊。乗組員は無事、エテルナの時計も動き続けていた。11年後の1958年、エテルナはこの航海を讃え「KonTiki」と名付けたコレクションを発表する。堅牢性と実用性を前面に出したスポーツウォッチ群は、その後ダイバーズ、フィールド、GMTへと派生し、今日に至るまでブランドの中核を担い続けている。

06経営の変遷から現在へ

1974年、シルト家は経営から退き、エテルナは ASUAG 傘下の General Watch Co. に編入される。1983年のASUAG-SSIH統合に続く再編で、実業家フランツ・ヴァスマーの PCW グループに移り、自立を取り戻した。1995年9月、ポルシェデザイン傘下の F.A.P. Beteiligungs GmbH が約2,500万スイスフランで買収。以後ポルシェデザイン名義の時計はエテルナで製造され、2004年には、計測時間を機械式の数字で表示するクロノグラフ Cal. 6036 が発表されたとされる。

2011年、香港証券取引所上場の China Haidian Holdings(2014年に Citychamp Watch & Jewellery Group へ改称)が新たな所有者となる。2013年にはモジュラー構造で88種の派生を可能にする自社製 Cal. 39 が発表された。近年は新作のペースが落ち着き、現行コレクションは Eternity、KonTiki、Heritage の三系統に整理されている。2025年、姉妹ブランド Corum が経営陣による買収でスイス資本に戻った後も、エテルナは Citychamp 体制下で歴史を編み続けている。

04 — HISTORY

歴史

A factual chronology

エテルナの起点は1856年11月、スイス・ジュラ山脈の麓グレンヘンに開かれたエボーシュ工場「Dr. Girard & Schild」である。共同創業者はジョセフ・ジラール医師と、当時27歳の元教師ウルス・シルト。1876年には完全自社製の懐中時計を発表し、独立した時計工房としての性格を強めていく。

1888年にウルス・シルトが世を去ると、息子のマックスとテオドール、そして弟のアドルフが事業を継いだ。アドルフは1896年に独立して A. Schild SA(ASSA)を設立する。「Eterna」の名は1889年に懐中時計の文字盤に現れ、1906年には社名にも採用された。20世紀初頭、エテルナは技術的野心を矢継ぎ早に形にしていく。1908年に世界初とされるアラーム付き腕時計の特許を取得して1914年に発売し、1930年には量産品として最も細いバゲット腕時計を発表した。

1932年、世界恐慌下でスイス時計産業の再編が進むなか、エテルナは法人を二分割する。完成時計部門は Eterna SA、ムーブメント部門は ETA SA としていずれも ASUAG 持株会社の傘下に入った。後年スウォッチグループの中核を担う ETA は、この時に生まれている。1938年には初の自動巻ムーブメントを発表したとされ、1948年には五球ボールベアリングを採用した自動巻機構 Eterna-Matic Cal. 1198 を投入。五つの球は同年からブランドのコーポレートロゴとなった。

1958年に KonTiki コレクションを発表。1974年、シルト家は経営から退き、ASUAG 内の General Watch Co. に編入された。1983年のASUAG-SSIH統合と1985年のSMH(現スウォッチグループ)への改称という再編の過程で切り離され、フランツ・ヴァスマーの PCW グループを経て、1995年9月、ポルシェデザイン傘下の F.A.P. Beteiligungs GmbH が約2,500万スイスフランで買収した。

2004年に計測時間を機械式の数字で示すクロノグラフ Cal. 6036、2009年に香箱をボールベアリングで支えるスフェロドライブ、2013年にはモジュラー構造で88種の派生を可能にする自社製 Cal. 39 を発表。2011年、香港証券取引所上場の China Haidian Holdings(2014年に Citychamp Watch & Jewellery Group へ改称)がポルシェ家から買収。2014年にはポルシェデザインとの時計製造の提携も解消されたとされ、2016年に創業160周年を迎えた。2025年、姉妹ブランドの Corum が経営陣による買収でスイス資本に戻った後も、エテルナは引き続き Citychamp 体制下に留まる。

05 — SERIES OVERVIEW

シリーズ概観

How the series relate

エテルナのコレクションは現在、Eternity、KonTiki、Heritage の三系統に整理されている。それぞれが「日常」「冒険」「歴史」という異なる文脈を担い、ブランドの広い射程を支えている。

KonTiki は1958年に登場した、ブランドの代名詞と呼ぶべきラインである。トール・ヘイエルダールの1947年の航海への敬意から名付けられ、堅牢な防水ケース、視認性の高い文字盤、回転ベゼルといったスポーツウォッチの基本文法を保持してきた。現行ラインは、自動巻、ダイバーズ、針で日付を示すフォーハンズ、ブロンズケース、レディース、クォーツへと細かく分岐する。1962年に回転ベゼルと200m防水を備えて登場したダイバー「Super KonTiki」のうち、1973年の仕様は現行の「1973 Super KonTiki」として復刻され、ブランドのアーカイブ深度を象徴する一作となっている。

Heritage は、ブランドの歴史的アイコンを現代的に再解釈するラインである。1948年のオリジナル Eterna-Matic を現代の寸法で蘇らせた「1948」(エッグシェルとサンブラッシュの2種の文字盤)と、1940年代のクロノグラフを思わせる「1940 Chronograph Telemeter」が属し、ヴィンテージ志向の文脈と現代の技術水準が交差する場となっている。

Eternity は、よりフォーマルでドレッシーな日常使い向けのライン。クォーツ・クロノグラフから自動巻の三針モデルまで、シンプルでクラシックな構成を中心に据える。ボールベアリング・ローターを発明した工房の系譜を、肩肘張らない価格帯で纏うことができる入口とも言える。

過去には Centenaire、Golden Heart(1958年)、Madison、Galaxis、Vaughan、Adventic、Tangaroa など、時代ごとに性格の異なるシリーズが展開されてきた。現行コレクションは、その膨大なアーカイブから精選された輪郭のように位置づけられる。

06 — SERIES

代表シリーズ

Lineages of one house
全3シリーズを見る →
07 — CALIBERS キャリバー一覧 →

主要キャリバー

Movements of the house
08 — CULTURAL

文化との接点

Where this house meets the wider world

エテルナを語る上で、文化との接点は1947年のコンティキ号探検に集約される。ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールが、南米からポリネシアへの渡来仮説を実証するためペルー・カヤオ港から出航したバルサ材の筏 Kon-Tiki。乗組員六名が腕に巻いていたのがエテルナの腕時計であり、101日・約8,000kmの航海ののち、塩水と高湿の環境下でも動作を続けていたと伝わる。

ヘイエルダールが残した著書『コン・ティキ号探検記』(1948年)は数十言語に翻訳され、1950年公開のドキュメンタリー映画は1951年の米アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞している。1958年に発表された KonTiki コレクションは、ブランドの記述によれば、この遠征での実地の使用を起点としている。スピードマスターの月面、サブマリーナーの深海と並んで、「実用に耐えた時計」が文化的記憶として残る典型例と言える。

1958年のレディース「Eterna-Matic Golden Heart」は、23金の錘を加えた当時世界最小の自動巻を積み、ブランドによればジーナ・ロロブリジーダやブリジット・バルドーが同社の顔となった。

— SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 THE BRAND | Eterna-watches 公式 · Eterna · 2026.10.13 閲覧 Eterna · 2026.10.13
  2. 02 公式 THE COLLECTION | Eterna-watches 公式 · Eterna · 2026.10.13 閲覧 Eterna · 2026.10.13
  3. 03 公式 FH - Eterna celebrates 160 years 公式 · Federation of the Swiss Watch Industry FH · 2026.10.13 閲覧 Federation of the Swiss Watch Industry FH · 2026.10.13
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