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ETERNA · SERIES

Heritage

ヘリテージ

医療用パルソメーターから軍用ダイバーまで、自社の歴史的名作を復刻するエテルナのコレクション。

01 — 概要 / SUMMARY

エテルナのヘリテージは、2010年に発足した復刻コレクションである。1856年創業の同社は、医療用のパルソメーター、トール・ヘイエルダールのいかだ遠征に由来するスーパーコンティキ、チェコ空軍向けの軍用時計といった名作を残してきた。ヘリテージは、これらを年号を冠した現代版として甦らせる枠である。初期はパルソメーター1942やスーパーコンティキ1973などETA系を積む限定モデルが中心であったが、現行は自社キャリバーの1940クロノグラフ・テレメーターと、自動巻機構の原点を記念する1948へと移っている。

02 — STORY · 物語

Heritage(ヘリテージ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

自らの引き出しを開ける

エテルナは1856年にグレンヘンで創業し、自動巻のボールベアリング・ローター機構や、後にETAとなるムーブメント製造で知られる。長い歴史のなかで、同社は技術上の先例と意匠の原型を数多く残してきた。2010年に発足したヘリテージは、その蓄積を現代の時計として甦らせるための専用ラインである。実用コレクションのコンティキやエテルニティとは別に、過去の名作そのものを復刻する枠として設けられた。新たに何かを生み出すのではなく、自らの引き出しを開けるという発想が、このシリーズの出発点にある。

02

2010年、二本から始まる

ヘリテージは2010年秋、二本の限定モデルで幕を開けた。一本はパルソメーター1942 (Ref. 1942.41.64.1177) である。文字盤外周に脈拍計の目盛りを備え、医療従事者の検脈を想定した1942年の原型を下敷きとする。脈拍計は30拍を計測して毎分の心拍数を読み取る目盛りで、聴診と並ぶ簡便な計測手段として医療の現場を念頭に置いていた。もう一本はスーパーコンティキ1973 (Ref. 1973.41.41.1230) である。1947年にトール・ヘイエルダールがいかだ「コンティキ号」で太平洋を渡った遠征に由来し、1958年から用いられた名を継ぐダイバーズである。200m防水で、イスラエル国防軍に支給されたとされる1973年型を範とした。復刻版はケース径を44mmへ広げつつ、回転ベゼルと判読性を重んじた文字盤という原型の性格を保つ。いずれも生産数を原型の年号にそろえ、1942本・1973本の限定とした点に、このシリーズの作法が表れている。

03

アールデコの角形と、チェコ空軍の角丸

2012年のバーゼルワールドでは、クロノグラフ1938 (Ref. 1938.41.45.1250) が加わった。36mm角のケースとゴールド系の印字を持つ、アールデコ期の角形クロノグラフの再現で、モジュール式のETA 2894-2を積む。2014年には、ミリタリー1939が続いた。1930年代にエテルナがチェコスロバキア空軍向けに納めたクッション型時計、通称「マイェテク」の復刻である。裏蓋に刻まれた「マイェテク・ヴォイェンスケー・スプラーヴィ」は軍の所有物を意味し、一部の個体にはラグへ交差する短剣の刻印が施されたと伝わる。復刻版はケースを原型の38mmから40mmへ拡大し、6時位置に日付窓を加え、鋼製 (Ref. 1939.41.46.1298) とPVD (Ref. 1939.43.46.1299) の二種を用意した。当時この種の軍用時計はロンジンやレマニアも供給しており、エテルナはその一社であった。

04

所有者の交代と自社キャリバー

2011年、エテルナはポルシェ一族から香港のチャイナ・ハイディアン (後のシティチャンプ) へと譲渡された。前後して同社は自社開発のモジュール式キャリバー「39」系を整え、ヘリテージにも展開していく。キャリバー39は5年を費やして開発されたとされる自社設計の基幹機で、ひとつの土台から多様な機能構成へ展開できる。現行の1940クロノグラフ・テレメーター (Ref. 7950.78.55.1261) は、その系列のCal. Maison Eterna 3916A (35石、パワーリザーブ60時間) を搭載する。もう一方の1948 (Ref. 2955.41.13.1387) はセリタSW300-1を積み、1948年に同社が確立した自動巻ローター機構を記念する。2009年には香箱に玉軸受を用いるスフェロドライブも発表しており、微小なボールベアリングへのこだわりは現在まで続く。公式スペックがムーブメントに「ボールベアリング1個」と明記する点に、その系譜への目配りがうかがえる。近年のエテルナは活動を絞っているが、ヘリテージは自社史をたどる窓として残されている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ヘリテージを貫くのは、自社の過去作を忠実に甦らせるという一点である。個別のモデルは医療用クロノグラフ、軍用時計、ダイバー、角形クロノと出自がばらばらで、サブマリーナーのように単一の輪郭を共有するわけではない。シリーズの一貫性は形ではなく、原型への忠実さという方法に宿る。

意匠面では、原型の年代を尊重した文字盤が基本となる。マイェテクの緑の蓄光アラビア数字、パルソメーターの脈拍目盛り、1938年型の角形といった特徴を、現代の防傷サファイアと組み合わせて再現する。ケース径は原型よりわずかに拡大し、38mm級を40mm前後へと改めるなど、視認性と現代の着用感を確保している。脈拍計やテレメーターといった目盛りは、もとは医療や距離測定の実務に供された機能であり、復刻では時代の用途を物語る意匠として文字盤に残されている。

視認性を重んじる姿勢も一貫する。ダイバーのスーパーコンティキでは、水中で時針と分針を取り違えないよう形状を分け、文字盤と針に十分な蓄光を施す。マイェテクの緑の数字も、暗所での判読を前提とした原型の設計を踏襲したものである。

限定モデルでは、生産数を原型の西暦に一致させる手法が用いられた。1942本、1973本、1938本、1939本という数字が、時計をその誕生年に結びつける。

機構面では、自動巻ローターのボールベアリングという同社の象徴が随所に意識される。現行モデルの公式スペックがあえて「ボールベアリング1個」を記すのは、その系譜を示す意思の表れといえる。派手な複雑機構や過度の大型化を避け、原型の性格を前面に出す抑制が、ロンジンやオメガなど他社の復刻路線とは異なる、技術と工業の記憶に根ざしたこのシリーズの輪郭をつくっている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2010-2014
ETA 2824-2 / 2894-2
汎用ETA機による復刻初期。三針とモジュール式クロノ。
現行
セリタ SW300-1
1948自動巻に採用する調達機。
現行
Cal. Maison Eterna 3916A
自社モジュール機。1940クロノ用、60時間。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2010

コレクション発足

1942.41.64.1177 1973.41.41.1230
パルソメーター1942とスーパーコンティキ1973で始動。
2012

1938クロノグラフ

1938.41.45.1250
アールデコの36mm角形クロノを復刻、ETA 2894-2。
2014

ミリタリー1939

1939.41.46.1298 1939.43.46.1299
チェコ空軍マイェテクの角丸復刻、鋼とPVDの二種。
現行

1940テレメーター

7950.78.55.1261
自社Cal. 3916A搭載のテレメーター・クロノ。
現行

1948オートマチック

2955.41.13.1387
自動巻ローター誕生を記念、セリタSW300-1。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Vaughan Big Date - Eterna 公式 · Eterna · 2026.08.15 閲覧 Eterna · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Eterna Granges 1856 Watch 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.08.15 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive