系譜と歴史
1. エボーシュ供給の転換点
ゼリッタの起源は1950年、ラ・ショー・ド・フォンでの創業にさかのぼる。当初はエボーシュ(半完成ムーブメント)とその部品を組み立てる供給業者であった。1980年代以降はETAの組立パートナーとして、2824-2をはじめとする同社ムーブメントの組立を担った。
転機は2002年に訪れる。ETAを擁するスウォッチ グループが、グループ外ブランドへの供給を段階的に絞る方針を打ち出したのである。2003年に経営権を取得したゼリッタは、自社ムーブメントの開発へ舵を切る。基礎としたのは、特許が満了して公知となったETA 2824の設計であった。SW200系は2000年代半ばに発表され、改良版のSW200-1は2008年に技術資料へ加わった。
2. 四つのグレード
SW200-1は、精度と仕上げの水準に応じて4つのグレードを持つ。これはETA系の区分を踏襲したものである。基準となるStandardは2姿勢で調整され、日差は±12秒から±30秒。次のSpécial(ETAのÉlaboréに相当)は3姿勢調整で±7秒から±20秒へ向上する。Premium(同Top)は5姿勢調整で±4秒から±15秒。最上位のChronometerは、COSC(スイス公式クロノメーター検査機関)の認定を受けた個体に与えられる。グレード間の差は、テンプやヒゲゼンマイ、耐衝撃装置、そして調整工程の密度に表れる。
3. 系譜と派生
SW200-1は単独のキャリバーではなく、一族の中核である。日付の有無で「a」(日付あり)と「b」(日付なし)が分かれ、手巻き化した仕様には「M」が付く。小秒針を9時位置に置くSW290-1、手巻きのSW210系など、機能別の派生が広がる。さらにETA 2892系を範とする薄型のSW300、クロノグラフのSW500、GMTのSW330などがある。ゼリッタは公知設計を出発点に、幅広いムーブメント群を整えてきた。搭載ブランドは独自ローターや仕上げを施すことが多く、同じ素体でも外観は一様でない。
4. 業界基盤としての現在
今日、ゼリッタは年間およそ150万個のムーブメントを生産し、その大半をSW200系が占めるとされる。供給網が限られるなか、ケースや文字盤の設計を変えずに移行できる互換性は、多くのブランドにとって現実的な選択肢となった。2026年にはパワーリザーブを65時間へ延ばしたSW200-2「Power+」が発表された。4Hzの運針を保ちながら、香箱と輪列を刷新している。長時間化を進める同時代の汎用ムーブメントとの間で、設計思想の差異がいっそう明確になりつつある。