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CALIBER · Omega

8906

自動巻 Automatic Analog GMT デイト Chronometer Co-Axial Escapement

2016年、Master Co-Axialの8900系に独立時針式GMTを与えた、オメガの自社製自動巻

振動数
25,200 vph · 3.5 Hz
パワーリザーブ
60 時間
石数
39 石
ムーブメント径
29 mm
Cal. 8906
movement · 8906 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 8906は、オメガが2016年に発表した自社製自動巻キャリバーである。Master Chronometerの基幹であるCal. 8900をベースに、24時間針による第2時間帯表示と、1時間単位で単独操作できる時針を加えたGMT仕様機である。振動数は25,200vph (3.5Hz)で、2つの香箱を直列に連結して60時間のパワーリザーブを確保する。コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイ「Si14」を組み合わせ、15,000ガウスの耐磁性とMETAS認証を両立した。初出はシーマスター プラネットオーシャン 600M GMTと同「ディープブラック」で、のちにチタン製地板を持つ派生機も生まれている。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference8906
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency25,200 vph (3.5 Hz)
Jewels39 石
Power reserve60 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景

オメガ初の自社製GMTムーブメントは、2012年にアクアテラ GMTで登場したCal. 8605/8615である。2007年のCal. 8500に始まるコーアクシャル・ファミリーの一員として、24時間で1周するGMT針を中央に加えた構成だった。

その翌年、オメガは15,000ガウスの磁場に耐える「Master Co-Axial」ムーブメントを発表する。2015年には、スイス連邦計量・認定局(METAS)と共同で完成品を検査する「Master Chronometer」認証を立ち上げ、その最初の対象がグローブマスターに載ったCal. 8900であった。高耐磁と完成品検査を前提に、ラインナップ全体を組み替える段階に入ったのである。

旅行者向けのGMTも、この新しい基準へ移す必要があった。Cal. 8906は、Cal. 8900を土台にGMT機構を組み込んだ派生機として、翌2016年に姿を現した。

2. 継承されたものと更新されたもの

オメガの技術資料は、Cal. 8605/8615とCal. 8906を1冊にまとめて扱っている。直径29.00mm(13リーニュ)という寸法や、GMT機構の基本的な構成には連続性が見て取れる。

一方で、脱進機の表記は「Co-Axial」から「Master Co-Axial」に改められた。調速系を非磁性素材で構成し、METASの8項目の試験を完成品の状態で通過することが、先代との本質的な違いとされる。機構の詳細は次項で扱うが、Cal. 8906の革新は新しい機構を加えることより、既存のGMT機を耐磁と検査の新基準に適合させた点にある。

3. 派生・展開

Cal. 8906の初搭載は、2016年のバーゼルワールドで発表されたシーマスター プラネットオーシャン 600M GMTである。43.5mmのステンレススチール版に加え、セラミック一体成形ケースの45.5mm「ディープブラック」も同時期に登場し、以後はカラーや限定仕様の展開が続いた。

2023年には、窒化ケイ素セラミック(Si3N4)をケースに用いた「ダークグレー」が発表された。搭載されたのは、地板と受けをグレード5チタンで製作した派生機で、Cal. 8906 Tiと表記されることが多い。基本仕様は共通のまま、ムーブメントそのものの軽量化を図った例である。

4. 業界での位置

2010年代後半以降、ローカル時刻の時針を単独で動かせる、いわゆる旅行者向けGMTは各社の主力機構となった。ロレックスが2018年に発表したCal. 3285も、同じ操作系を採用している。

そのなかでCal. 8906の特徴は、600m防水のダイバーズウォッチに組み込まれる例が大半である点に表れる。潜水計測と時差表示を1本に集約する用途のため、耐磁性と完成品検査の裏付けを持つ機械が選ばれたといえる。GMTを機能として加えるだけでなく、認証体系ごと移植したところに、オメガの設計思想がうかがえる。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

脱進機:Master Co-Axial

脱進機は、ゼンマイの力を一定の間隔で調速機構へ受け渡す部品群である。Cal. 8906は、英国の時計師ジョージ・ダニエルズが考案し、オメガが1999年に量産化したコーアクシャル脱進機を採用する。

一般的なスイスレバー脱進機は、ガンギ車の歯とアンクルの爪が滑り合いながら力を伝える。これに対しコーアクシャルは、同軸に重ねた2段のガンギ車と3つの爪を用い、力を主に押し出す方向で伝達する。摺動摩擦が小さいため、注油への依存が少なく、長期にわたり精度を保ちやすいとされる。オメガの技術資料では、本機の脱進機は「3 level Master Co-Axial」と記される。

テンプとヒゲゼンマイ

テンプは往復回転で時を刻む調速の要で、ヒゲゼンマイはその復元力を担う渦巻きばねである。本機はフリースプラング方式を採り、緩急針を持たない。テンプ外周の4本の調整ネジで慣性モーメントを変え、歩度を合わせる仕組みである。緩急針がヒゲゼンマイに触れないため、衝撃や経年で設定がずれにくい。

ヒゲゼンマイには、オメガが「Si14」と呼ぶシリコン製のものを用いる。シリコンは非磁性で軽く、温度変化による特性の揺らぎも抑えられる素材である。

振動数3.5Hzの意味

振動数は25,200vph (3.5Hz)で、テンプは1秒間に7回振動する。多くの現行機が採る28,800vph (4Hz)よりわずかに低い。オメガは、この値がコーアクシャル脱進機に最適な振動数であると説明している。振動数を上げれば姿勢差や外乱に強くなる一方、部品の摩耗とエネルギー消費は増える。3.5Hzは、その両者の釣り合いを取った設定と読める。

香箱とパワーリザーブ

動力源は、直列に連結した2つの香箱である。香箱は主ゼンマイを収める円筒形の容器を指す。直列配置は、1つの大型香箱に比べてトルクの推移をなだらかにし、持続時間の延長にも寄与する。パワーリザーブは60時間。自動巻機構はローターの両方向回転で巻き上げる方式で、日付は半瞬間送りとされる。

GMT機構

時差表示は、24時間で1周する中央の針と、単独で動かせる時針の組み合わせで成り立つ。リューズを2段目に引くと、分針と秒針を止めずに時針だけを1時間刻みで前後に送れる。24時間針はホームタイムを示し続けるため、渡航先で時針を合わせ直すだけでよい。時針の操作に日付が連動するとされ、日付変更線をまたぐ移動にも対応する。時刻全体の設定は3段目で行う。

耐磁性とMaster Chronometer

本機は1.5テスラ(15,000ガウス)を超える磁場にさらされても機能に影響しないとされる。軟鉄製のインナーケースで磁場を遮るのではなく、調速系の部品そのものに非磁性素材を用いる手法である。このため、シースルーバックと高耐磁の両立が可能になった。

認証は2段階で行われる。まずムーブメント単体が、ISO 3159に準拠したクロノメーター検定(日差-4〜+6秒)を受ける。次にケーシングした完成品が、METASの定める8項目の試験を受け、日差0〜+5秒などの基準を満たしてMaster Chronometerとなる。

寸法と仕上げ

直径は29.00mm、技術資料上の厚みは6.00mmである。ローターと受けはロジウムメッキ仕上げで、アラベスク状に広がるジュネーブウェーブ(コート・ド・ジュネーブ)が施される。チタン版では、サンドブラスト仕上げのグレード5チタンが地板と受けに用いられ、鈍いグレーの表情を見せる。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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