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CALIBER · OMEGA

1120

自動巻 Automatic Analog

1990 年代半ば、ETA 2892-A2 を磨き上げた、シーマスター 300M の自動巻

1120
movement · 1120
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 1120 は、ETA 2892-A2 を素体に Omega が改良した自動巻キャリバーである。1990 年代半ばに登場し、振動数 28,800vph (4Hz)、23 石、パワーリザーブはおよそ 42〜44 時間を備える。素体の調速組織を Glucydur テンワなどクロノメーターグレードへ引き上げ、COSC 認定を取得した。先代 Cal. 1109 の巻き上げ効率を改善した世代でもある。シーマスター・ダイバー 300M Ref. 2531.80、コンステレーション、デ・ヴィルなどに広く搭載され、コーアクシャルの Cal. 2500 へ引き継がれた。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerOmega
Reference1120
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels23 石
Power reserve44 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
AdditionalChronometer
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

汎用ベースという出発点

Cal. 1120 を理解する鍵は、その素体が ETA の 2892-A2 である点にある。2892 系は薄型かつ堅牢で、IWC やユリス・ナルダンなど多くの上級ブランドが基盤として採用してきた。Omega もまた、自社製のコーアクシャル機構を量産化する以前、機械式ラインの中核をこの汎用基盤に委ねていた。重要なのは、Omega が素体をそのまま使ったのではなく、調速と巻き上げに手を加えてグレードを引き上げた点である。

Cal. 1109 からの改良

Cal. 1120 の直接の前身は、同じ 2892-A2 を素体とする Cal. 1109 である。1109 は 1990 年代初頭のシーマスターに搭載されたが、自動巻き上げの効率に課題を抱えていたとされる。Omega はローター形状を見直し、効率を改善した改良版として 1120 を投入した。両者の世代交代は 1990 年代半ばに進み、移行期にはどちらの個体も併存した。

ボンドのシーマスターと普及

Cal. 1120 の名を広めたのは、シーマスター・ダイバー 300M である。とりわけ Ref. 2531.80 は、ピアース・ブロスナン演じるジェームズ・ボンドの腕に渡り、シリーズを通じて広く知られた。『ゴールデンアイ』(1995 年)で最初に映ったのはクォーツ仕様だが、自動巻の 2531.80 は後続作で着用され、Cal. 1120 を象徴する一本となった。コンステレーションやデ・ヴィルにも展開し、Omega の中核キャリバーとして定着した。

コーアクシャルへの橋渡し

2000 年代に入ると、Omega はジョージ・ダニエルズが考案したコーアクシャル脱進機の量産化に踏み切る。この新機構を同じ 2892 基盤へ組み込んだのが Cal. 2500 であり、シーマスター 300M は 2006 年ごろ Cal. 1120 から 2500 へと移行した。Cal. 1120 は、Omega が汎用基盤から自社機構へ軸足を移す直前の、最後の世代を担ったキャリバーといえる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

基盤となる ETA 2892-A2

Cal. 1120 の素体は、ETA が手がける自動巻ムーブメント 2892-A2 である。直径 25.6mm、厚さ 3.6mm の薄型設計で、上級機の基盤として産業全体に広く普及した。Omega はこのエボーシュ(半完成のムーブメント素体)を受け取り、調速機構と自動巻機構に手を加えて自社の基準へ引き上げた。素体の石数は 21 石だが、Cal. 1120 では 23 石へと増やされている。

振動数は 28,800vph (4Hz) である。テンプ(調速を担う回転体)が 1 時間に 28,800 回振動することを意味し、秒針はほぼ滑らかに運針する。高い振動数はテンプの保持する角運動量を高め、姿勢差や外乱に対して周期が乱れにくいという利点を持つ。

調速機構

テンプには 3 本アームの Glucydur 製テンワが用いられる。Glucydur はベリリウム銅合金で、温度や磁気の影響を受けにくく、寸法安定性に優れる。ヒゲゼンマイ(テンプの周期を司る渦巻きバネ)には Nivarox が採用され、Etachron 緩急機構によって歩度を微調整する。これらは ETA のクロノメーターグレードに準じた調速組織であり、COSC(スイス公認クロノメーター検定協会)の検定に対応する。COSC は複数姿勢・複数温度での日差を測定し、おおむね日差 -4〜+6 秒の範囲を合格基準とする。文字盤に「Chronometer」表記を持つ個体は、この認定を受けた証である。

自動巻機構と仕上げ

ローター(回転錘)はボールベアリングで支持され、両方向巻き上げに対応する。先代 Cal. 1109 では巻き上げ効率に課題があったとされ、Cal. 1120 ではローター形状が見直された。石数の増加も、巻き上げ機構の効率化と関係するとされる。

2892-A2 は地板の上に各機構を層状に組む構成で、部品点数を抑えた合理的な設計を持つ。この素性が、薄さと堅牢性の両立を支えている。実用面では手巻き対応、ハック機能(秒針停止)、クイックセット(日付の早送り)を備える。耐衝撃機構には Incabloc が用いられる。仕上げではローターや受けにコート・ド・ジュネーブ装飾が施され、装飾性を高めている。パワーリザーブは公称でおよそ 42〜44 時間とされ、出典により値が分かれる。素体が広く流通した汎用基盤であるため、保守部品の入手性が高く、長期の運用に適する設計である。オーバーホール周期は一般に数年とされ、定期的な整備によって安定した精度を保ちやすい。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references