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CALIBER · OMEGA

8900

自動巻 Automatic Analog

2015年に登場した、METASによるMaster Chronometer認証の第一世代を担う、オメガの基幹自動巻

8900
movement · 8900
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

オメガ・キャリバー8900は、2015年のバーゼルワールドで発表された自動巻ムーブメントである。コーアクシャル脱進機、シリコン製ヒゲゼンマイ「Si14」、二重香箱を備え、磁場15,000ガウス下でも作動を維持する設計が特徴。本機を搭載するグローブマスターは、スイス連邦計量・認定局METASによる新認証「Master Chronometer」を世界で初めて取得した個体となり、ムーブメント側の8900もこの新世代規格の出発点となった。振動数25,200vph (3.5Hz)、パワーリザーブ60時間。アクアテラ、プラネットオーシャン、コンステレーション、デ・ヴィルなど、現行ラインの中核を担う。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerOmega
Reference8900
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency25,200 bph (3.5 Hz)
Jewels39 石
Power reserve60 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. Cal.8500からの世代交代

オメガがコーアクシャル脱進機を量産機に組み込んだのは、1999年のデ・ヴィルが最初である。当初の機構は既存のETA系ムーブメントへの組み込みであり、コーアクシャルの設計思想と土台ムーブメントとの間に折り合いをつける必要があった。この制約を抜本的に解消するために設計されたのが、2007年に発表されたCal.8500である。コーアクシャルを前提に輪列・脱進機・調速機を再設計した、オメガにとって初の自社製コーアクシャル自動巻となる。

Cal.8500は数次の改良を経て世代を更新した。2011年頃にはシリコン製ヒゲゼンマイ「Si14」を採用したいわゆる第二世代、2013年には非磁性合金の採用範囲を広げて15,000ガウス耐磁を実現した「Master Co-Axial」仕様へと進化する。Cal.8900は、この耐磁化された8500系の延長線上に位置づけられる新世代キャリバーであり、文字盤側ではなくムーブメントの設計思想としてMaster Chronometer認証を取りに行くために再構築された一機である。

2. Master Chronometer認証の起点

Cal.8900の最大の意義は、性能数値の更新そのものよりも、新たな認証基準「Master Chronometer」の起点となった点にある。Master Chronometerは、オメガとスイス連邦計量・認定局(METAS)が共同で定めた認証で、ISO 3159に基づくCOSCクロノメーター認定をパスしたムーブメントを、ケース封入後にあらためて8項目で検査する。15,000ガウスの磁場曝露、6姿勢での日差測定、規定圧力下での防水試験、パワーリザーブの実測などを経て、日差0/+5秒に収まる個体だけが認定される。

2015年のバーゼルワールドで発表されたCal.8900搭載のグローブマスターは、この新認証を世界で初めて取得した時計となった。装着時の実環境を想定した試験を盛り込むこと、磁場耐性を仕様として担保することの双方を、産業規模で実装した点に同認証の独自性がある。

3. 派生キャリバーへの展開

Cal.8900は単一のムーブメントというより、ファミリーの基幹である。素材違いの兄弟機Cal.8901(18Kセドナゴールドのローター・受け)、GMT機能を加えたCal.8906、スケルトン化されたCal.8402などに加え、近年では2024年発表のコンステレーション・オブザバトリー向けCal.8915(18Kムーンシャインゴールドのローター・受け)まで、十数の派生機が枝分かれする。シーマスター・アクアテラ150M、プラネットオーシャン600M(43.5mmモデル)、コンステレーション41、デ・ヴィル・アワービジョンなど、現行コレクションの中核は、いずれもこの8900系列で支えられている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

1. コーアクシャル脱進機

Cal.8900を語るうえで最初に置くべきは、ジョージ・ダニエルズが1970年代に考案したコーアクシャル脱進機である。一般的なスイス式アンクル脱進機が、ガンギ車の歯先とアンクル爪石の間で「摺動(しゅうどう)」によってインパルスを伝えるのに対し、コーアクシャルは三つの爪石と二段のガンギ車を用いて、ロック機能とインパルス機能を分離する。インパルスは滑り運動ではなく、ほぼ放射方向の押圧で伝達されるため、摺動摩擦が大幅に減る。注油への依存度が下がり、潤滑油の経年劣化が精度に及ぼす影響も小さくなる。1999年の量産化以降、機構そのものは段階的に改良が重ねられ、Cal.8500世代では接触面の幾何が見直された。8900はこの蓄積の上に立つ。

2. テンプとシリコン製ヒゲゼンマイ

調速機は、緩急針を持たないフリースプラング(自由テンプ)構成。テンプ輪上の慣性モーメント調整ねじによって等時性を整える方式で、衝撃時の振り角変動への耐性に優れる。ヒゲゼンマイには、オメガが「Si14」と命名したシリコン製を採用する。シリコンは非磁性であり、温度変化に伴う弾性係数の変動が金属製ヒゲに比べて小さい。さらに、量産工程でのフォトリソグラフィ加工により、巻き上がりの幾何精度を一定水準で揃えやすい。これらの特性が、磁場曝露・温度変動・経年いずれの軸でもレートの安定をもたらす。振動数は25,200vph (3.5Hz)。一般的な28,800vphよりやや低いが、ロー振動数化はテンプの慣性と振り角を確保しやすく、コーアクシャルの三爪インパルスとも相性が良いとされる。

3. 二重香箱と自動巻機構

動力源には、香箱を直列に2つ連結する「ツインバレル」方式を採る。直列接続は瞬間トルクではなく持続時間を稼ぐ構成で、Cal.8800系の単一香箱(パワーリザーブ55時間)に対し60時間を確保する。自動巻機構は両方向巻上げで、ローターは独立した宝石軸受で支持される(ボールベアリングではない)構造を継承する。回転音が静かで、長期使用時の摩耗の出方も穏やかとされる。輪列の仕上げにはコート・ド・ジュネーブを変形させた「コート・アラベスク」と呼ばれる螺旋状の波目模様が施され、サファイアシースルーバックから観察できる。石数は39石、ムーブメント径は29.0mm。

4. 二つの認証

ムーブメントは、まずスイス公認クロノメーター検定協会(COSC)で日差-4/+6秒のISO 3159基準に照らされ、合格した個体だけがビエンヌの工場に戻り、Master Chronometer認証ラインに送られる。ここでは15,000ガウスの電磁石への曝露、6姿勢・2温度の日差測定、防水試験、パワーリザーブの実測など、計8項目の試験を通る。要件は日差0/+5秒。試験はムーブメント単体ではなく、ケーシング済みの完成品で行われる点が、従来のクロノメーター認定との大きな違いとなる。Cal.8900はこの認証スキームの第一世代として、新世代オメガの精度規格の出発点を定めた一機である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 3 本のリファレンス

This caliber appears in 3 references