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CALIBER · Omega

321

手巻 Handwound Analog クロノグラフ

1942年レマニア設計の27 CHRO C12を源流に、月面へ至ったオメガのコラムホイール式手巻きクロノグラフ

振動数
18,000 vph · 2.5 Hz
パワーリザーブ
44 時間
ムーブメント径
27 mm
Cal. 321
movement · 321 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 321は、レマニアのアルベール・ピゲが設計した27 CHRO C12を起源とし、1949年にオメガがこの名で呼び始めた手巻きクロノグラフである。直径27mm、18,000vph (2.5Hz)、17石で、コラムホイールと水平クラッチを備え、30分・12時間積算計を持つ。1957年の初代Speedmaster Ref. CK2915に搭載され、ジェミニ・アポロ計画で宇宙へ渡った。1968年にCal. 861へ役割を譲ったのち、2019年に再製造が始まり、パワーリザーブ55時間の仕様で現行のSpeedmaster Calibre 321に搭載されている。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference321
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency18,000 vph (2.5 Hz)
Power reserve44 h
Movement ⌀27 mm
HandsSmall Seconds, Hours, Minutes
ChronographChronograph, Column wheel
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. レマニアで生まれた12リーニュ

Cal. 321の原点は、ルマニア(Lemania)の技術者アルベール・ピゲ(Albert Piguet)が手がけた27 CHRO C12である。1942年に完成したこのムーブメントは、名称の「27」が直径27mm、「CHRO」がクロノグラフ、「C12」が12時間積算計を示す。腕時計用のクロノグラフとして小径に収めた設計で、2カウンター仕様の兄弟機とともに展開された。

ルマニアは1930年代初頭、オメガとティソが結成したSSIHグループに加わっている。つまりCal. 321は、純然たる自社開発でも外部調達の汎用エボーシュでもない。グループ内の専業工房が設計・製造し、オメガが独自の番号で専用に用いた、第三の類型に属するキャリバーである。

2. 1946年の改良と「321」への改称

1946年、27 CHRO C12にはインカブロック耐衝撃装置と耐磁性のヒゲゼンマイが加えられたとされる。この改良仕様が1949年、オメガの番号体系でCal. 321と名づけられた。ルマニア側では同系統が2310の名で知られ、21石・スワンネック緩急針を備える仕様は2320として区別される。ただしこれらの呼称には後年の遡及的な整理が含まれるとされ、資料によって表記が揺れる。

Cal. 321はオメガの各種クロノグラフに搭載され、1957年には初代Speedmaster Ref. CK2915に採用された。モータースポーツでの計時を想定した時計の心臓部であり、この時点ではまだ宇宙との接点はない。

3. 月面への到達と世代交代

1960年代、NASAは有人宇宙飛行に向けて複数社のクロノグラフを評価し、1965年にSpeedmasterを飛行用に採用した。Cal. 321を積んだSpeedmasterはジェミニ計画とアポロ計画で用いられ、1969年のアポロ11号ではバズ・オルドリンのRef. 105.012が月面に至っている。

一方でオメガは1968年、Speedmasterのムーブメントをカム式のCal. 861へ切り替えた。製造工程の合理化が理由とされる。Cal. 321は宇宙開発史の象徴となるのと前後して、量産の現場から退いたことになる。

同じ27系の設計は、その後も他社の高級クロノグラフの基盤として受け継がれた。パテック フィリップRef. 3970のCH 27-70 Q、ヴァシュロン・コンスタンタンのCal. 1141などがその例である。一つの設計が、異なるブランドの思想のもとで別々の表情を得た系譜といえる。

4. 2019年の再製造

2019年1月、オメガはCal. 321の再生産を発表した。コードネーム「Alaska 11」のもと、専任チームが2年以上をかけて設計資料を精査し、アポロ17号でユージン・サーナンが着用したSpeedmaster ST 105.003をトモグラフィー(断層撮影)で走査して各部を復元したという。基準に据えたのは第2世代のCal. 321の仕様である。

製造はビエンヌの本社に設けられた専用工房で行われ、一人の時計師が組み立てから完成までを担う体制とされる。同年のプラチナモデルを皮切りに、2020年にステンレススチールの39.7mmモデル(Ref. 311.30.40.30.01.001)、2022年にはSpeedmaster誕生65周年を記念したキャノープスゴールドの38.6mmモデル(Ref. 311.50.39.30.01.001)が加わった。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

コラムホイールと水平クラッチ

Cal. 321は直径27mm(12リーニュ)の手巻きクロノグラフである。クロノグラフの発停とリセットは、コラムホイール(円柱状の歯車で、各レバーの動作順序を司る部品)が制御する。プッシャーを押すたびにコラムホイールが一定角度ずつ回り、柱の間にレバーの先端が落ち込むか否かで、スタート・ストップ・リセットが切り替わる。カム式に比べて加工と調整に手間を要するが、動作の順序が機械的に保証され、操作感が明確になる方式である。

動力の伝達は水平クラッチ(ラテラルクラッチ)による。常時回転する秒車と同軸の駆動車と、クロノグラフ秒車の間に中間車を置き、この中間車を横方向に揺動させて噛み合わせる。噛み合いの瞬間にクロノグラフ秒針がわずかに揺れることがあるため、歯形と噛み合い深さの調整が仕上がりを左右する。伝達経路を裏側から目視できる点は、調整と整備の見通しの良さにもつながる。

積算計は30分計と12時間計を備える。分積算車の位置決めには、原型の27 CHRO C12が板ばね式のジャンパーを用いたのに対し、Cal. 321ではワイヤースプリングとクリックの組み合わせに改められたと伝わる。

18,000vphという調速

テンプ(時計の振り子に相当する輪)は18,000vph (2.5Hz)で振動する。1秒間に5振動、すなわち秒針は1秒を5ステップで刻む。現代に多い28,800vph (4Hz)は振動の細かさによって姿勢差や外乱の影響を抑えやすいとされ、18,000vphは部品の摩耗と潤滑油の消耗を穏やかにする方向に働く。当時の手巻きクロノグラフとしては標準的な設定であり、長期運用を前提とした選択と読むことができる。

ヒゲゼンマイ(テンプを往復させる渦巻き状のばね)はブレゲ式である。外端を持ち上げて巻き上げ曲線を与える形状で、ヒゲゼンマイが同心的に伸縮し、振り角の変化による等時性の乱れを抑える。インカブロック耐衝撃装置と組み合わせたこの調速系が、Cal. 321の標準仕様となった。

石数・パワーリザーブ

石数は17石で、軸受けとして必要な箇所に人工ルビーを配した構成である。パワーリザーブはオリジナルで約44時間とされる。2019年の再製造版についてオメガは55時間と公表しているが、両者の差をもたらした技術的な変更点について、公式の詳細な説明は確認できない。

再製造版の仕様と仕上げ

再製造版は、コラムホイール、水平クラッチ、ブレゲヒゲといった構造を原型に倣い、地板と受けには18Kセドナゴールドの色調を与えるPVD仕上げを施す。受けやレバーの形状は原型を踏襲しつつ、仕上げと刻印はより鮮明になったと評される。

現行オメガの多くを特徴づけるコーアクシャル脱進機(Co-Axial Escapement)は採用されず、Master Chronometer認定も受けていない。これは技術的な後退ではなく、原設計への忠実さを優先した意図的な選択である。同じSpeedmasterの系譜にあって、Cal. 3861が現代的な精度と耐磁性を追求するのに対し、Cal. 321は歴史的構造の再現を役割として担う。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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