03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. レデュースドとともに歩んだ系譜
Cal. 3220の前史は1988年にさかのぼる。この年オメガは、39mmケースの自動巻スピードマスターを発表した。のちに「レデュースド」の名で知られるこのモデルに載せられたのがCal. 1140である。三針自動巻のベースにクロノグラフ・モジュールを重ねる構成で、手巻のCal. 861系とは別の道筋から、スピードマスターに自動巻を与えた。
その後、モジュールはデュボア・デプラのDD 2020を保ったまま改番が続く。1996年には機械をロジウムメッキ仕上げとしたCal. 1141が、1990年代後半にはベースをETA 2892-A2とするCal. 1143が登場した。Cal. 3220はこの系譜の最終段にあたり、2000年に1143を置き換えたとされる。オメガの技術資料では、1140、1141、1143、3220のモジュール部品が同一の部品表に並記されており、基本設計の連続性がうかがえる。
2. 3220で変わったもの
オメガの歴史家として知られるマルコ・リション(Marco Richon)の年表では、3220への移行に際してクロノグラフ機能の改良と装飾が施されたと記されていると伝わる。一方で、変更は主に外観面にとどまるとする専門メディアの見方もある。部品表を見ると、クロノグラフ機構板や帰零レバー、ローターなどに3220専用の部品番号が与えられており、細部の見直しがあったことは確かである。
2003年には改良版の3220Aが登場したとされる。ただし、3220と3220Aの具体的な差異を示す公的な資料は確認できていない。2000年代半ばには、レデュースドにサファイアクリスタルを備えたRef. 3539.50も加わり、Cal. 3220は2000年代末までこのシリーズを支えたとされる。
3. モジュール式クロノグラフという選択
1980〜1990年代のスイス時計産業では、三針自動巻にモジュールを加えてクロノグラフ化する手法が広く用いられた。既存ベースの供給体制と実績を活かしつつ、比較的薄く仕立てられる点がこの方式の特質である。ジュウ渓谷に拠点を置くデュボア・デプラは、この分野を専門とする工房として知られる。
同時期のオメガは、Valjoux 7750を基にした一体型クロノグラフも一部のスピードマスターに用いていた。39mmの「スピードマスター・オートマティック」に載ったCal. 1155がその例で、積算計の配置も異なる設計解を示す。その後オメガは、2011年に自社開発の一体型コーアクシャル・クロノグラフCal. 9300を発表する。Cal. 3220は、それ以前の時代に、汎用ベースと専業メーカーのモジュールの組み合わせでスピードマスターの裾野を広げた世代の完成形と位置づけられる。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
ベースムーブメント:ETA 2892-A2
Cal. 3220の基盤は、薄型自動巻として定評のあるETA 2892-A2である。オメガはこのベースをCal. 1120として三針モデルにも用いており、3220の技術資料も基本ムーブメントの整備はCal. 1120の資料を参照するよう指示している。モジュールを含むムーブメント全体の外径は13¼リーニュ(30mm)、厚さは6.50mmである。
調速部には、グリュシデュール(Glucydur、ベリリウム銅合金)製のテンプ(時計の周期を刻む振り子に相当する輪)を用いる。緩急調整はETAのエタクロン(Etachron)方式で、ヒゲゼンマイの固定点と緩急針を偏心ネジで微調整する。振動数28,800vph (4Hz)は、テンプが1秒間に8回振れることを意味し、クロノグラフ秒針は1/8秒刻みで進む。歩度測定に用いるリフト角は51°と規定されている。
自動巻機構はボールベアリングで支持されたローターを用い、切替車(リバーサー)によって両方向の回転を巻き上げに変える。パワーリザーブは公式技術資料で40時間とされる。
クロノグラフ・モジュール:DD 2020
文字盤側に載るDD 2020は、中央にクロノグラフ秒針、9時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計を配する。ベースの中央秒針の役割をクロノグラフに譲ったため、通常運針の秒は中間秒車と秒カナを経て3時位置のスモールセコンドへ移される。秒カナには摩擦バネが組まれ、輪列の遊びによる針のふらつきを抑える。モジュールの外径がベースより大きく、積算計が外周寄りに並ぶのはこの構成に由来するとされる。
発停はクラッチ車を揺動レバーで噛み合わせる方式で、部品構成からはコラムホイールではなくカムで動作を切り替える設計とみられる。30分計と12時間計は瞬時送りではなく、計測中に連続して進む。帰零ハンマーは偏心ネジで工場調整されており、整備時にこれを緩めない限り再調整は不要とされる。石数47石は、ベースの21石に加え、モジュール側の軸受にも石を配した結果の数字とみられる。
時刻合わせと保守
リューズを2段目に引くとスモールセコンドが停止し、秒単位の時刻合わせができる。技術資料は、分針を目標の目盛りより30〜45秒進めてから合わせるよう指示している。運針の力が3つの車を経て針に伝わるため、その噛み合いの遊びを見込む必要があるからで、これは3220に固有の手順とされる。
整備時には、モジュールをスタート状態にしたうえで完全に分解する。エタクロンの調整には専用の鍵が必要で、ベースとモジュールを分けて扱う点に、モジュール式ならではの保守の性格が表れている。