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CALIBER · Omega

8938

自動巻 Automatic Analog デイト ワールドタイム Chronometer Co-Axial Escapement

Cal. 8900系に24時間ディスクと単独調整式の時針を組み込んだ、オメガのマスター クロノメーター・ワールドタイマー

振動数
25,200 vph · 3.5 Hz
パワーリザーブ
60 時間
石数
39 石
ムーブメント径
29 mm
Cal. 8938
movement · 8938 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 8938は、オメガが自社開発したコーアクシャル(Co-Axial)脱進機搭載の自動巻ワールドタイマー・キャリバーである。Cal. 8900を基礎とし、振動数25,200vph (3.5Hz)、39石、ツインバレルによる60時間のパワーリザーブを備える。スイス連邦計量・認定局(METAS)が認証するマスター クロノメーターで、15,000ガウスの耐磁性をもつ。回転する24時間ディスクと、1時間単位で単独調整できる時針によって世界24都市の時刻を示す。2019年のシーマスター アクアテラ ワールドタイマーで登場し、2025年にはプラネットオーシャン ワールドタイマーにも搭載された。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference8938
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency25,200 vph (3.5 Hz)
Jewels39 石
Power reserve60 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes, Seconds, World Time
DateDate
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景

Cal. 8938の源流は、2007年に登場したオメガの自社製自動巻Cal. 8500にある。コーアクシャル脱進機を前提に一から設計されたこの系統は、2015年にグローブマスターのCal. 8900で転機を迎えた。スイス連邦計量・認定局(METAS)と共同で定めたマスター クロノメーター認定の最初の搭載機となったのである。以後、89xx系は時刻表示のみの基本形を軸に、日付、GMT、年次カレンダーなどの派生を広げていく。

複数時間帯の表示について、オメガには先行する経験があった。アクアテラGMTなどに積まれたCal. 8605は、24時間針と単独調整式の時針を組み合わせた構成である。Cal. 8938はこの「時針だけを動かす」という発想を受け継ぎ、24時間の情報を針ではなくディスクで示す方向へ発展させた機械と位置づけられる。

2. プラチナの先行機とCal. 8939

ワールドタイマーとしての初出は、Cal. 8938ではなく兄弟機のCal. 8939である。2017年のバーゼルワールドで、アクアテラ誕生15周年を機にプラチナケースの限定87本が発表された。文字盤中央にはグラン・フー・エナメルの世界地図が置かれた。ローターとテンプ受けを金製とした仕様がCal. 8939の名で区別される。当時の専門メディアは、これをオメガ初のワールドタイマーと紹介している。スポーツウォッチを主軸とするブランドにとって、複雑な表示をもつ機種は異例の存在と受け止められた。

3. Cal. 8938の登場と展開

2019年、ワールドタイマーはレギュラーコレクションに組み込まれた。ステンレススチール仕様に搭載されたのがCal. 8938であり、同時発表の18Kセドナゴールド仕様はCal. 8939を継続した。文字盤中央の地図はグレード5チタン板をレーザーアブレーションで彫り込む手法に改められ、量産に適した構成となった。

2023年にはチタンケースやグリーンのセラミックベゼルを備えた仕様が加わった。同年のシーマスター75周年記念「サマーブルー」では、記念の刻印を施した裏蓋が採用されたとされる。2025年には、45.5mmのブラックセラミックケースをもつプラネットオーシャン ワールドタイマーが登場した。600m防水のダイバーズモデルへの搭載は、この機械が都市的なアクアテラに限らない汎用性をもつことを示している。

4. 業界での位置

ワールドタイマーの古典的な形式は、1930年代にジュネーブの時計師ルイ・コティエが確立したとされる。都市名リングと24時間リングを文字盤外周に配し、リューズやプッシャーで都市リングを回して基準地を切り替える方式で、現在も多くのブランドが採用している。

これに対しオメガは、都市名リングを固定し、中央の24時間ディスクを回転させる構成を選んだ。移動先では時針だけを1時間単位で動かせばよく、操作はGMTウォッチに近い。この点については、伝統的なワールドタイマーとは別物だとする論評もある。一方で、既存の89xx系の時針単独調整機構を活かし、耐磁性と精度基準を共有したまま多時間帯表示を実現した設計として評価する見方もある。いずれにせよ、世界時間表示を量産のマスター クロノメーターに統合した点に、この機械の性格がよく表れている。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

基本構成と数値

Cal. 8938は直径29mm、39石の自動巻ムーブメントである。振動数は25,200vph (3.5Hz)で、テンプは毎秒7回振動する。一般的な28,800vph (4Hz)よりわずかに低い設定は、Cal. 8500以来の系統に共通する。コーアクシャル脱進機との組み合わせを前提に選ばれた値とされる。

動力源は2つの香箱(主ゼンマイを収める円筒形の部品)を用いるツインバレル構成で、60時間のパワーリザーブを確保する。複数の香箱に動力を分散させることで、巻き上げ量の変化によるトルク変動を抑える効果が期待される。自動巻機構はローターの両方向回転で巻き上げる方式である。

コーアクシャル脱進機

脱進機は、ゼンマイの力を一定の間隔で解放し、テンプに衝撃を伝える機構である。英国の時計師ジョージ・ダニエルズが考案したコーアクシャル脱進機は、同軸に重ねた2段のガンギ車と、3つの爪石をもつアンクルで構成される。一般的なスイスレバー脱進機が爪石とガンギ歯の滑り摩擦で力を伝えるのに対し、コーアクシャルは押し込むような接線方向の衝撃で伝達する。これにより摺動面の摩耗と潤滑油への依存が小さくなり、長期にわたる精度の安定が図られる。

テンプとヒゲゼンマイ

テンプはフリースプラング方式で、緩急針をもたない。ヒゲゼンマイの有効長を変えるのではなく、テンプ外周の調整ウェイトで慣性モーメントを変えて歩度を合わせる。衝撃や経年で調整がずれにくいのが利点である。テンプは両端で支えるフルブリッジで保持され、片持ち式より姿勢差や衝撃に対する安定性が高いとされる。

ヒゲゼンマイにはシリコン製が用いられる。シリコンは非磁性で温度変化の影響も小さく、磁気帯びによる歩度の乱れを根本から避けられる。

耐磁性とマスター クロノメーター

Cal. 8938は、脱進機や調速機など磁気の影響を受けやすい部品に非磁性素材を用いることで、15,000ガウス(1.5テスラ)の耐磁性を得ている。軟鉄製インナーケースに頼らないため、シースルーバックでムーブメントを鑑賞できる。

マスター クロノメーター認定は、COSC認定を受けたムーブメントを完成品の状態でMETASが試験するものである。日差0〜+5秒の精度、15,000ガウスの磁場下での動作、パワーリザーブ、防水性など8項目が審査される。ムーブメント単体ではなくケーシング後の時計全体が対象である点が特徴となる。

世界時間表示の仕組み

文字盤外周の都市名リングは固定され、その内側で24時間ディスクが1日1回転する。ディスクは昼と夜の色分けをもち、各都市名と照合して現地時刻を読み取る。中央の時針と分針は、着用者がいる土地の時刻を示す。

操作はすべてリューズで行う。最も引き出した位置では秒針が停止し、分針と24時間ディスク、時針をまとめて合わせる。基準となる協定世界時(UTC)を、赤字で示されたロンドンに合わせるのが基本である。1段引きの位置では時針だけが1時間単位で前後に跳び、ムーブメントは止まらない。時針が午前0時をまたぐと日付も連動して進み、逆方向に戻せば日付も戻る。移動のたびに時針を送るだけで、世界時間と現地時刻の関係が保たれる構造である。

仕上げ

ブリッジとローター、テンプ受けにはロジウムメッキが施され、放射状に広がるアラベスク模様のコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ・ウェーブ)で装飾される。金製のローターとテンプ受けを備えた仕様はCal. 8939として区別され、素材の違いが型番の差として表れている。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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