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CALIBER · Louis Vuitton

LFT023 CS

自動巻 Automatic Analog

2024年のEscale刷新に合わせ、TambourのLFT023を中央秒針へ改めた、ルイ・ヴィトンのマイクロローター自動巻

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
50 時間
石数
32 石
ムーブメント径
30 mm
Cal. LFT023 CS
movement · LFT023 CS 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

LFT023 CSは、ルイ・ヴィトンの自動巻キャリバーLFT023のセンターセコンド仕様である。設計は時計工房La Fabrique du Temps、製造はムーブメント専業のLe Cercle des Horlogersが担う。2023年のTambourで登場したスモールセコンド仕様を改め、2024年のEscaleタイムオンリーW3PG11などに初搭載された。28,800vph (4Hz)、パワーリザーブ50時間、32石。22Kゴールドのマイクロローターを備え、ジュネーブ天文台のクロノメーター認定(日差-4/+6秒)を受ける。長くなった秒針をチタン製とし、駆動の負荷を抑えた点に本機固有の工夫がある。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerLouis Vuitton
ReferenceLFT023 CS
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels32 石
Power reserve50 h
Movement ⌀30 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景 — 専用三針機の不在

ルイ・ヴィトンの時計は、2002年のTambour以来、長く外部調達のムーブメントに支えられてきた。2011年、ブランドはLa Fabrique du Temps(ラ・ファブリック・デュ・タン)を傘下に収めた。同工房が担ったのはスピンタイムやミニッツリピーターなどの複雑機構で、日常使いの三針自動巻を自前で持つ体制ではなかった。

転機は、ジャン・アルノーが時計部門を率いるようになって進んだ2023年のTambour全面刷新である。時計そのものの実力で評価を得る方針を示すうえで、専用のベースキャリバーは欠かせない要素と位置づけられた。こうして生まれたCal. LFT023を、ブランドは初のプロプライエタリ(専用)三針自動巻と位置づける。

2. 協業の構図

LFT023の設計はLa Fabrique du Temps、製造はヌーシャテル州のLe Cercle des Horlogers(ル・セルクル・デ・オルロジェ)が担う。同工房は2012年、Nicolas Herren(ニコラ・エラン)とAlain Schiesser(アラン・シーサー)が設立した。エランは独立前、La Fabrique du Tempsでミシェル・ナヴァスとエンリコ・バルバジーニのもとに学んだと伝わる。

基盤は同工房のマイクロローター機CH200.CHSAとされ、同系統はSpeake-MarinのSMA03-Tにも用いられている。一から自社で製造する機械でも、汎用品でもない。専業工房のプラットフォームをブランド専用に仕立てた、第三の類型に属するキャリバーである。

3. センターセコンド化

Tambourに載ったLFT023は、6時位置にスモールセコンドを置く仕様だった。2024年6月、Escaleがタイムオンリーのドレスウォッチとして再定義される際、文字盤中央から秒針を伸ばす構成が求められた。これに応じて改変されたのが本機である。WatchBaseなどのデータベースでは、スモールセコンド版(LFT023 PS)と区別してLFT023 CSと呼ばれる。ブランドの製品資料では、いずれも単にLFT023と表記される。

改変は表示の置き換えにとどまらない。外寸30.6mm×4.2mmを据え置いたまま、秒針の素材選定や湾曲加工の工具まで見直された。初搭載はローズゴールドのW3PG11とW3PG21、プラチナのW3PT11、ダイヤモンドを配した40.5mm径のプラチナ仕様の4型である。Escaleにとって、これが初の三針モデルであった。

4. 展開と業界での位置

以後、本機はEscale三針ラインの共通基盤となる。2024年末には、ギヨシェとグラン・フー・エナメルの文字盤を持つW3PT21(50本限定)が加わった。2025年のW3PTC1はマラカイト、2026年のW3YG21はタイガーアイの一体リングをミドルケースに用いる(いずれも30本限定)。一方、2024年春のEscale Cabinet of Wondersは、秒針を持たない二針仕様のLFT023を積む。系列内でも、表示に応じた作り分けがなされている。

ブランドが設計の主導権を握り、専業工房が製造を受け持つ専用キャリバーは、現代の高級時計で広く見られる手法である。ルイ・ヴィトンは2025年、La Fabrique du Temps内で製造まで完結させたCal. LFT MA01.01を発表した。協業による専用機と完全自社製造機が並ぶ体制のなかで、LFT023 CSはメゾンの三針ドレスウォッチを支える基幹機の役割を担っている。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

基本構成とマイクロローター

LFT023 CSは、直径30.6mm、厚さ4.2mmの自動巻キャリバーである。部品点数は147、石数は32。時・分・秒をすべて文字盤中央の同軸で表示し、日付などの付加機能は持たない。スモールセコンド版の31石に対する1石の差は、中央秒針の駆動系を加えた改変に伴うものと見られる。

自動巻機構にはマイクロローターを採る。ムーブメント全面を覆う回転錘の代わりに、小径のローターを輪列と同じ階層に組み込む方式で、回転錘が重なる分の厚みを省ける。回転半径が小さいぶん、巻上げ効率では不利になりやすい。マイクロローターに比重の大きい金が多用されるのはこのためで、本機も22Kゴールドを用いる。ローター表面にはLVのモチーフが彫刻される。

振動数と調速

テンプ(時計の速さを決める振り子に相当する部品)は28,800vph (4Hz)で振動する。脱進機(テンプの往復に合わせて輪列を一定量ずつ解放する機構)は1秒間に8回作動し、秒針は1秒を8歩で刻む。振動数が高いほど、姿勢の変化や衝撃による乱れが歩度に与える影響は相対的に小さくなる。一方で消費エネルギーは増す。50時間のパワーリザーブは、この消費と香箱(主ゼンマイを収める円筒部品)の容量との兼ね合いで定まる。

緩急調整にはエタクロン式の機構を備える。緩急針でヒゲゼンマイ(テンプを往復させる渦巻きばね)の有効長を変え、歩度を合わせる。あわせてヒゲ持ちの位置を動かし、ビート(左右の振りの均等)を整えられる。組立後の精密調整を効率よく行える点に特徴がある。

中央秒針とチタン製秒針

センターセコンド化で最も配慮されたのが秒針である。中央から文字盤外周近くまで伸びる秒針は、6時位置の小さな秒針より長く、重くなる。4Hzの時計では秒針が毎秒8回、起動と停止を繰り返す。そのため秒針の慣性モーメント(回転のしにくさを表す量)が大きいほど、輪列からより多くのエネルギーを奪う。慣性モーメントは質量と、回転中心からの距離の二乗に比例する。長い針ほど影響は急速に増す。

ルイ・ヴィトンはこの秒針をチタンで製作した。金に比べて比重が小さく、同じ形状でも慣性を抑えられる。表面にはPVD処理で時分針と揃う金色を与え、先端は文字盤の反りに沿って曲げてある。視差(針と目盛の高さの差による読み取りの誤差)を抑える工夫で、この湾曲加工のために専用工具を開発したとされる。

クロノメーター認定と仕上げ

精度は、ジュネーブ州の委託を受ける財団Timelabが運営するObservatoire Chronométrique de Genève(ジュネーブ天文台)が認定する。判定は国際規格ISO 3159に基づく7項目で、平均日差-4/+6秒もその一つである。COSCと同じ規格を用い、認定を担う機関が異なる。

仕上げは、マイクロサンドブラストで梨地としたブリッジに、鏡面に磨いた幅広の面取りを組み合わせる。地板にはペルラージュ(円形の粒模様)を施し、香箱の表面はモノグラム・フラワーの形に抜かれる。工業的な仕上げ工程を基本としながら、ブランドの意匠を機械の上でも識別できる構成である。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 7 本のリファレンス

This caliber appears in 7 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア First Look: The New Louis Vuitton Escale Time-Only Collection 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.08.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Louis Vuitton caliber LFT023 CS 専門メディア · WatchBase · 2026.08.15 閲覧 WatchBase · 2026.08.15