系譜と歴史
1. 42mmケースが求めたもの
2011年3月のバーゼルワールドで、ロレックスはエクスプローラーIIの新型Ref. 216570を発表した。シリーズ誕生40周年の年にあたり、ケース径は前任16570の40mmから42mmへ拡大された。この外装とともに登場したのが、新しい自社製キャリバーCal. 3187である。当初は前年2010年の発表が予定されていたとも伝わる。
前任の16570は、後期にCal. 3186を搭載していた。基幹Cal. 3135と同じ標準的な径の基盤で、40mmケースに釣り合う寸法である。これをそのまま42mmケースに収めると、文字盤が広がる一方で日付窓は中心寄りに取り残される。ロレックスは地板そのものを拡げ、日車を大径化することでこの問題に応えたと見られている。
2. 3085から続くGMT機構の系譜
Cal. 3187の骨格は、ロレックスのGMT系キャリバーの系譜に連なる。1980年代前半のCal. 3085が独立調整式の時針を備えた。1988年のCal. 3185は、この機構を3135系の構造へ移している。2005年のCal. 3186は、青いパラクロム・ヒゲゼンマイを採用した。初搭載はGMT-Master IIのイエローゴールド製Ref. 116718LNである。
3187は3186の設計を受け継ぎ、機能と主要な技術要素をほぼ共有する。違いは主に二つとされる。一つは拡大された地板と日車、もう一つは耐衝撃装置を外部調達のキフ(Kif)式から自社製のパラフレックスへ改めた点である。部品の多くは3186と共通とされ、系譜の中では大径化した3186と位置づけられる。
3. 大径キャリバー群の一員として
地板を拡げるという手法は、同時期のロレックスに共通するものだった。2008年のデイデイトIIと2009年のデイトジャストIIは、いずれも41mmケースを採用した。前者にはCal. 3156、後者にはCal. 3136が用意され、ともに標準より大きな地板を持つとされる。日付を文字盤の外寄りに置き、大型ケースでも表示の均衡を保つための設計である。
3187は、この大径キャリバー群のGMT版にあたる。一方、GMT-Master IIは40mmケースのまま3186を使い続けた。同じ系譜の2機種は、ここでムーブメントを分けることになる。WatchBaseの搭載モデル一覧も、216570の2仕様のみを記録している。約10年の生産期間を通じ、3187は216570専用のキャリバーであり続けた。
4. クロナジー世代への橋渡し
3187が登場した2000年代末から2010年代初頭、業界ではシリコン製ヒゲゼンマイの採用が広がりつつあった。ロレックスもシリコンの共同研究に加わっていたとされる。だが男性用の主力キャリバーでは、自社開発の金属合金パラクロムを軸に据えた。シリコン製のシロキシが登場したのは2014年、女性用のCal. 2236においてである。
2015年、ロレックスはクロナジー脱進機を備えた32xx世代の展開を始め、大径キャリバー群は順に置き換えられていく。2021年、エクスプローラーIIはRef. 226570へ移行した。搭載されたのは、GMT-Master IIが2018年から用いていたCal. 3285である。10年にわたり2系統に分かれていたGMTムーブメントは、ここで再び一本化されたことになる。3187は、大型化の時代に一つのリファレンスのために仕立てられた、この世代固有のキャリバーである。