系譜と歴史
1. 日付なし機の世代交代
1980年代末から、ロレックスの日付なし三針モデルはCal. 3000が支えてきた。エアキング、エクスプローラー、サブマリーナのノンデイトに用いられた実用機である。一方、日付付きの主力機は1988年のCal. 3135で世代を改め、フルブリッジのテンプ受けとブレゲひげを備えていた。3000は片持ちのテンプ受けとフラットひげのまま据え置かれ、ブレゲひげを持たない最後のロレックス製キャリバーとされる。
Cal. 3130は、この二系統の差を埋める存在として現れた。3135から日付機構を省いた構成で、両者の登場には10年以上の開きがある。初出の年は資料により1999年から2001年まで幅がある。2000年前後、エアキングRef.14000Mとサブマリーナ ノンデイトRef.14060Mで採用が始まったとされる。ロレックスはケースの意匠をほぼ変えず、型番の末尾に「M」を加えてムーブメントの更新を示した。翌2001年には、エクスプローラーもRef.114270へ移行している。
2. 引き算の設計と素材の更新
3130の意義は、新機構の発明よりも基準の統一にある。その登場により、日付の有無を問わず3100系の主力キャリバーがフルブリッジとブレゲひげを共有することになった。新規設計ではなく、実績ある基幹機から機能を差し引いて派生機を得る手法である。
生産期間中の主な更新は、ヒゲゼンマイの素材に集中した。ロレックスは2000年、ニオブとジルコニウムの合金によるパラクロム・ヒゲゼンマイを発表した。2005年には、表面処理を加えたブルーパラクロムへ改良している。3130への導入時期は資料によって2000年代後半から2010年頃と幅がある。キャリバー名は3130のまま据え置かれた。2012年に発表されたサブマリーナRef.114060は、ブルーパラクロムを備えた3130を搭載して登場した。
3. 3131と3132への分岐
3130は、二つの派生キャリバーの土台にもなった。Cal. 3131は2007年のミルガウスRef.116400に搭載され、軟鉄製の磁気シールドと組み合わせて耐磁性を高めた。Cal. 3132は2010年のエクスプローラーRef.214270で初搭載され、ブルーパラクロムとParaflex耐震機構を備える。3130系からは、チェリーニ用のCal. 3165・3180も派生した。3130自身もエアキングRef.114200やオイスターパーペチュアル34・36へ搭載先を広げた。日付なし三針の標準機として、約20年にわたり用いられた。
4. 垂直統合の時代と後継
3130の生産期間は、ロレックスの製造体制が変わった時期と重なる。同社のムーブメントは長く、ビエンヌのマニュファクチュール・デ・モントル・ロレックスが製造してきた。同社はロレックス専属ながら別資本であり、2004年にロレックスへ統合された。
同時代のオメガは、1999年にコーアクシャル脱進機 (Co-Axial escapement) を載せたCal. 2500を送り出した。脱進機の構造そのものを刷新する選択である。対して3130は、スイスレバー脱進機を保ったまま、支持構造とヒゲゼンマイ素材の改良を重ねる道を歩んだ。精度と耐久性という共通の課題への、設計思想の違いといえる。
2020年、サブマリーナとオイスターパーペチュアルの刷新に合わせ、3130の役割はCal. 3230へ引き継がれた。クロナジー・エスケープメント (Chronergy escapement) を備えた新世代の三針機である。