系譜と歴史
1. 3130系という土台
Cal.3132は、ロレックスの基幹自動巻きキャリバー群「3100系」の一員である。この系譜の起点は、1988年に登場した日付付きのCal.3135にさかのぼる。3135は四半世紀にわたりデイトジャストやサブマリーナの心臓部を担い、その日付機構を省いた三針版がCal.3130である。Cal.3132は、この3130を土台とする発展形に位置づけられる。
2010年代を前に、腕時計業界は大型化の潮流のただ中にあった。ロレックスも例外ではなく、長く36mmを守ってきたエクスプローラーを39mmへと拡大する。この器の更新に合わせ、ムーブメントもまた世代交代を遂げた。それがCal.3132である。
2. ブルーパラクロムとParaflexの世代
Cal.3132を特徴づける二つの技術は、いずれも2000年代に確立された。ひとつは、テンプの振動を司る渦巻き状のばね——ヒゲゼンマイ——に用いるブルーパラクロムである。ロレックスは2000年、ニオブとジルコニウムを主体とする常磁性合金のヒゲゼンマイ「パラクロム」を発表した。2005年にはその表面を酸化処理で安定させ、特有の青色をまとうブルーパラクロムへと改良している。
もうひとつがParaflex耐震機構である。2005年に投入されたこの自社設計のショックアブソーバーは、テンプの軸を衝撃から守る役割を担う。
これらの新技術は、3100系の各キャリバーへ段階的に展開された。ブルーパラクロムを最初に得たのは2005年のCal.3186であり、以後Cal.3131 (2007年)、Cal.3136 (2009年) と広がり、2010年のCal.3132へと至る。
3. エクスプローラー214270という器
Cal.3132が初めて世に出たのは、2010年のバーゼルワールドで発表されたエクスプローラー Ref.214270である。Edmund HillaryとTenzing Norgayのエベレスト初登頂を記念して1953年に生まれたこの実用時計は、39mmの新世代へと姿を変え、その内側にCal.3132を収めた。214270は2021年まで生産が続いた。
このキャリバーはエクスプローラー以外にも展開された。オイスターパーペチュアル39 (Ref.114300) や、ドレスラインのチェリーニ タイムがそれである。さらにロレックスは、Cal.3132を土台にスモールセコンドを備えたチェリーニ用のCal.3165・3180を派生させている。
4. 3131との対比と後継
同じ3130を出自とする兄弟キャリバーに、Cal.3131がある。3131は耐磁性に振った構成で、軟鉄製の磁気シールドと組み合わさり、ミルガウスやエアキング Ref.116900に用いられた。一方の3132はParaflex耐震を軸とする。両者は同じ土台から異なる目的へ枝分かれした、設計思想の対比として読める。
2021年、エクスプローラーがRef.124270へ更新されると、Cal.3132の役割はCal.3230へと引き継がれた。3230はクロナジー・エスケープメントと約70時間のパワーリザーブを備える新世代3200系の日付なし版であり、世代の節目を画している。