設計思想
1. 2011年、GMT系の2本が分かれるとき
前任の16570は22年にわたり、同時代のGMTマスター II と同じ40mm径のケースで作られてきた。固定ベゼルか回転ベゼルかを除けば、両者のシルエットは近い。2007年、GMTマスター II はセラミックベゼルと太いラグのマキシケースを得たRef. 116710LNへ移行する。一方のエクスプローラー II は、なお16570のまま据え置かれていた。
同じ時期、ロレックスはプロフェッショナル・モデルの大型化を進めていた。2010年には兄弟機のエクスプローラーが36mmから39mmのRef. 214270へ拡大している。翌2011年の216570は、この流れを受けつつ、GMTマスター II より2mm大きい42mmを選んだ。WatchBaseは、エクスプローラー II がこのとき初めて、ロレックスの大半のスポーツモデルを上回るケースを持ったと記す。サイズの差は、姉妹関係にあったGMT系の2本を視覚的に切り分ける役割も果たしたと読める。
2. 変わったもの、変わらなかったもの
16570からの変更は、ケース、文字盤、ムーブメント、ブレスの全域に及ぶ。ケースは42mmへ拡大され、針とインデックスはそれに見合う大きさへ描き直された。24時間針は細い赤から太いオレンジの矢印へ戻り、ムーブメントはCal.3186からCal.3187へ、夜光はクロマライトへと切り替わった。ブレスには安全装置付きのクラスプと延長機構が加わっている。
変わらなかったのは、スチール製の固定ベゼルと24時間目盛り、100m防水、そして白と黒の2色展開である。GMTマスター II がセラミックへ移ったあとも、ベゼルは刻印入りのスチールのまま残された。大きく刷新しながら、エクスプローラー II を識別する骨格には手をつけない。これが216570の変更の作法であった。
3. 白文字盤という選択
発表直後の2011年、SJX Watchesは東京・銀座のロレックス・ブティックで2本の216570を見比べている。筆者は白文字盤の16570を所有し、前世代では白を好んでいたが、216570では黒を選ぶと記した。オレンジの針が黒地でより映えること、黒文字盤が艶を抑えたヴィンテージ風の仕上げだったことが理由である。
この評価は、216570における白文字盤の立ち位置をよく示している。黒文字盤の216570-0002は「ファントム効果」を備え、初代Ref. 1655への目配せを担った。白文字盤の本機はそうした演出を持たず、16550で始まった高コントラストの実用表示を、42mmの広い文字盤で展開する役を担う。回顧と実用という二つの方向を、同じRefが文字盤色で分担していたことになる。
4. 226570へ受け継がれた骨格
2021年に登場した後継Ref. 226570は、42mm径もマキシ仕様の文字盤構成もほぼそのまま継承した。変更の中心はCal.3285への換装で、外装はラグの細身化やブレス幅の調整など細部の見直しにとどまる。216570が10年かけて定着させた「42mmのエクスプローラー II」という形は、後継でも問い直されなかった。本機216570-0001は、その形を白文字盤で最初に示したリファレンスである。
意匠分析
本機を識別する最大の要素は、白文字盤と、黒くコーティングされた針・インデックス枠の組み合わせである。前任16570の白文字盤も黒縁の針とインデックスを備えていたが、その質感は艶を抑えたものだった。216570では同じ黒が光沢仕上げとなり、白地の上でよりくっきりと輪郭を描く。一方、角度によっては針が光を返しやすいとの指摘もあり、後継226570ではマットなPVDコーティングを施したホワイトゴールドへ改められたとされる。光沢の黒は、この世代の白文字盤だけが持つ仕上げである。
針とインデックスは、42mmケースに合わせて太く大きくなった、いわゆる「マキシ」仕様である。夜光には青く発光するクロマライトが充填される。黒文字盤の216570-0002は針の根元を黒く塗り、夜光部が浮かぶ効果を狙った。白文字盤の本機は針そのものを黒で仕上げ、白地との明暗差で読ませる。同じRefでも、視認性の組み立て方は文字盤色ごとに異なる。
文字盤の「EXPLORER II」の銘は、24時間針と同じオレンジで刷られる。モデル名と24時間針を同色で結ぶ手法は、2007年のGMTマスター II Ref. 116710LNが緑で先に採っていた。白地の上では、黒とオレンジの2色だけが要素を区別する。
ケースは太いラグと大ぶりのリューズガードを持つ「マキシケース」で、上面をサテン、側面をポリッシュで仕上げる。ベゼルは放射状のサテン仕上げを施したスチールの固定式で、刻まれた24時間目盛りは16570よりも太い。ブレスは3列のフラットなリンクを持つ全面サテン仕上げのオイスターで、オイスターロック・クラスプと約5mm延長できるイージーリンクを備える。
ムーブメントは自社製のCal.3187である。青いパラクロム・ヒゲゼンマイ(磁気の影響を受けにくい合金製)と、パラフレックス緩衝装置を備える。同系のCal.3186との主な違いは、この緩衝装置の追加とされる。振動数は毎時28,800振動 (4Hz)。時針を単独で1時間刻みに動かせるため、24時間針をホーム時刻に残したまま現地時刻に合わせられる。WatchBaseの搭載モデル一覧に並ぶのは216570の2仕様のみで、この世代専用のキャリバーとされる。
系譜と歴史
216570は2011年3月、スイス・バーゼルで開かれたバーゼルワールド2011で発表された。エクスプローラー II の誕生40周年にあたる年で、白文字盤の本機216570-0001と黒文字盤の216570-0002が同時に披露されている。WatchBaseは生産開始を同年4月と記録する一方、店頭に広く並んだのは同年秋以降とする販売店の記述もある。
発表時の外装とムーブメントの構成は、生産終了まで大きく変わらなかったとされる。限定版や素材違い、ベゼル違いの派生は存在せず、ラインナップは白と黒の2種の文字盤に限られた。
生産期間中の最も大きな変化は、外装ではなく検査基準に起きた。ロレックスは2015年、Day-Date 40の発表にあわせてSuperlative Chronometer(高精度クロノメーター)の基準を再定義した。2016年2月には、その適用が全生産品へ広がったと報じられている。これにより本機も、COSCによるムーブメント単体の認定に加え、ケーシング後の完成品で日差−2〜+2秒の社内検査を受けるようになる。付属する保証シールは赤から緑へ替わり、国際保証は5年となった。公式の製品資料にも、この精度が本機の仕様として記載されている。
2021年4月7日、ロレックスはWatches & Wonders GenevaでCal.3285搭載の後継Ref. 226570を発表した。これをもって216570は約10年の生産を終えている。WatchBaseも生産期間を2011年4月から2021年までと記録している。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア BaselWorld 2011 – Rolex Releases New Explorer II
- 02 専門メディア Rolex Explorer II 216570
- 03 専門メディア Dispatch: 2011 Rolex Explorer II