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CALIBER · Omega

9908

手巻 Handwound Analog クロノグラフ Chronometer Co-Axial Escapement

2021年、スピードマスター・クロノスコープで誕生した、Cal. 9900系譜の手巻きコーアクシャル・クロノグラフ

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
60 時間
石数
44 石
Cal. 9908
movement · 9908 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 9908は、オメガが2021年に発表した自社製の手巻きクロノグラフ・キャリバーである。自動巻きのCal. 9900から自動巻機構を取り除き、厚さ6.4mm・44石に再構成した。振動数は28,800vph (4Hz)、直列に連結した2つの香箱で60時間のパワーリザーブを確保する。コラムホイールと垂直クラッチ、コーアクシャル脱進機、シリコン製ヒゲゼンマイを備え、METAS認定のマスター クロノメーターとして15,000ガウスの耐磁性を持つ。スピードマスター・クロノスコープで初搭載され、2025年にはダークサイド・オブ・ザ・ムーンの手巻き仕様にも採用された。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference9908
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels44 石
Power reserve60 h
HandsHours, Minutes, Small Seconds
ChronographChronograph, Column wheel
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景

Cal. 9908の直接の祖先は、2011年に登場した自社製自動巻きクロノグラフ Cal. 9300である。コラムホイール、垂直クラッチ、2つの香箱、コーアクシャル脱進機を一体で設計したこのキャリバーは、2016年のバーゼルワールドでMETAS認定を受けたCal. 9900へと発展した。Cal. 9900はオメガのクロノグラフとして初めてマスター クロノメーター認定を得たムーブメントとされる。

一方、スピードマスターの歴史は手巻きクロノグラフとともにあった。Cal. 321に始まり、Cal. 861、Cal. 1861、そして2021年のCal. 3861へと続く系譜である。ヴィンテージの意匠を現代に置き直すモデルでは、薄い手巻きムーブメントが求められていたとみられる。厚さ7.6mmの自動巻きCal. 9900は、その用途には向かなかった。

2. 手巻き化という再構成

2021年、オメガはスピードマスター・クロノスコープとともにCal. 9908を発表した。Cal. 9900からローターを含む自動巻機構を外し、直径32.5mmを保ったまま厚さを6.4mmへ、石数を54石から44石へと減らしている。

単なる部品の省略ではなく、裏蓋側の構成も改められた。新設計の受けが輪列を覆い、その表面にはテンプを起点に放射するアラベスク状のジュネーブウェーブが施された。オメガはこの装飾を自社初の試みと説明している。一方で、コラムホイール、垂直クラッチ、直列2香箱という基本設計はCal. 9900から継承された。

3. 派生と展開

翌2022年には、日付表示を加えた手巻き版Cal. 9906が、刷新されたスピードマスター '57に搭載された。Cal. 9908はこの系統における日付なし仕様と位置づけられる。

Cal. 9908の搭載先は、その後も広がった。2024年にはパリ五輪を記念したクロノスコープが登場した。2025年には、ブラックセラミックのダークサイド・オブ・ザ・ムーンに手巻き仕様 Ref. 310.92.44.51.01.001が加わった。地板と受けを艶消しの黒で仕上げた「ブラックエディション」仕様が採用され、ケース厚は13.02mmに収められている。

4. 業界での位置

現在のオメガには、性格の異なる2系統の手巻きクロノグラフが並ぶ。Cal. 861の流れをくむCal. 3861は、カムによる切り替えと水平クラッチという伝統的な構成を守る。対してCal. 9908は、自動巻き世代で確立した統合型クロノグラフの設計を手巻きに移し替えたものである。

前者はムーンウォッチの歴史的連続性を、後者は現代的な操作感と薄さを軸に据える。どちらが上位という関係ではなく、同じブランドが異なる設計思想を並立させている点に、このキャリバーの位置がある。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
本キャリバー Cal. 9908 Speedmaster Chronoscope
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

構成と表示

Cal. 9908は直径32.5mm、厚さ6.4mm、44石の手巻きクロノグラフである。表示は中央の時針・分針・クロノグラフ秒針、スモールセコンド、そして12時間と60分を同軸の2本針で示す積算計からなる。時間と分の経過を1つのサブダイヤルで時計のように読める構成で、搭載モデルでは積算計が3時位置に置かれる。

時針は単独で調整でき、リューズを1段引くと分針を動かさずに時針のみを送れる。オメガはこれを時差修正機能として位置づけている。

コーアクシャル脱進機

脱進機とは、テンプの往復運動を一定の間隔で輪列の回転に変換する機構である。Cal. 9908が採用するコーアクシャル脱進機(Co-Axial Escapement)は、英国の時計師ジョージ・ダニエルズが考案し、オメガが1999年に量産化した機構として知られる。

ガンギ車を上下2段の同軸構造とし、アンクルとの間で力を主に押し出す方向に伝える点が特徴である。従来のスイスレバー式に比べて爪石とガンギ車の滑り摩擦が小さく、潤滑油の劣化による精度変化を抑えやすいとされる。

テンプとヒゲゼンマイ

ヒゲゼンマイは、テンプを往復させる渦巻き状のばねである。本機はシリコン製のSi14ヒゲゼンマイを用いる。シリコンは磁化せず、温度変化による弾性の揺らぎも小さい。

振動数は28,800vph (4Hz)で、テンプは1秒間に8回振動する。クロノグラフ秒針は1/8秒刻みで進み、計測の分解能もこれに対応する。振動数を高めると外乱に対する安定性を得やすい一方で、消費エネルギーは増える。

香箱とパワーリザーブ

動力源は、直列に連結した2つの香箱である。1つの香箱に頼るよりもトルクの変動がなだらかになり、長いパワーリザーブと安定した振り角を両立しやすい。香箱にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施され、摩擦の低減が図られている。パワーリザーブは60時間である。

クロノグラフ機構

クロノグラフの切り替えはコラムホイールが担う。コラムホイールは円柱状の歯車で、スタート、ストップ、リセットの動作を順序正しく制御する部品である。

輪列との接続には垂直クラッチを用いる。上下に重なった円盤を摩擦で結合する方式で、始動時に秒針が跳ねる現象を抑えやすい。クロノグラフを常時作動させても、輪列への負担が小さいとされる。

耐磁性と認定

本機はスイス連邦計量・認定局(METAS)の基準によるマスター クロノメーター認定を受ける。COSCのクロノメーター検定に加え、日差0〜+5秒の精度や15,000ガウスの耐磁性など、ケースに収めた完成品の状態で試験される。

耐磁性は、軟鉄製インナーケースによる遮蔽ではなく、非磁性素材の部品で確保されている。そのため、シースルーの裏蓋からムーブメントを眺められる設計と両立する。

仕上げ

受けと地板はロジウムメッキ仕上げで、大型の受けにはアラベスク状のジュネーブウェーブが施される。ジュネーブウェーブ(コート・ド・ジュネーブ)は、平行または放射状に刻む縞模様の装飾である。本機ではその起点をムーブメント中心ではなくテンプに置く点が独自である。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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