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BRAND · CH · EST. 2002

Speake-Marinスピーク・マリン

Country
CH
Founded
2002
Headquarters
スイス ジュネーブ
Group
非公開(クリステル・ロノブレが保有)
Founders
ピーター・スピーク・マリン
Web
speake-marin.com ↗

英国の古典時計とスイスの精緻な技を一本の腕に束ね、独立の精神を貫いてきたジュネーブのベル・オルロジュリー

01 — 概要 / OVERVIEW

スピーク・マリンは、英国出身の時計師ピーター・スピーク・マリンが2002年にスイスで興した独立時計ブランドである。ロンドンでの古典時計修復と、ルノー・エ・パピでの複雑機構開発という二つの経験が、その作風の土台にある。ピカデリー型ケース、スペード形のファウンデーション針、職人の歯車整形工具に着想したトッピングツールの意匠が、創業以来の識別記号として受け継がれてきた。2012年に経営権はフランス人実業家クリステル・ロノブレへ移り、自社工房ル・セルクル・デ・ゾルロジェを軸にムーブメントの内製を進めている。本拠はジュネーブ。年産はおよそ600から700本と伝わる独立マニュファクチュールである。

02 — Philosophy

設計思想

What this house values

スピーク・マリンの設計思想は、英国とスイスという二つの時計文化を一本の腕時計に同居させる点に集約される。創業者ピーター・スピーク・マリンは、ロンドンの古典時計修復で培った意匠感覚と、スイスで身につけた複雑機構の技術を、対立させずに併存させた。最初の作品ファウンデーション・ウォッチが、彫金とスペード針による古典的な上半分と、彫り抜かれたトゥールビヨンによる現代的な下半分を併せ持っていたことは、その姿勢を象徴している。

機構面では、汎用機を改造した時代から、自社工房での内製へと軸足を移してきた。職人が歯車の歯形を整える道具「トッピングツール」の形を、ローターやトゥールビヨン受けに用いる発想は、道具そのものを意匠化する点に特徴がある。スモールセコンドを文字盤の1時半に置く配置は、現経営陣のもとで生まれた自社ムーブメント群の識別記号となっている。

意匠面では、英国の古時計やマリンクロノメーターの比率に着想したピカデリー型ケースを基軸に据える。6時位置に置かれた機能を持たない青いネジは、装飾に意を払った時計師アブラアン=ルイ・ブレゲへの敬意とされる。古典の引用と現代的な構成を、一枚の文字盤の上で衝突させずに並べる手つきに、このブランドの性格が表れている。

商業哲学としては、規模の拡大よりも独立性の保持を優先してきた。大手が型を定めるのに対し、同社は決まりごとを設けない姿勢を掲げ、性別や年齢で顧客を限定しない方針を取る。何を作るかと同じだけ、何に倣わないかを選び取ってきたブランドである。

03 — Story

物語

A narrative of the house

ピカデリーの修復台から

ピーター・ネヴィル・スピークは、1968年にイングランドのエセックスで生まれた。ロンドンのハックニー工科大学で時計製作を学び、スイスの時計学校ウォステップ(WOSTEP)で研鑽を積む。英国に戻ってからは、ピカデリーの古美術商ソムロで古典時計の修復部門を任され、7年にわたって過去の名工の仕事に触れた。1996年、複雑機構の開発を担うルノー・エ・パピ(現オーデマ・ピゲ・ルノー・エ・パピ)に招かれ、再びスイスへ渡る。結婚を機に妻の姓マランを加え、ピーター・スピーク・マリンと名乗るようになった。

2002年、最初の作品ファウンデーション・ウォッチを完成させる。二つの香箱を備えたトゥールビヨン懐中時計であり、独立時計師アカデミー(AHCI)への加入を後押しした一本でもある。トゥールビヨン受けに用いられた、歯車整形工具を象った意匠は、以後ブランドの象徴となっていく。翌2003年には最初の腕時計を発表する。修復師として過ごしたピカデリーの日々にちなみ、そのケースはピカデリーと名づけられた。

独立時計師としての模索

創業から数年、スピーク・マリンの腕時計は、汎用機を大幅に改造したムーブメントを積んでいた。ETA(エタ)系のベースに、トッピングツール型のローターや独自の受けを組み込んだFW2012が、その代表である。スピーク・マリンは並行して他社の仕事も手がけた。マキシミリアン・ブッサーによるMB&Fの始動に関わり、ハリー・ウィンストンのエクセントリック・トゥールビヨンを手がけ、スティーヴン・ホルツマンとともにメートル・デュ・タンを興している。

2008年、彼は自らのブランドに専念する道を選ぶ。2009年には初の自社ムーブメントSM2を発表した。仕上げと構造の水準は高かったが、その価値は一般の愛好家には伝わりにくく、価格も高かった。2007年から2008年の金融危機による高級時計需要の落ち込みも重なり、販売は容易でなかったと伝わる。独立時計師の多くが直面した、時代の逆風であった。

経営者の交代と製造哲学の転換

2012年、ブランドの経営権はフランス人実業家クリステル・ロノブレへ移った。時計業界の外から来た新しい経営者は、二つの柱を据える。自社でのムーブメント製造と、創業以来の意匠を保ちながらの現代化である。2014年、彼女はヌーシャテル地方の小さなムーブメント開発工房ル・セルクル・デ・ゾルロジェに出資した。時計設計家エリック・ジルーを迎え、ブランドの視覚的な刷新にも着手する。

このとき生まれた自社ムーブメント群は、スモールセコンドを1時半に配する独特の構成を持つ。技術者からは前例のなさを指摘されたが、ロノブレはこの配置を押し通したと伝わる。2017年、創業者ピーター・スピーク・マリンはブランドを離れ、教育と情報発信の場ザ・ネイキッド・ウォッチメーカーに専念する道を選んだ。創業者の名を冠したまま、ブランドは新たな体制で歩むことになる。

マニュファクチュールへの脱皮

2015年に始まった内製化の方針は、SMAと名づけられたムーブメント群として結実していく。2020年、ロノブレはル・セルクル・デ・ゾルロジェの筆頭株主となり、ムーブメントの開発から組み立て、調整までを自社の管理下に置く体制を整えた。SMA01に始まる一連のキャリバーは、トゥールビヨンやデュアルタイムへと派生し、ブランドを汎用機の使い手から自社製造ブランドへと変えていった。

ライフルズと新しい読者

2022年、同社はピカデリー型ケースから離れた新シリーズ、ライフルズを発表する。ロンドンのシティを意匠の源とし、角を丸めた四角いケースと波形の文字盤を持つスポーツウォッチである。これを境に顧客層は若がえり、女性の比率も増したと伝わる。2024年には厚さ3.25ミリの極薄スケルトン・キャリバーSMA07を投入し、ライフルズ・スケルトンに搭載した。年産はおよそ600から700本。少数生産を保ちながら、自社製造の独立ブランドとしての性格を固めつつある。

04 — History

歴史

A factual chronology

スピーク・マリンの歴史は、創業者ピーター・スピーク・マリンの個人的な歩みと分かちがたい。1968年生まれの英国人時計師は、ロンドンとヌーシャテルで時計製作を学んだのち、ピカデリーの古美術商ソムロで7年間、古典時計の修復に従事した。1996年にスイスへ渡り、ルノー・エ・パピで複雑機構の開発に携わる。

2002年、スピーク・マリンSAをスイスのビュルサンに設立。同年に懐中時計ファウンデーション・ウォッチを完成させ、AHCIへの加入を果たした。2003年には最初の腕時計ピカデリーを発表する。初期のモデルはETA系を改造したFW2012を搭載していた。2009年、初の自社ムーブメントSM2を発表。複雑機構の分野では、ハリー・ウィンストンやメートル・デュ・タンといった他社・他ブランドの仕事も並行して手がけている。

2012年、経営権がクリステル・ロノブレへ移る。2014年、彼女はル・セルクル・デ・ゾルロジェに出資し、2015年から自社ムーブメントSMAシリーズの開発に着手した。2017年、創業者ピーター・スピーク・マリンが退任。以後はクリステル・ロノブレが最高経営責任者として指揮を執る。2020年にはロノブレがル・セルクル・デ・ゾルロジェの筆頭株主となり、ムーブメント製造の主導権を握った。SMA01に続く一連のキャリバーは、トゥールビヨンやデュアルタイムへと派生していった。

2022年、スポーツウォッチのライフルズを発表。これを境に顧客層は広がりを見せたと伝わる。2024年には極薄スケルトン・キャリバーSMA07を発表し、ライフルズ・スケルトンに搭載した。2025年のウォッチズ・アンド・ワンダーズでは、ライフルズ初の金無垢モデルやレジリエンスの新作を披露している。本拠はジュネーブに置かれ、ムーブメントはヌーシャテル地方のル・セルクル・デ・ゾルロジェで設計・製造される。年産はおよそ600から700本と伝わる。

05 — Series overview

シリーズ概観

How the series relate

スピーク・マリンの現行ラインは、創業以来のピカデリー型ケースを核とする系統と、そこから離れた系統に大きく分かれる。

ピカデリーは、英国の古時計に着想したケースを軸とする基幹の系統である。スペード形のファウンデーション針と、エナメルやラッカーの文字盤を組み合わせた古典的な意匠が基調となる。同系のレジリエンスは、薄型化したピカデリーケースに自社ムーブメント、エロス2を収め、約120時間の長い持続時間を備える。長く使い続けることを前提とした一本という位置づけである。

ワン・アンド・トゥーは、自社ムーブメントSMAシリーズを擁する中核の系統である。1時半のスモールセコンドを特徴とするアカデミックと、機構を露わにしたオープンワークドという二つの方向を持つ。トゥールビヨンやデュアルタイムへの派生も、この系統から生まれている。

ライフルズは、2022年に加わったスポーツウォッチの系統である。ロンドンのシティを源とする角丸のラ・シティケースと、波形を刻んだ文字盤を持つ。ビッグ・ベンを思わせるハート形の針もこの系統の識別記号であり、現在では販売の半ばを占めるに至ったと伝わる。

このほか、トゥールビヨンやミニッツリピーターを擁するオートオルロジュリーの系統と、文字盤に彫刻的な装飾を施すアート・シリーズが、ブランドの技巧と表現の幅を担っている。前者は技術の到達点を、後者は意匠の自由度を、それぞれ示す役割を負っている。

06 — Series

代表シリーズ

Lineages of one house
シリーズ一覧 →
07 — Calibers

主要キャリバー

Movements of the house
キャリバー一覧 →
08 — Cultural

文化との接点

Where this house meets the wider world

スピーク・マリンが広く知られる契機の一つに、俳優ピアース・ブロスナンとの関わりがある。2015年公開の映画『サバイバー』で、ブロスナンはウォッチメーカーと呼ばれる役を演じた。創業者ピーター・スピーク・マリンは、作業台の場面の監修者として撮影に招かれ、ブルガリアの撮影現場でブロスナンと出会ったと伝わる。劇中でブロスナンは、同社のレジリエンスを着用している。この縁から、かつてジェームズ・ボンドを演じた俳優は、独立系の小規模ブランドとしては異例の形でブランドアンバサダーを務めることになった。

撮影監修という偶然の接点が、結果として持続的な関係へと発展した事例である。なお同社は、慈善オークション、オンリー・ウォッチへの出品実績も持つ。