「神秘の棚」という枠組み
Speake-Marinの公式の語りは、19世紀ロンドンの紳士クラブの一室から始まる。書物に囲まれ、世界中の難問や謎への答えを蔵したその部屋に、ひときわ堅く秘密を守る一画があった。それがCabinet des Mystères、すなわち「神秘の棚」である。コレクション名はこの設定に由来する。
独立時計師として出発したピーター・スピーク・マリンにとって、定石どおりの時分表示や量産の論理は、必ずしも創作の出発点ではなかった。実用の制約をいったん外し、機械仕掛けと装飾を物語として提示する余地、それを確保するための枠組みがこの棚であった。後年ブランドは、このコレクションを「現代の時計師の物語を語るもの」と説明している。