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SPEAKE-MARIN · SERIES

J-Class

Jクラス

1930年代の競走ヨットに名を借り、ピカデリーケースへ英国の古典美を束ねた実用クラシック

42 mm
01 — 概要 / SUMMARY

J-Class(Jクラス)は、Speake-Marinが2014年に整理した三つのコレクションのうち、古典的な実用時計を束ねる系譜である。名は1930年代に英国で競ったJクラス・ヨットに由来し、各モデルはマリンクロノメーターを思わせるピカデリーケースを共有する。中核を成すのは、白エナメル文字盤のレジリエンス、蛇形針で日付を示すサーペント・カレンダー、単針表示のヴェルシェダ、そしてトゥールビヨンを収めたマジスターである。創業者ピーター・スピーク=マリンの処女作に発する意匠を、控えめな佇まいへ落とし込んだ点に性格がある。

02 — STORY · 物語

J-Class(Jクラス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

2014年、三つのコレクションへの再編

2014年、ピーター・スピーク=マリンは個人工房をひとつのブランドへと組み替える作業に入っていた。それまで個別に発表してきた多数のモデルを、性格ごとに整理する試みである。生まれたのが三つの系譜だった。軍用に着想したスポーツ系のSpirit、装飾と複雑機構を競うCabinet des Mystères、そして古典的な実用時計を束ねるJ-Classである。

J-Classという名は、1930年代の英国で競ったJクラス・ヨットに由来する。ヴェルシェダ、エンデバー、シャムロックVといった名艇が帆走した時代の優美と技術を、コレクション名へ重ねたものである。命名は意匠とも響き合う。スピーク=マリンは、共通ケースであるピカデリーが古い航海用クロノメーターに着想を得ていると語ってきた。「ケースとはムーブメントをまとわせる衣服だ」という彼の言葉は、海の道具になぞらえたものである。J-Classは、この海事的な含意を一群の名として引き受けた。

02

レジリエンス — エナメルが守る古典

J-Classの中核に置かれたのが、レジリエンスである。2012年に登場したとされるこのモデルは、再編後のコレクションで基準形の役割を担った。最大の特徴は、炉で焼き上げた白エナメルの文字盤にある。塗装と異なりエナメルは経年で色を変えにくく、その清新さを長く保つ。盤面には大ぶりのローマ数字が並び、6時方向にはブルースティールの小さなネジが据えられる。

このネジは、スピーク=マリンの処女作「ファウンデーション・ウォッチ」への目配せである。原型では文字盤を固定する実用部品だったが、レジリエンスでは構造上不要となった。それでもあえて残したのは、青く焼いた針との視覚的な均衡を取り、原点を想起させるためだと本人は説明している。約12mmに収めた薄いピカデリーケースと相まって、レジリエンスはJ-Classの古典的な気質を最も端的に体現する一本となった。代表的なRefにPIC.10009がある。

03

ヴェルシェダ — 単針が描くヨットの記憶

コレクション名の由来を最も直截に体現するのが、2014年のヴェルシェダである。名の元となったヴェルシェダ号は、1933年にキャンパー&ニコルソンズが建造したJクラス・ヨットで、所有者W・L・スティーブンソンが三人の娘ヴェルマ、シーラ、ダフネの名を組み合わせて命名したと伝わる。同艇はブリタニア、エンデバー、シャムロックVらと競い、1930年代を代表する快速艇のひとつに数えられた。

時計のほうは、文字盤の直径いっぱいに伸びる一本の青針だけで時刻を示す。この単針表示は、2004年に発表された「シモダ」を出発点とする。中央には二重に重ねたトッピングツール型の輪があり、上の輪が秒を刻みながら回転し、絶えず表情を変える。5分刻みの目盛りを巡らせた盤面は、航海用コンパスを思わせる。海事的な主題を意匠そのものへ織り込んだ点で、ヴェルシェダはJ-Classの象徴的な存在である。Refにはステンレス鋼のPIC.10022などがある。

04

マジスターとサーペント — 複雑と実用の両翼

同じ2014年に加わったマジスター・トゥールビヨンは、コレクションの複雑機構を担う。搭載するキャリバーSM3は、950プラチナのマイクロローターを香箱の上へ載せる構成を採る。ローターを偏在させることでトゥールビヨンと重ならず、機構の眺めを妨げない。毎時21,600振動(3Hz)で、72時間を超える動力を蓄える。トゥールビヨンのキャリッジはトッピングツールの形を採り、ここでもファウンデーション・ウォッチの記憶が刻まれている。代表RefはPIC.10030である。

実用側を受け持つのがサーペント・カレンダーである。蛇のように湾曲した青針が周縁の日付を指す機構で、スピーク=マリンが初めて手がけたカレンダー時計を源とする。2015年の刷新では、双バレルで5日間の動力を蓄えるキャリバーEros 1を載せ、多層構造の文字盤とともに姿を改めた。PIC.10006系がこれにあたる。

05

機械の世代交代と現代のJクラス

J-Classのムーブメントは、短い期間に大きく入れ替わった。初期はEros系のキャリバーが主軸で、これはTechnotimeのTT 738を基にした自動巻だった。双バレルによる長い動力と、トッピングツール型の「ミステリーローター」を特徴とする。やがてTechnotimeの供給が途絶えると、ブランドは2015年前後にVaucher Manufactureへ基幹ムーブメントを切り替えた。レジリエンスなどに載るVaucher 3002は、毎時28,800振動(4Hz)・50時間巻の自動巻である。

転機は2017年に訪れる。新作ワン&トゥーが、自社キャリバーSMA01を搭載して登場した。これは2012年に経営を引き継いだクリステル・ロスノブレが2015年に始めた自社製造戦略の最初の果実であり、COSC認定を受け、マイクロローターを備えたスケルトン仕様だった。1時半に置かれたスモールセコンドが、新しい意匠の符牒となった。同じ年、創業者スピーク=マリンはブランドを離れ、以後はロスノブレ家がその名を継いでいる。古典の系譜は現行のレジリエンス(2025年の金・チタンモデル)に受け継がれ、いまは自社キャリバーSMA03が時を刻む。ただしJ-Classという呼称自体は、モデルとムーブメントを軸とした再編が進むなかで前面から退きつつある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

J-Classを貫く設計言語は、ばらばらな機構を一つの家系に見せる仕掛けにある。単針、時分秒、カレンダー、トゥールビヨン——表示も価格帯も異なるモデルが、それでも一目でスピーク=マリンと分かるのは、いくつかの要素を厳格に共有しているからである。

第一の背骨はピカデリーケースである。太鼓のような三層構造の胴、ねじ留めされた大ぶりのラグ、溝を刻んだフルートクラウン。この造形は、創業者がルノー&パピで扱ったムーブメントホルダーと、古い航海用クロノメーターに着想を得たものとされる。ケースを「機械をまとわせる衣服」と捉える思想が、J-Classの全モデルに通底する。

第二は、処女作ファウンデーション・ウォッチから受け継ぐ意匠の符牒である。青く焼いたスティールの「ファウンデーション」ハンドと、ブランドの象徴であるトッピングツールの意匠。後者はローター、ヴェルシェダの中央秒輪、マジスターのトゥールビヨンキャリッジへと姿を変えて反復される。レジリエンスの盤面に残された青ネジも同じ系譜にある。これらが、機構の違いを越えてコレクションの「顔」を固定する。

第三は、抑制という意思である。J-Classは、軍用調で発光素材を効かせるSpiritの強さとも、奇想を凝らすCabinet des Mystèresの過剰とも距離を置く。多層のエナメルや漆の盤面、中心へ向けて細るローマ数字といった古典的な語彙を選び、声を張らない。装飾の総量をあえて絞る判断が、ドレスウォッチとしての品位を支えている。

そして全体を束ねるのが、海事という主題である。航海用クロノメーターに由来するケースと、Jクラス・ヨットに借りた名。意匠と命名が同じ源を指すことで、性格の異なるモデル群に一貫した物語が生まれる。ムーブメントがTechnotimeからVaucher、自社製へと移り、ケースが薄型化しても、針と意匠とエナメルが保たれるかぎり、J-Classはその面立ちを失わない。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2014-2015
Eros 系 (TT 738基)
双バレルで長時間巻の自動巻。ミステリーローター搭載。
2014年
Cal. SM3
マジスター用の自社トゥールビヨン。白金マイクロローター。
2015-2017
Vaucher 3002
外部調達の自動巻。毎時28,800振動・50時間巻。
2017-現在
自社 SMA01
自社製造戦略下で初の自動巻。COSC認定・マイクロローター。
2025-現在
自社 SMA03
現行レジリエンスの自社自動巻。マイクロローター・52時間巻。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2012-現在

レジリエンス(時分秒)

PIC.10009 ほか
白エナメル文字盤の時分秒。Jクラスを象徴する基準形である。
2014年

ヴェルシェダ(単針)

PIC.10022 ほか
単針表示の一本。Jクラス・ヨットの名を最も直截に体現する。
2014年

マジスター・トゥールビヨン

PIC.10030 ほか
自社Cal.SM3を搭載。白金マイクロローター式のトゥールビヨン。
2015年

サーペント・カレンダー

PIC.10006 ほか
蛇形の青針が日付を指すポインターデイト。Eros 1を搭載する。
2017年

ワン&トゥー(自社機)

One & Two
自社SMA01を初搭載。スケルトン化したJクラスの転機となった。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive