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BRAND · EST. 1845

Glashütte Original

グラスヒュッテ・オリジナル

ザクセンの伝統を一身に継ぎ、1845年から途切れぬ系譜を機械式で語り続けるドイツ時計の正統派マニュファクチュール

FOUNDED
1845
HEADQUARTERS
ドイツ ザクセン州グラスヒュッテ
GROUP
スウォッチグループ
FOUNDERS
フェルディナント・アドルフ・ランゲ(グラスヒュッテ時計製造の起源、1845年)、ハインツ・W・ファイファー(現ブランド「グラスヒュッテ・オリジナル」としての再興、1994年)
01 — OVERVIEW

概要

ザクセン州の小さな町グラスヒュッテに本社を置くドイツの機械式時計メーカー。その源流は1845年、フェルディナント・アドルフ・ランゲがザクセン王立政府の融資を得て当地に工房を開いた瞬間にさかのぼる。第二次大戦後の国営化と東西ドイツ再統一を経て、1994年に「グラスヒュッテ・オリジナル」の名で再出発し、2000年からはスウォッチグループの傘下にある。ムーブメント部品の約95%を自社で製造する数少ないマニュファクチュールとして、3/4プレート、パノラマデイト、フライング・トゥールビヨンに代表されるザクセン時計製造の伝統を、現代の機械式に翻案して継承している。

02 — PHILOSOPHY

設計思想

What this house values

機構面においてグラスヒュッテ・オリジナルが守り続ける核は、ザクセン時計製造に固有の様式美である。スイス時計が複数の橋でムーブメントを支える流儀を採るのに対し、当ブランドは19世紀ザクセンに由来する3/4プレートで歯車列の大半を一枚の板に収める。組立精度の要求は厳しくなるが、構造の安定性と視覚的な一体感が得られる。これに加え、白鳥の頸(スワンネック)型微調整装置、青焼きビス、金製シャトン、手彫りの天輪受け、グラスヒュッテ・ストライプ仕上げといった意匠が、裏蓋越しに必ず確認できる構成として徹底されている。

意匠面では、前任CEOトーマス・マイヤーが「オリジナル・アンダーステートメント」と表現した二重性が指針となっている。すなわち、内部は精緻で過剰なほどに装飾するが、ダイヤル面はあくまで明瞭で可読性に徹する。1997年に導入されたパノラマデイトはその象徴で、同一平面上に2枚の同心ディスクを置いて中央分割線を排した日付表示は、視認性と造形美の両立を目指したものである。

商業哲学としては、垂直統合の徹底が特徴である。ムーブメント部品の約95%、さらに文字盤までを自社で製造する体制は、業界全体を見渡しても珍しい。2006年にスウォッチグループが買収したプフォルツハイムの文字盤工房は2025年に本拠地グラスヒュッテへ移管され、設計者と文字盤職人が同じ建屋で対話できる環境が整った。年間生産量は限定的で、大量生産ではなく定常的な少量生産による品質の維持を選んでいる。

何を作らないか、という選択もまた明確である。実用性と無縁な極端な薄型化や、装飾過多のグランドコンプリケーションには深入りせず、ドイツ時計学校が示してきた「精密と簡潔」の系譜に踏みとどまる。これが当ブランドの輪郭を定めている。

03 — STORY

物語

A narrative of the house

01銀の枯れた町に時計職人が来た

1845年、ドレスデンの南方に位置する小さな町グラスヒュッテは、銀鉱の枯渇により職を失った住民を抱えて沈滞していた。宮廷時計師の見習いを終えたフェルディナント・アドルフ・ランゲは、この町に時計産業を根づかせる構想をザクセン王立政府に提案。融資を取り付け、地元の藁編み職人や元鉱夫を時計職人として訓練し始めた。やがてユリウス・アスマン、モリッツ・グロスマン、アドルフ・シュナイダーらが続き、エルツ山地の谷あいに時計製造の集積地が形成されていく。

ランゲらはスイスのエタブリスマージュ方式とは異なる道を選んだ。専門工房を町に集積させ、部品ごとに分業しながらも、すべてをグラスヒュッテ域内で完結させる仕組みを築いたのである。1878年にはドイツ時計学校グラスヒュッテ校が開校し、技術と職人を体系的に育てる装置が整う。19世紀後半、グラスヒュッテの懐中時計は精度と仕上げの両面で国際的な評価を得るようになった。

02ヘルヴィッヒの渦と二度の戦争

20世紀初頭、ドイツ時計学校で教壇に立ったアルフレート・ヘルヴィッヒは、1920年にフライング・トゥールビヨンを考案した。トゥールビヨン・ケージを下側のみで支えるこの構造は、上部の橋を排して機構を視覚的に解放した。ヘルヴィッヒは41年にわたり同校に関わり、800名を超える時計師を育てた。

しかし時代は時計産業に厳しく作用した。第一次大戦後の経済混乱、戦間期の苦境を経て、第二次大戦末期の1945年5月8日、グラスヒュッテはソ連軍の空襲に晒され、市街の大半を失う。戦後、町はソ連占領地区に組み込まれ、1945年8月にはソ連占領当局が生産設備の解体と搬出を命じた。国有化はランゲ&ゾーネが1948年、ウーロファとウーファークが1951年に及んでいる。

03国営時代の継承

1951年7月1日、ウーロファ、ウーファーク、ランゲ、ファイテヒニーク、メステヒニーク、エストラー、リヴォス、そしてグラスヒュッテ時計学校を含む残存企業群が統合され、国営企業VEBグラスヒュッター・ウーレンベトリーベ(GUB)が誕生した。市場経済から切り離された環境下でも、GUBは技術伝統の継承装置として機能した。

1964年に登場した自動巻き「シュペツィマティック」は東ドイツ最大のヒット作となり、累計370万本以上を生産したと伝わる。1969年にはダイバーズ「シュペツィマティック・タイプRP TS 200」を投入。GDR人民海軍向けに開発されたこのモデルは、後年「SeaQ」シリーズの原型となる。一方で、計画経済下では西側のような複雑機構の本格的な追求には限界があり、GUBの実力は世界市場で十分には知られなかった。

04民営化からマニュファクチュールへ

1990年10月16日、GUBはグラスヒュッター・ウーレンベトリープ有限会社として商業登記された。だが従業員は72名まで減少しており、再生の道のりは険しかった。1994年、企業家ハインツ・W・ファイファーが買収を完了し、社名を「グラスヒュッテ・オリジナル」に改める。この呼称は、20世紀前半に他地域の偽造品と区別するため文字盤に記されていた品質保証銘に由来するものである。

1997年、復活ラインの最上位として「ユリウス・アスマン ドレーガングウーア」を発表。Cal. 51-55のトゥールビヨンを裏側に据え、腕時計としても懐中時計としても携えられる構成を採った。1990年代には、フライング・トゥールビヨンの考案者の名を冠した腕時計も発表したとされる。1997年にはパノラマデイトを導入し、以後これがブランドの視覚的署名となる。

05スウォッチグループ傘下での成熟

2000年、ニコラス・G・ハイエック率いるスウォッチグループがグラスヒュッテ・オリジナルを買収。流通網と研究開発の支えを得たブランドは、機械式時計復興の波に乗って国際的に認知されていく。2002年8月、ミューグリッツ川の歴史的氾濫で工場は浸水被害を受けたが、修復のうえ建屋を全面更新。23メートルの吹き抜けを持つ現在の本社棟は、この再建の産物である。

2006年にスウォッチが取得したプフォルツハイムの文字盤工房Th. Müllerは、2013年にブランド専属のディアル・マニュファクチュールとして再編された。2018年7月にはローラント・フォン・カイトがCEOに就任し、2019年にダイバーズ「SeaQ」コレクションを投入してスポーツ路線を強化している。

2025年、文字盤工房のグラスヒュッテ本拠地への移転が完了し、設計から組立、文字盤までを一拠点に統合する垂直構造が結実した。創業180周年にあたるこの節目は、当ブランドが歩んできた断絶と継承の双方を映し出している。

04 — HISTORY

歴史

A factual chronology

グラスヒュッテにおける時計製造の起源は1845年にさかのぼる。フェルディナント・アドルフ・ランゲは、銀鉱の枯渇により疲弊していたエルツ山地の小さな町にザクセン王立政府の融資を取り付け、地元住民を時計職人として育成し始めた。これがグラスヒュッテ時計産業の発端となり、まもなくユリウス・アスマン、モリッツ・グロスマン、アドルフ・シュナイダーらが合流。1878年にはドイツ時計学校グラスヒュッテ校が開校し、技術伝承の制度的基盤が整えられた。

20世紀初頭、ドイツ時計学校で長く教鞭を執ったアルフレート・ヘルヴィッヒが、1920年にフライング・トゥールビヨンを考案した。橋を上部に持たないこの構造は、以後グラスヒュッテ系時計製造を象徴する技術となる。

第二次世界大戦末期の1945年5月8日、町はソ連軍の空襲を受け、工房の多くが破壊された。戦後、ザクセン州はソ連占領地区となり、1948年にランゲ&ゾーネが、1951年にウーロファとウーファークが国有化された。同年7月1日、これらは統合され国営企業VEBグラスヒュッター・ウーレンベトリーベ(GUB)が設立された。GUBは1964年に自動巻きキャリバー「シュペツィマティック」を発表し、東側諸国向けに大量に生産。1969年には潜水士向けの「シュペツィマティック・タイプRP TS 200」を投入した。

1990年10月16日、GUBはグラスヒュッター・ウーレンベトリープ有限会社として商業登記された。1994年、企業家ハインツ・W・ファイファーが買収を完了し、社名を「グラスヒュッテ・オリジナル」に改めて再出発。1997年には「ユリウス・アスマン ドレーガングウーア」を発表し、復活を世に示した。1997年には2枚の同心ディスクで日付を表示するパノラマデイトを導入。2000年にスウォッチグループ傘下に入り、国際展開の足場を得た。

2002年8月のミューグリッツ川氾濫では工場が浸水の被害を受けたが、修復を経て事業を継続。2006年にはスウォッチグループがプフォルツハイムの文字盤工房Th. Müllerを取得し、2013年に専属の文字盤マニュファクチュールとして再編された。2018年7月、ローラント・フォン・カイトが新CEOに就任。2019年にはダイバーズウォッチ「SeaQ」コレクションを発表した。2022年から進められた文字盤工房のグラスヒュッテ本拠地への移転は2025年に完了し、設計から組立までを一拠点に集約する体制が整えられた。

05 — SERIES OVERVIEW

シリーズ概観

How the series relate

現在のラインアップは大きく4つの軸で構成されている。

「セネター」コレクションは当ブランドの古典的中核を担う。1997年導入のパノラマデイトを最も純粋な形で表現する「セネター エクセレンス パノラマデイト」をはじめ、年次カレンダーやコスモポリート(世界36タイムゾーン対応)など実用的複雑機構の系譜を抱える。アラビア数字またはローマ数字、鉄道分目盛、剣型針といった古典的意匠が共通言語となっている。

「パノ」コレクションは、文字盤の左右非対称レイアウトを特徴とする。時分と小秒、パノラマデイトを別々の領域に分配する構成は、A. ランゲ&ゾーネの「ランゲ1」とともにザクセン時計デザインの一つの解として知られる。自動巻き「パノマティック」、手巻き「パノリザーブ」、そしてムーブメントを文字盤側に反転させた「パノインバース」と「パノマティックインバース」が派生として並ぶ。

「ヴィンテージ」コレクションは「シックスティーズ」と「セヴンティーズ」の2系統からなり、GUB時代の1960年代「シュペツィマティック」と1970年代の角型ケースを意匠的原型としている。クッション型ケース、ドーム状の文字盤、色彩豊かなグラデーション仕上げなど、東ドイツ期の意匠的遺産を意識的に呼び戻したラインである。

「スペシャリスト」コレクションは2019年に新設された実用系の枠で、ダイバーズウォッチ「SeaQ」が中核となる。1969年の「シュペツィマティック・タイプRP TS 200」を起点とする系譜で、ISO 6425規格に準拠した200メートル防水のスタンダードモデル、300メートル防水の「SeaQ パノラマデイト」、2022年追加のクロノグラフ仕様が並ぶ。

これに加え、レディース向けの「パヴォニア」ラインや、複雑機構を集中させた限定モデル群が随時投入されている。各シリーズは独自の機能的性格を持ちつつ、3/4プレート、パノラマデイト、グラスヒュッテ・ストライプといった共通の意匠言語で結ばれている。

06 — SERIES

代表シリーズ

Lineages of one house
全3シリーズを見る →
07 — CALIBERS キャリバー一覧 →

主要キャリバー

Movements of the house
08 — CULTURAL

文化との接点

Where this house meets the wider world

グラスヒュッテ・オリジナルの文化的接点は、ザクセン地域の工芸伝統と、ベルリン国際映画祭(ベルリナーレ)との関わりに見出される。2017年の第67回ベルリナーレでは特別コレクション「シックスティーズ アイコニック スクエア」(5本セット、25セット限定)を発表し、映画祭をプレゼンテーションの場として活用してきた。

故郷ドレスデンへの言及は、限定モデルの題材として継続的に表現されている。2021年の「パノインバース リミテッド エディション プラチナ」は、ドレスデン芸術アカデミーのガラスドームをモチーフにギヨシェ装飾を施した。2024年発表の「パノマティックインバース ドレスデン トリビュート」(25本限定)は、フラウエンキルヒェやエルベ川遊歩道の手彫り装飾を伴う。

2025年にはザクセン州内のマイセン磁器工房と協業した「セネター マイセン リミテッド エディション」が発表され、地域の伝統工芸との対話というブランド固有の路線が形を取っている。

— SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Gold women’s pocket watch 公式 · Deutsches Uhrenmuseum Glashütte · 2026.10.18 閲覧 Deutsches Uhrenmuseum Glashütte · 2026.10.18
  2. 02 公式 180 years of Glashütte watchmaking art. 1845 to 2025 公式 · Glashütte Original · 2026.08.15 閲覧 Glashütte Original · 2026.08.15
  3. 03 公式 Tribute to a genius in the Glashütte art of watchmaking 公式 · Swatch Group · 2026.10.18 閲覧 Swatch Group · 2026.10.18
  4. 04 公式 Acquisition of Glashütter Uhrenbetrieb GmbH 公式 · The Swatch Group · 2026.08.15 閲覧 The Swatch Group · 2026.08.15
  5. 05 専門メディア Details and commentary on the new Glashütte Original Alfred Helwig Tourbillon 1920 専門メディア · Deployant · 2026.10.18 閲覧 Deployant · 2026.10.18
  6. 06 専門メディア Glashütte Original — Brand profile 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.08.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.08.15
  7. 07 専門メディア How Dials Are Made At The Glashütte Original Dial Factory In Pforzheim, Germany 専門メディア · Quill & Pad · 2026.08.15 閲覧 Quill & Pad · 2026.08.15
  8. 08 専門メディア Glashütte Original Marks 180 Years With The PanoMaticCalendar "Blue Of Dawn" 専門メディア · Revolution Watch · 2026.08.15 閲覧 Revolution Watch · 2026.08.15
  9. 09 専門メディア In-Depth: Alfred Helwig’s Flying Tourbillon in Wrist- and Pocket Watches 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.18 閲覧 SJX Watches · 2026.10.18
  10. 10 専門メディア Führungswechsel: neuer CEO bei Glashütte Original ab 1. Juli 2018 専門メディア · neueuhren.de · 2026.08.15 閲覧 neueuhren.de · 2026.08.15