本文へ
CALIBER · Glashütte Original

66-08

手巻 Handwound Analog パワーリザーブ Power Reserve Indicator

2019年、手彫りの草花文様をまとい、3/4プレートと白鳥の首微調整を文字盤側へ反転配置したグラスヒュッテ・オリジナルの手巻キャリバー

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
41 時間
石数
31 石
ムーブメント径
38.3 mm
Cal. 66-08
movement · 66-08 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 66-08は、グラスヒュッテ・オリジナルが2019年に発表した手巻キャリバーである。自社製の「キャリバー66」系を基礎とし、通常は裏側に置かれる3/4プレートや白鳥の首微調整を文字盤側へ反転配置した、PanoInverse専用の構成を採る。毎時28,800振動 (4Hz)、約41時間のパワーリザーブ、31石を備え、機能は偏心配置の時・分・スモールセコンド、パワーリザーブ表示、ストップセコンドに絞られる。プラチナケースの限定モデル Ref. 1-66-08-01-03-30 に搭載され、手彫りの草花文様で飾られたテンプ受けが文字盤上で躍動する。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerGlashütte Original
Reference66-08
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels31 石
Power reserve41 h
Movement ⌀38.3 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateBig Date
AdditionalPower Reserve Indicator
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 反転という発想

グラスヒュッテ・オリジナルは2008年、PanoInverseを世に問うた。狙いは明快である。通常はサファイアクリスタルの裏蓋越しにしか見えない機構の見せ場を、文字盤側へ移すことであった。本来は裏側に位置する3/4プレート、手彫りのテンプ受け、白鳥の首微調整。これらを反転させた配置によって、着用者は針の奥で律動するテンプを正面から眺められる。ザクセン時計が培ってきた仕上げの美学を、装飾ではなく主役として提示する試みであった。

Cal. 66-08は、この系譜に連なる手巻キャリバーである。基礎となるのは同社の自社製「キャリバー66」系で、二重の白鳥の首による微調整機構は2002年のキャリバー66に遡るとされる。自動巻ローターを持たない手巻構成を選んだことで、文字盤側の眺めは遮るものなく開かれている。

2. 2019年、草花をまとった限定キャリバー

66-08が披露されたのは2019年である。それまでのPanoInverseがステンレススチールの精悍な表情を備えていたのに対し、この世代は趣を変える。テンプ受けと、裏側へ回った3/4プレートの双方に、手彫りの草花文様が刻まれた。細い線で枝葉が広がる意匠は、野の花畑にもたとえられる繊細さを湛える。

ケースはプラチナ、文字盤は青のグレインラッカー仕上げ。リューズには青いサファイアカボションが据えられ、コーンフラワーブルーに焼き戻されたねじが青の基調を重ねる。25本のみの限定であった。装飾は替わっても、機構の骨格は66系のまま受け継がれている。

3. 装飾で語り分ける66系の系譜

66系のPanoInverse用キャリバーは、機構を共有しながら仕上げで世代を語り分けてきた。2008年の66-06が起点となり、ステンレススチールのモデルを支えた。2019年の66-08は手彫りの草花文様、2021年の66-09は波打つギヨシェ彫り、2023年の66-12はレーザー彫刻による架空の摩天楼群を3/4プレートに刻む。

いずれも毎時28,800振動 (4Hz)、約41時間のパワーリザーブという基本仕様を共有する。差異は寸法やスペックではなく、プレートと橋に刻まれた装飾そのものにある。同一の機構を異なる表情で見せる手法は、PanoInverseという企画の核を成している。

4. 表と裏を反転させる流儀

スイスの多くの伝統では、仕上げの妙は裏蓋の内側に秘められてきた。グラスヒュッテ・オリジナルはこれを反転させ、機構そのものを文字盤の意匠へ組み替えた。3/4プレートも、白鳥の首も、手彫りのテンプ受けも、本来は裏方であった要素である。66-08はそれらを正面に据え、時計を一個の小さな展示物へと変える。仕様の数値だけでは測れない、装飾と構造が一体となった工芸的性格こそ、この系のキャリバーが担う役割である。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

Cal. 66-08の構造を解くうえで核となるのは、反転配置という思想である。一般的なムーブメントでは、地板を覆う大型のプレートやテンプ周りの調整機構は裏側に置かれ、裏蓋越しに鑑賞される。66-08はこの順序を組み替え、3/4プレートとテンプ、微調整機構を文字盤側へ向けて据える。針は偏心配置となり、左側に時・分とスモールセコンド、右側にパワーリザーブ表示が配される。

3/4プレート(ドライフィアテルプラティーネ)は、輪列の大半を一枚の地板で押さえるザクセン時計の伝統的構造である。複数の橋に分けず一枚で支えることで、輪列の安定が図られる。表面はロジウムメッキを基調に、グラスヒュッテ・ストライプ(グラスヒュッテ縞)が引かれ、地板にはペルラージュ(真珠状の円研磨)が施される。66-08ではこのプレートの裏面にも草花文様が手彫りされ、表裏の双方が鑑賞の対象となる。

調速機構には、デュプレックス・スワンネック(二重白鳥の首)微調整を備える。白鳥の首微調整は、湾曲したばねで緩急針を一方向へ押し付け、片振りなく精密に位置決めする方式である。66系はこのばねを二組用いる。一方が緩急の調整を、もう一方が保持を担い、対称の構えで微調整の精度を高める。手彫りのテンプ受け(バタフライブリッジ)に載るこの機構は、文字盤側で最も目を引く見せ場となる。

テンプはねじ付きのスクリューバランスで、外周のねじを回して慣性モーメントを調整する。脱進機(ガンギ車とアンクルからなり、ぜんまいの力を一定間隔で解き放つ機構)を経て、テンプは毎時28,800振動 (4Hz)で時を刻む。4Hzは1秒あたり8回の振動に相当し、姿勢変化への安定と摩耗の抑制の釣り合いをとる現代的な選択である。

香箱は単一で、巻き上げると約41時間 (±5%)のパワーリザーブを得る。手巻のため自動巻ローターを持たず、その分だけ文字盤側の視界が開けている。針合わせ時に秒針を止めるストップセコンド機構を備え、正確な時刻合わせに応じる。石数は31石で、一部の軸受けはねじ留めの金無垢シャトン(チャトン)に収められ、19世紀の懐中時計に連なる装飾的伝統を受け継ぐ。

仕上げは細部に及ぶ。面取りされたエッジ、磨き上げられた鋼部品、青く焼き戻されたねじ、そして手彫りの装飾。ムーブメント径は38.3mmとされ、プラチナ製42mmケースに収められて50m防水を確保する。数値の網羅よりも、見られることを前提に組み立てられた構造そのものが、このキャリバーの本質を成している。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Glashütte Original 公式 · 2026.08.15 閲覧 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Glashütte Original Serenade Luna 専門メディア · Master Horologer · 2026.08.15 閲覧 Master Horologer · 2026.08.15