本文へ
GLASHüTTE ORIGINAL · SERIES

SeaQ

シーキュー

1969年の東ドイツ製ダイバーを原型に、ブランド自身のアーカイブから甦らせた潜水時計の系譜

01 — 概要 / SUMMARY

SeaQ(シーキュー)は、グラスヒュッテ・オリジナルが2019年に発表したダイバーズウォッチのシリーズである。原型は、東ドイツ時代の1969年にグラスヒュッテで初めて生まれた潜水時計Spezimatic Type RP TS 200。半世紀の空白を経て、ブランドは自社の記録からこの系譜を甦らせた。現行は、ヴィンテージに忠実な39.5mmのSeaQ、固有のパノラマデイトを備える43.2mmのSeaQ Panorama Date、そして2024年に加わったSeaQ Chronographの三つを軸とする。新興の系譜でありながら、その根は東ドイツの軍用潜水という歴史に届いている。

02 — STORY · 物語

SeaQ(シーキュー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

東ドイツが生んだ最初の潜水時計

グラスヒュッテで初めて潜水時計が作られたのは1969年である。製造したのは、当時この地の時計産業を一手に担っていた国営企業VEBグラスヒュッターウーレンベトリーベ (GUB)。東ドイツ (ドイツ民主共和国) 体制下のことだった。

その時計はSpezimatic Type RP TS 200と名付けられた。心臓部には、GUBが自社で量産していた自動巻Cal. 75を積む。Cal. 75を搭載した時計は総じて「Spezimatic」と呼ばれ、石数の表示と「Shockproof」の文字が、当時の品質と堅牢性の約束を示していた。

ケース径は36mm。黒文字盤に大ぶりの夜光数字と太い針を配した、装飾を削ぎ落とした実用の道具である。開発には東ドイツの軍用ダイバーが助言したと伝わり、当初の流通はごく限られていたとされる。今日この個体はグラスヒュッテのドイツ時計博物館に展示され、ヴィンテージ市場でも希少な存在となっている。

02

自社の記録に立ち返る

グラスヒュッテ・オリジナルは長く、ドイツ伝統の高級時計の作り手として知られてきた。その同社が2019年、道具時計を中核に据えた新コレクション「Spezialist」を立ち上げる。ブランドにとって五つ目の系列であり、その第一作がSeaQだった。

着想の源は遠くにはなかった。原型は、すぐ近くの博物館に眠る自社の1969年製ダイバーだったからである。発表50周年に合わせ、同社はもっとも忠実な復刻としてSeaQ 1969 (Ref. 1-39-11-01-80) を69本限定で送り出した。緑の針、ベージュの「オールドラジウム」調夜光、そして文字盤の「25 Rubis - Shockproof」の表記が、原型へのオマージュとなっている。なお歴史的原型のCal. 75は26石であり、復刻側は現行ムーブメントの石数に合わせて25と記す点に、忠実さと現実の折り合いが見える。裏蓋には三叉の鉾、ブランドのダブルG、そして200m (20気圧) 防水を表す20の波が刻まれた。

03

二つの基本形

SeaQは当初から二つの解釈で示された。一つは原型に近い39.5mmのSeaQ (Ref. 1-39-11-06-80) である。200m防水で、自社製Cal. 39-11を積み、3時位置に控えめな日付窓を持つ。もう一つは43.2mmのSeaQ Panorama Dateである。300m防水とし、ブランドの象徴であるパノラマデイトを4時位置に配し、100時間のパワーリザーブを備えるCal. 36-13を搭載した。

同じ顔立ちを保ちながら、寸法・防水・機構の階層を分けたこの二本立てが、その後のSeaQの基本骨格となる。

04

色とムーブメントの可視化

発表の翌年以降、シリーズは派生を重ねた。2020年にブルー、2021年にリードグリーンの文字盤が両系列に加わる。2024年には、39.5mmのSeaQに長く伏せられていたCal. 39-11を見せるためのサファイア裏蓋仕様が、所有者の要望に応える形で追加された。白鳥首微調整機構や3/4プレートを備えるこの自社製キャリバーは、それまで無垢の鋼の裏蓋に隠されていたものである。

05

クロノグラフへの到達

2024年、シリーズはより複雑な領域へと踏み込む。SeaQ Chronographの登場である。43.2mmのケースに、コラムホイールとフライバック機構を統合したCal. 37-23を収めた。70時間のパワーリザーブとシリコンひげぜんまいを持つこのキャリバーは、潜水時計の系譜と、同社が磨いてきたクロノグラフ機構を一つに束ねたものである。道具としての出自を保ちつつ、SeaQは高級時計の文脈へと歩を進めている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

SeaQが一貫して最優先するのは視認性である。原型のSpezimatic譲りの大ぶりなアラビア数字、太く塗り分けられた針、黒を基調とした高コントラストの文字盤。これらは暗い水中で時刻を一目で読ませるための設計言語であり、半世紀を経た現行モデルにも引き継がれている。1960年代の原型が持っていた、鋭い角とラグ一体のケース造形もまた、シリーズの面構えを決める要素として残された。

夜光に白ではなくベージュの「オールドラジウム」調を選ぶ判断には、ヴィンテージの温度感を残す意図がある。派手な色や過剰な装飾に走らず、道具としての落ち着きを保つ。この抑制が、SeaQの輪郭を曖昧にしない。

機能面では、逆回転防止の片方向回転ベゼル、半分ごとに節度のあるクリック、ねじ込み式リューズ、ドーム型サファイアといった、潜水の安全に直結する要素を堅実に積む。ISO 6425とDIN 8306の両規格に適合し、組み立て後には24日間の自社「エクセレンス・テスト」を課す。文字盤は同社がプフォルツハイムに持つ自前の工房で作られる。

意匠の核として見落とせないのが、ブランド固有のパノラマデイトである。仕切りのない二枚のディスクが同一平面で日付を大きく見せるこの機構を、潜水時計の文字盤へ組み込んだ点に、SeaQの独自性がある。スイス勢のSeamasterやFifty Fathomsが築いた潜水時計の語彙とは異なる、ザクセンの地に根ざした可読性の流儀が、ここにある。

加えてSeaQは、一つの顔立ちを保ちながら、39.5mmの時刻表示、43.2mmのパノラマデイト、そしてクロノグラフという三つの機械的階層へ展開する。変えないものと変えるものを切り分けるこの判断が、新興のシリーズに芯を与えている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1969
Cal. 75
歴史的原型に積まれたGUB自動巻、26石。
2019-現在
Cal. 39-11
39.5mm用。白鳥首微調整、40時間。
2019-現在
Cal. 36-13
パノラマデイト用。100時間とシリコン。
2024-現在
Cal. 37-23
コラムホイール式フライバック、70時間。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1969

東ドイツの歴史的原型

Spezimatic Type RP TS 200
GUB製、グラスヒュッテ初のダイバー。36mm・Cal. 75。
2019

50周年の忠実な復刻

SeaQ 1969 (1-39-11-01-80)
原型を写した69本限定。緑針とShockproof表記。
2019-現在

二つの基本形が定着する

SeaQ (1-39-11-06-80) Panorama Date (1-36-13)
39.5mm 200mと43.2mm 300mの二本立てが定着。
2024-現在

クロノグラフへの拡張

SeaQ Chronograph (1-37-23)
コラムホイール式フライバック搭載の上位機。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Glashütte Original 公式 · 2026.08.15 閲覧 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Glashütte Original Serenade Luna 専門メディア · Master Horologer · 2026.08.15 閲覧 Master Horologer · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive