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GLASHüTTE ORIGINAL · SERIES

Pano

パノ

黄金比で構成した非対称文字盤と大型パノラマデイト。再興期のグラスヒュッテ・オリジナルに固有の表情を与えた一族。

01 — 概要 / SUMMARY

Pano(パノ)は、2000年前後にグラスヒュッテ・オリジナルが発表した、非対称の文字盤を共通言語とするコレクションである。左に時分と秒、右にムーンフェイズやパワーリザーブ、そして同社の象徴である大型のパノラマデイトを配し、その配置は黄金比に基づく。手巻のPanoReserve、自動巻のPanoMaticLunar、機構を文字盤側に見せるPanoInverse、年次カレンダーのPanoMaticCalendarなどが現行の柱をなす。単一のモデルではなく、ひとつの意匠思想が枝分かれした家系として読むべきシリーズである。

02 — STORY · 物語

Pano(パノ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

大型日付という出発点

東西ドイツの再統一を経て、1994年に国営企業の民営化からグラスヒュッテ・オリジナルが生まれた。再興されたばかりのマニュファクチュールにとって、固有の表情をどう築くかは切実な課題であった。

その答えの一つが、1997年にSenator(セネター)コレクションで披露された大型日付「パノラマデイト」である。十の位と一の位を担う二枚の円盤を同一平面・同一軸上に重ね、両者を隔てる線はわずか0.06mmほど。中央に仕切り板を置かずに済むため、二桁が地続きの一塊として読める。日付という最も平凡な機能を、判読性と意匠の両立した表示へ磨き上げた点に、この機構の核心がある。

ただし当初、この日付は左右対称のセネターの文字盤に載っていた。問われていたのは、日付を「足す」ことではなく、日付を中心に一本の時計を組み上げる構想であった。

02

PanoRetroGraph — 再興期の名刺

2000年、同社はスウォッチ グループの傘下に入る。同じ年、バーゼルで披露されたのがPanoRetroGraph(パノレトログラフ)であった。

背景には隣家の存在がある。1999年、同じグラスヒュッテのA. ランゲ&ゾーネが自社製フライバッククロノグラフ「ダトグラフ」を世に問うていた。グラスヒュッテ・オリジナルの回答は、さらに込み入っていた。手巻、コラムホイール制御のフライバッククロノグラフに、30分の逆行カウントダウンと、計測終了を告げる打鈴機構を組み合わせたのである。搭載するCal. 60は、自社で一貫製造された複雑機械であった。

プラチナ50本の限定として送り出され、2001年には独誌の「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。だが後世への最大の遺産は、複雑さそのものよりも文字盤にあった。中心を外した時分表示と、右下に据えた大型の日付。この非対称のレイアウトこそ、以後のPanoを貫く文法の原型となった。

03

三本柱の確立

限定の話題作を、恒常的なコレクションへと翻訳したのが続く数年である。

2002年、打鈴を外し、より手に取りやすいフライバッククロノグラフとしてPanoGraph(パノグラフ、Cal. 61系)が登場する。同年には、パワーリザーブ表示を備えた手巻のPanoReserve(パノリザーブ、Cal. 65系)も加わった。そして2003年、自動巻にムーンフェイズを組み合わせたPanoMaticLunar(パノマティックルナ、Cal. 90系)が発表される。

PanoMaticLunarはやがて同社で最も売れるモデルとなり、事実上のブランドの顔と目されるようになった。自動巻のローターをあえて中心から外した設計は、非対称の文字盤と呼応する。三本のモデルによって、Panoは一過性の意匠ではなく、増殖していく設計言語として定着した。

04

機構を見せる — インバースという発想

2008年のPanoInverse(パノインバース)は、Panoに新しい思考を持ち込んだ。通常は裏蓋越しにしか見えない3/4プレートと調速機構を、文字盤側へ反転させて配置したのである。ムーブメントそれ自体を「顔」にするという発想であった。

2014年には、この構造を自動巻へ広げたPanoMaticInverse(パノマティックインバース、Cal. 91系)が続く。手彫りのテンプ受けと、同社の象徴であるデュプレックス・スワンネック微調整機構が、文字盤の上で稼働する。見せるための装飾ではなく、機構の配置そのものを意匠とする点に、この一派の独自性がある。

05

2012年の刷新と現代

2012年、Panoは全体に手を入れられた。ケース径を拡大し、各小文字盤の縁に巡らされていたリングを取り払い、防水性能を5気圧(50m防水)へ引き上げた。文法は変えず、可読性と現代性だけを底上げする調整であった。

複雑方向への展開も続く。2013年には飛行トゥールビヨンを擁するPanoLunarTourbillon(パノルナトゥールビヨン、Cal. 93系)が、2022年には同社初のアニュアルカレンダーを搭載するPanoMaticCalendar(パノマティックカレンダー)が加わる。後者の新型Cal. 92系は、シリコン製ひげぜんまいと約100時間のパワーリザーブ、小径ローターを備える、明らかに新世代のキャリバーである。

2025年にはプラチナ製の限定PanoLunarTourbillonも発表された。発足から四半世紀を経て、Panoは黄金比に基づく一つの表情を保ったまま、手巻三針から年次カレンダー、トゥールビヨンまでを擁する家系へと育っている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Panoが一貫して守ってきたのは、黄金比に基づく非対称の構図である。文字盤を左右に割り、左半分に時分の小文字盤と、それに一部重なる秒の小文字盤を置く。二つの円が描く8の字が、視線の起点となる。右半分には、ムーンフェイズやパワーリザーブといった機構と、4時位置の大型パノラマデイトが収まる。中心を外しながらも均衡が崩れて見えないのは、各表示の大きさと間隔が比率で律せられているためである。

意匠の重心は、つねにパノラマデイトに置かれている。二枚の円盤を同一平面に重ね、仕切り板を用いずに二桁を地続きで見せるこの日付は、機能であると同時に、文字盤全体を束ねる視覚的な錨でもある。薄い真鍮の円盤は自社で仕立てられ、二枚が擦れて固着しないよう塗膜の厚みにまで精度が要る。どのモデルでも、まずこの窓に目が向くよう構成されている。

その背後で、ドイツ時計製造の様式が受け継がれている。3/4プレート、手彫りのテンプ受け、ねじ留めのゴールドシャトン、焼き入れした青いネジ、そして同社が看板とするデュプレックス・スワンネック微調整機構。これらは本来、裏面の見どころである。Panoはそれを文字盤側へ反転させるインバースという手法で、機構そのものを意匠として差し出した。自動巻モデルでローターを中心から外したのも、非対称の文字盤と呼応させるためである。

近隣のA. ランゲ&ゾーネが対称的で建築的な構成を磨いてきたのに対し、Panoはあえて非対称を貫く。優劣ではなく、選んだ語法の違いである。色や装飾を抑え、コントラストと判読性を最優先する自制も一貫している。発足から二十数年、世代やキャリバーが入れ替わっても「Panoの顔」と分かるのは、この少数の原則を動かさずにきたからである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2000-2002
Cal. 60 / 61 系
コラムホイール式フライバックの手巻クロノ世代。
2002-現在
Cal. 65 系
手巻の基幹。パワーリザーブ表示を統合。
2003-現在
Cal. 90 系
自動巻の基幹。オフセンターローターを採用。
2008-現在
Cal. 66 / 91 系
機構を文字盤側に置くインバース系の手巻と自動巻。
2022-現在
Cal. 92 / 93 系
シリコン製ひげぜんまいを核とする現代世代。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2000-2004

初代パノ

PanoRetroGraph
フライバッククロノに大型日付を据えた、非対称文字盤の出発点。
2002-現在

手巻の基本形

PanoGraph PanoReserve
手巻クロノとパワーリザーブで非対称配置を定型化。
2003-現在

自動巻とムーン

PanoMaticLunar
自動巻にムーンフェイズ。事実上のコレクションの顔へ。
2008-現在

機構を表に

PanoInverse
ムーブメントを文字盤側へ反転、見せる構造を提示。
2013-現在

飛行トゥールビヨン

PanoLunarTourbillon
飛行トゥールビヨンを擁する高複雑機構の世代。
2022-現在

初の年次カレンダー

PanoMaticCalendar
同社初のアニュアルカレンダーと新世代キャリバー。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Glashütte Original 公式 · 2026.08.15 閲覧 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Glashütte Original Serenade Luna 専門メディア · Master Horologer · 2026.08.15 閲覧 Master Horologer · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive