設計思想
1. 手巻きの薄型に、自動巻きを
2014年に始まったオクト フィニッシモは、当初は手巻きの系統であった。トゥールビヨンとミニッツリピーターで薄さの記録を重ねたが、時刻だけを示す基本の時計も手巻きだった。日々身につける時計として、巻き上げの手間を省くことが次の課題になる。
2017年のバーゼルワールドでブルガリが示した答えが、オクト フィニッシモ オートマティックである。総厚5.15mmは、発表の時点で自動巻き腕時計として最も薄かった。ブルガリにとっては、2014年のトゥールビヨン、2016年のミニッツリピーターに続く3つ目の薄型記録となる。102713は、そのチタン製ブレスレット仕様にあたる。
2. 記録の幅は0.1mm
それまで自動巻き腕時計の最薄記録は、ピアジェのアルティプラノが持っていた。本機の総厚5.15mmは、ピアジェの5.25mmをわずか0.1mm下回ったにすぎない。記録の差は小さく、保持した期間も長くはなかった。
翌2018年1月のSIHHで、ピアジェはアルティプラノ アルティメート オートマティック 910Pを発表した。総厚は4.30mmで、自動巻きの記録はピアジェに戻る。910Pは外周を回るローターを用い、ケースの裏蓋を部品の支えとして使う。ケースとムーブメントを一体に組む発想で、本機より0.85mm薄くなった。
対する102713は、独立したムーブメントをケースに収める一般的な構成を守っている。記録の数字とは別に、通常の構成のまま薄さを得た点に本機の性格がある。
3. ブレスレットが定めた性格
2017年11月、オクト フィニッシモ オートマティックはGPHGでメンズウォッチ賞を受けた。Revolution誌も、同年の最優秀メンズウォッチに本機を選んでいる。同誌が驚きをもって伝えたのは、ムーブメント以上に、ケースと同じ梨地のチタンで作られた薄いブレスレットであった。
極端に薄いケースに、同じ薄さの一体型ブレスレットを合わせる。ケースだけでなく手首に巻く部分まで薄型の論理で作り直したことが、102713を革ストラップ仕様とは別の時計にしている。
4. 派生の起点として
翌年以降、オクト フィニッシモ オートマティックは素材と色を変えて広がっていく。2018年にはスティールとローズゴールドの仕様が加わり、チタンのまま針の色を変えた仕様も現れた。2020年には100m防水のスティール仕様が登場し、外装の作りそのものが見直される。それでも、サンドブラストのチタン一色という102713の構成は、系列の原点として現行のコレクションに残っている。
意匠分析
102713の設計は、ケースから文字盤、ブレスレットまでを一つの金属で仕立てることに集約される。
ケースは40mm径のチタン製で、総厚は5.15mmに収まる。八角形の胴に円形のベゼルを載せる構成は、オクトに共通する骨格である。表面はすべてサンドブラストの梨地で、鏡面の部分を持たない。艶を消した灰色が、多面体の稜線を陰影だけで浮かび上がらせる。前後の風防はサファイアクリスタルで、裏側から機械が見える。
文字盤もまたサンドブラストのチタンで、ケースと同じ質感を共有する。細いバーインデックスを並べ、縦長の数字は12時と6時にだけ置く。針は黒いドーフィン型で、灰色一色の盤面から形だけで浮かぶ。スモールセコンドは7時と8時の間に配される。色数を削った結果、時刻は明暗の差で読み取らせる構成になった。
リューズはチタン製で、頂部にセラミックを収める。灰色に統一された外装の中で、ここだけが別の素材の黒を見せる。防水は30mにとどまる。
ブレスレットはケースと連続する一体型で、同じくサンドブラストのチタンで作られる。留め具は三つ折れのフォールディングバックルである。厚さは約2.5mmとされ、業界の通例より1mm薄いとSJX Watchesは指摘する。コマの裏は肉抜きされ、留め金はコマ裏の窪みに収まると伝わる。留め具の位置でも厚みが変わらず、薄いケースの印象が手首を一周する。総重量は68gとされ、手首の上ではほとんど重さを感じさせない。
ムーブメントは自社製のCal. BVL 138で、厚さは2.23mmである。土台は手巻きのCal. BVL 128で、小径のマイクロローターをプラチナで作り、自動巻きに改めている。振動数は毎時21,600振動 (3Hz)、パワーリザーブは60時間を確保する。受けにはコート・ド・ジュネーブ、地板にはペルラージュが施され、稜線は面取りで整えられる。
系譜と歴史
オクト フィニッシモ オートマティックは、2017年3月のバーゼルワールドで発表された。102713は、その中でチタン製ブレスレットを合わせた仕様にあたる。同時に、革ストラップを合わせた仕様も用意され、WatchBaseはこれをRef. 102711として記録する。発表の時点で選べる素材はチタンだけで、ケース、文字盤、ブレスレットのすべてがサンドブラスト仕上げであった。社内コードはBGO40C14TTXTAUTOとされる。
同年11月8日、ジュネーブ時計グランプリ(GPHG)で、オクト フィニッシモ オートマティックはメンズウォッチ賞を受けた。同じ夜、オクト フィニッシモ トゥールビヨン スケルトンもトゥールビヨン・脱進機賞を得ている。2018年1月には、Revolution誌が2017年の最優秀メンズウォッチとして本機を挙げた。
2018年のバーゼルワールドでは、同じ寸法のケースにスティールと18Kローズゴールドの仕様が加わった。同じ年、チタンのまま針とインデックスを青くした仕様も示されている。これがRef. 102945で、200本の限定であった。2020年には、ローズゴールド調の針と数字を持つRef. 103137が、同じく200本の限定で加わったとされる。
2020年1月、ブルガリはサテンとポリッシュで仕上げ、防水を100mに高めたスティールのRef. 103297を発表した。一方で102713は、30m防水のサンドブラスト仕様のまま継続している。2026年10月時点でも、ブルガリの公式サイトには本機が掲載されている。生産終了を告げる公式の発表は確認できていない。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 Octo Finissimo Watch 102713
- 02 公式 BVLGARI, Octo Finissimo Automatic | GPHG
- 03 報道 Piaget Altiplano Ultimate Automatic 910P #SIHH2018
- 04 専門メディア Baselworld 2017 – Bulgari Octo Finissimo Automatic & The World’s Thinnest Automatic Movement
- 05 専門メディア Bvlgari Octo Finissimo Automatic Sandblasted Trilogy of Metals (Titanium, Steel and Pink Gold) Baselworld 2018
- 06 専門メディア Bvlgari Octo Finissimo Automatic Satin-Polished Steel // Review, Price
- 07 専門メディア The Piaget Altiplano 910P and Ultimate Concept Tourbillon in Khaki Green
- 08 専門メディア Revolution Awards 2017: Best Men’s Watch — Bulgari Octo Finissimo Automatic
- 09 専門メディア Bulgari Introduces the Octo Finissimo Automatic Satin-Polished
- 10 専門メディア Hands-On with the Bulgari Octo Finissimo Automatic, an Ultra-Thin Winner
- 11 専門メディア Piaget Introduces the World’s Thinnest Automatic Watch, the Altiplano Ultimate 910P
- 12 専門メディア NEWS: The 15 best watches of 2017, according to the GPHG
- 13 専門メディア Bulgari 102711 : Octo Finissimo Automatic Titanium / Grey / Alligator
- 14 専門メディア Bulgari 102713 : Octo Finissimo Automatic Titanium / Grey / Bracelet
- 15 専門メディア Bulgari 102945 : Octo Finissimo Automatic Titanium / Grey - Blue / Bracelet
- 16 専門メディア Bulgari 103137 : Octo Finissimo Automatic Titanium / Grey / Bracelet
- 17 専門メディア Bvlgari Octo Finissimo Automatic Limited Edition