設計思想
超薄路線の中のローズゴールド
オクト フィニッシモ オートマティックは、2017年に発表された。発表時、自動巻き時計として当時最薄の総厚5.15mmを掲げ、2014年のトゥールビヨン、2016年のミニッツリピーターに続く薄型の到達点となった。高複雑路線とは別に、三針と小秒だけで薄さを見せる、装着しやすい基準作でもある。初出はチタンだったが、翌2018年にスティールと18Kローズゴールドが加わる。極薄という技術的主題を、素材の格を上げて表現する流れが生まれた。103300は、このローズゴールド展開の上に立つ一本である。
ブルー文字盤という選択
標準のローズゴールド(Ref. 102912)は、ケース・ブレス・文字盤を同じ金色でまとめる。サンドブラスト仕上げによる無彩の均質さが、その狙いだった。103300は、この均質さをあえて崩す。金のケースに対し、文字盤を深いブルーのマットとし、数字を東アラビア数字(中東で用いられる数字表記)で記した。ブルガリは中東市場との関わりが深く、地域固有の数字を盤面に置く試みは自然な選択だった。色を一つ加えるだけで、禁欲的だった薄型時計の性格が和らぐ。曲線を持つ数字が、角の立ったケースと対照をなす。金一色の標準作とは別の表情を、同じ素地から引き出した仕様である。
姉妹機と関連作
同じブルー文字盤は、チタンケースの Ref. 103301 にも与えられた。素材だけを違える、文字どおりの姉妹機である。金とチタンで、同じ意匠が重さと色をどう変えるかを見せる対になっている。東アラビア数字を採った関連作には、2019年のドバイ・ウォッチ・ウィークで示されたチタンの限定版 Ref. 103023 もある。こちらは数字をグリーンのラッカーで描き、100本限定とされた。103300は、それらと主題を共有しつつ、金の素地とブルーの対比という固有の解を持つ。金一色の表情を求めるなら、標準作の Ref. 102912 が対になる。
意匠分析
103300の設計は、標準のローズゴールド作との差分にこそ表れる。
ケースは18Kローズゴールドの2ピース構造で、径40mm、厚さ5.15mm。段差を持つベゼルに八角形の枠が落とし込まれ、ラグは幅広く伏せられる。総厚が薄いため、伏せたラグとあいまって手首への収まりは平坦に近い。ブレスからケースまでをサンドブラストのマットで統一する点は、シリーズに共通する。ブレスは一体型で、たたみ込み式のクラスプを備える。風防は表裏ともサファイアで、薄いケースの両面を覆う。
本機固有の見どころは文字盤にある。標準作(Ref. 102912)がバーインデックスと同色文字盤で無彩にまとめるのに対し、103300はブルーのマット地に東アラビア数字を据えた。中東で用いられる数字は曲線が多く、直線的なケースとの間に視覚的な緊張を生む。角ばった構造と丸みのある数字が、一枚の盤面で幾何学的なコントラストをつくる。金色の数字とブルー地の対比は、金一色の標準作にはない読みやすさと奥行きを与える。ブルー地もまたマットで、ケースの梨地と質感を揃える。盤面で異質なのは色だけである。スモールセコンドは7時位置に置かれ、日付窓は持たない。針はドーフィン型とされる。
裏蓋はサファイアの開き蓋で、Cal.BVL 138が見える。厚さ2.23mmのこの自動巻きは、プラチナ製のマイクロローターで巻き上げる。極薄を保つための機構選択が、金無垢の意匠と同じ一枚の中に収まっている。
系譜と歴史
オクト フィニッシモ オートマティックは、2017年にチタンモデルで発表された。発表時、自動巻きとして当時最薄の総厚5.15mmを実現した一群である。ラインの起点は2017年のチタン(Ref. 102713)であり、103300はその2年後の金無垢派生にあたる。翌2018年には、スティールと18Kローズゴールドの仕様(Ref. 102912)が加わり、素材の幅が広がる。103300は、このローズゴールド展開の延長として2019年に登場した。ブルーのマット文字盤に東アラビア数字を配し、中東市場を強く意識した仕様である。同年、同じブルー文字盤をチタンケースに与えた姉妹機 Ref. 103301 も用意された。また東アラビア数字を採った関連作として、2019年のドバイ・ウォッチ・ウィークで示されたチタンの限定版 Ref. 103023 がある。こちらは数字をグリーンのラッカーで描き、100本限定とされた。103300の防水は30mで、後年のオクト フィニッシモ オートマティックが100mへ高めたのとは世代を異にする。103300自体は本数を伴わない仕様として供給されたとされ、生産期間中に確認できる仕様変更の記録はない。流通は地域性が強く、現行カタログでの扱いは確認できていない。