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CALIBER · Omega

8914

自動巻 Automatic Analog Chronometer Co-Axial Escapement

2026年、秒針を持たない2針時計として初めてマスター クロノメーター認定を得た、オメガ89xx系の自動巻

振動数
25,200 vph · 3.5 Hz
パワーリザーブ
60 時間
石数
38 石
ムーブメント径
29 mm
Cal. 8914
movement · 8914 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 8914は、オメガが2026年3月に発表した自社製自動巻キャリバーである。コンステレーション オブザーバトリーのO-MEGASTEELモデルに搭載され、時と分の2針のみを表示する。振動数は25,200vph(3.5Hz)で、直列に連結した2つの香箱により60時間のパワーリザーブを確保する。コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを備え、15,000ガウスの耐磁性を持つ。オメガは本機を、METASのマスター クロノメーター認定を受けた初の2針ムーブメントと位置づけている。貴金属ケース用の姉妹機としてCal. 8915が併せて開発された。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference8914
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency25,200 vph (3.5 Hz)
Jewels38 石
Power reserve60 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 89xx系の系譜と「秒針」という条件

Cal. 8914の直接の祖先は、2007年にデビューしたCal. 8500系にさかのぼる。コーアクシャル脱進機と2つの香箱を組み合わせたこの世代は、2015年にCal. 8900へと発展した。8900はグローブマスターに初搭載され、METAS(スイス連邦計量・認定局)が定めるマスター クロノメーター認定を最初に受けたキャリバーである。

以後、89xx系は日付、GMT、年次カレンダー、ワールドタイマーへと枝分かれした。WatchBaseは8914の基礎を、日付を持たないCal. 8912としている。8912はシーマスター300やプロプロフに搭載される3針機であり、8914はその構成から秒表示を省いた2針機と整理できる。

しかし2針化には認定上の壁があった。従来のクロノメーター検定は、カメラで秒針の位置を定時に撮影し、日差を読み取る方式を採る。秒針のない時計は、構造上この検定の対象外に置かれてきたのである。

2. 音響計測という解決

この壁を越えたのは、ムーブメント側の改変ではなく計測方法の刷新であった。オメガは2024年4月、クロノメーター検定機関「ラボラトワール・ド・プレシジョン(Laboratoire de Précision)」の設立を発表した。スイス認定機関(SAS)からISO/IEC 17025に基づく試験所として認定を受け、ビエンヌとヴィルレの2拠点で運営される。オメガが創設したものの、他ブランドにも開かれた中立機関とされる。

同機関が開発した「デュアル メトリック テクノロジー(Dual Metric Technology)」は、ワイヤレスの試験ユニットにクロノメーター検定とマスター クロノメーター検定を統合したものである。針の位置ではなく脱進機の打刻音を聴き取るため、秒針の有無に依存しない。Cal. 8914は、この方式で認定を受けた最初期の量産キャリバーとなった。

3. Standard、Luxe、Grand Luxe

2026年のコンステレーション オブザーバトリーでは、ケース素材に応じて仕上げの異なる3仕様が用意された。Cal. 8914は「Standard」にあたり、O-MEGASTEELモデル専用のロジウムメッキ仕上げとなる。Cal. 8915の「Luxe」は18Kゴールドモデル用で、ムーンシャインゴールド製のローターとテンプ受けをオメガとして初めて採用したとされる。プラチナゴールドモデル用の「Grand Luxe」は、アベンチュリンガラスとエナメルを用いたメダリオンを備える。機構と認定基準は3仕様で共通である。

4. 検定制度の多様化の中で

1973年創設のCOSC(スイス公式クロノメーター検査協会)は、長くスイス製クロノメーター認定の中心を担ってきた。近年はCOSCも、より厳格な新基準「エクセレンス クロノメーター」を打ち出している。ジュネーブのTimelabを含め、検定の担い手と方法は多様化しつつある。

定時撮影による長期平均の評価と、毎振動の連続記録による評価は、精度を捉える視点が異なる。Cal. 8914は、ムーブメントそのものより「何をもって精度を証明するか」という問いを前面に出したキャリバーといえる。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

表示輪列と時差修正機能

Cal. 8914は中央に時針と分針のみを置く。秒表示を持たないため、ダイヤル上の情報は最小限に抑えられている。一方で、89xx系に共通する時差修正機能(タイムゾーン機能)は継承された。リュウズ操作で時針のみを1時間単位で単独に動かせる機構で、ムーブメントを止めずに現地時刻へ合わせられる。

コーアクシャル脱進機

脱進機は、輪列の回転を一定のリズムで区切ってテンプに動力を渡す部分である。本機が採用するコーアクシャル脱進機(Co-Axial Escapement)は、英国の時計師ジョージ・ダニエルズが考案し、オメガが1999年に量産化した機構である。一般的なスイスレバー式ではアンクルとガンギ車の歯が滑りながら力を伝える。これに対しコーアクシャルは、同軸に重ねた2段のガンギ車を用い、力を主に押し出す方向で伝える。摺動摩擦が小さいため、潤滑油の劣化による精度変化を抑えやすいとされる。

テンプとシリコン製ヒゲゼンマイ

テンプは往復回転で時間を刻む調速機構であり、ヒゲゼンマイはその復元力を担う渦巻きばねである。本機はフリースプラング方式を採用する。緩急針を持たず、テンプ側の慣性モーメントを変えて歩度を合わせる方式で、衝撃による調整ずれが生じにくいとされる。ヒゲゼンマイはシリコン製で、軽量かつ磁気の影響を受けない。

25,200vph(3.5Hz)の意味

振動数25,200vphは、テンプが1時間に25,200回振動することを示し、1秒あたり7振動(3.5往復)に相当する。多くの現行自動巻が採る28,800vph(4Hz)よりやや低い設定である。振動数を抑えると部品の摩耗や消費エネルギーは小さくなるが、外乱に対する安定性とのバランスが問われる。この値は、8500系以来の系譜に共通する仕様である。

2つの香箱と両方向巻上げ

動力源は直列に連結した2つの香箱である。ゼンマイを2つに分けて順に解けるように配すると、1個の大型香箱より力の出方を平準化しやすい。これにより60時間のパワーリザーブを得ている。自動巻機構は両方向巻上げで、ローターの回転方向を問わずゼンマイを巻き上げる。

15,000ガウスの耐磁性

ヒゲゼンマイ以外にも、磁気の影響を受けやすい部位に非鉄素材を用いることで耐磁性を確保している。15,000ガウス(1.5テスラ)は、MRI装置に近い磁場の強さに相当する。軟鉄製インナーケースで磁気を遮る方式と異なり、ムーブメント自体が磁化しにくい設計である。そのため裏蓋をサファイアクリスタルとし、機械を見せる構成とも両立する。

仕上げ

Cal. 8914はロジウムメッキ仕上げを施され、ローターと受けにアラベスク状のジュネーブウェーブ(Geneva waves in arabesque)を刻む。ローターは肉抜きされたスケルトン構造で、コンステレーションの象徴である天文台のエンブレムを、レーザー彫刻したメダリオンとして取り付けている。

認定の中身

マスター クロノメーター認定は2段階で行われる。まずムーブメント単体でISO 3159に基づくクロノメーター検定を受け、日差-4〜+6秒を満たす必要がある。次に、ケーシング後の完成品がMETASの定める8項目の試験を受ける。日差0〜+5秒の精度に加え、15,000ガウス下での精度、防水性、パワーリザーブも検証される。本機では、これらの計測が打刻音の連続記録によって行われた。オメガの公式情報によれば、試験期間は通算25日間に及ぶ。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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