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CALIBER · Omega

861

手巻 Handwound Analog クロノグラフ

1968年、レマニア1873を基にカム式へ再設計された手巻クロノ。ムーンウォッチを約30年支えたオメガの基幹キャリバー

パワーリザーブ
48 時間
石数
18 石
ムーブメント径
27 mm
Cal. 861
movement · 861 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 861は、オメガが1968年に導入した手巻きクロノグラフ・キャリバーである。同じSSIHグループのレマニアが手がけたエボーシュ、Cal. 1873を基とし、先代Cal. 321のコラムホイールをカム式に置き換えた。振動数21,600vph (3Hz)、直径27mm、石数は17石(1993年頃から18石)。30分積算計、12時間積算計、スモールセコンドを備える。初搭載はスピードマスター・プロフェッショナルRef. 145.022で、1978年にはスペースシャトル計画に向けてNASAの再認定を受けた。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOmega
Reference861
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Jewels18 石
Power reserve48 h
Movement ⌀27 mm
HandsSmall Seconds, Hours, Minutes
ChronographChronograph
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. Cal. 321からの世代交代

1957年の初代スピードマスター以来、同モデルを支えてきたのはCal. 321である。制御にはコラムホイールを用いていた。円柱状の歯車の回転で、クロノグラフの発停とリセットを切り替える機構である。精緻な反面、組立と調整には熟練を要し、増産には限界があったとされる。1965年のNASA採用を経て、スピードマスターの需要は拡大していた。量産性と整備性を高めた後継機の導入は、その流れの中で進められた。

Cal. 861の導入は1968年である。最初の搭載機はRef. 145.022-68で、文字盤やケースには321時代の意匠が残された。外観はそのままに中身だけが切り替わった、過渡期のモデルとして知られる。なお、1969年のアポロ11号で月面に持ち込まれたのはCal. 321搭載機であり、Cal. 861ではない。

2. レマニアのエボーシュとグループ内供給

基礎となったのは、レマニアが1960年代に開発した12リーニュのカム式クロノグラフ群のうち、Cal. 1873である。設計にはアルベール・ピゲが関与したと伝わるが、一次資料での確認は取れていない。

レマニアは1932年から、オメガと同じSSIHグループに属していた。そのためCal. 861は、純粋な自社製とも、市販の汎用エボーシュとも言い切れない。グループ内の専業メーカーが設計・供給し、オメガが自社仕様に仕上げたキャリバーとみるのが実態に近い。レマニア1873は他社にも供給されたが、オメガ版は主に仕上げと装飾で区別される。

3. 同一番号での改良と派生

Cal. 861は、番号を変えずに細部の改良を重ねた点に特徴がある。1970年代にはクロノグラフのブレーキ部品が金属から樹脂へ改められ、1993年頃には石数が17石から18石となった。

派生機も多い。24時間表示の第二時間帯を備え、フライトマスターに搭載されたCal. 910/911。デイト付きムーンフェイズのCal. 866。シースルーバック用に装飾を施したCal. 863。1992年には、Cal. 321の50周年を記念するクロノメーター認定版Cal. 864も少数製造されたとされる。

1990年代半ば、ロジウムメッキを施したCal. 1861への移行により、Cal. 861の名は役目を終える。移行年は1996年とする資料と1997年とする資料がある。

4. 宇宙飛行と、その後の継承

NASAは新たな調達が必要になるまで、既に認定した個体を使い続けた。スペースシャトル計画を前にした1978年、NASAは搭載機材を再評価する。このときCal. 861搭載のRef. 145.022が試験を通過し、シャトル時代の標準クロノグラフとなった。

同時代の業界では、クロノグラフの量産化に向けてカム式制御が広がっていた。1970年代半ばに登場するバルジュー7750も、その流れに連なる設計である。Cal. 861の基本設計はCal. 1861を経て、2019年初出、2021年に現行ムーンウォッチへ採用されたCal. 3861へ受け継がれた。約半世紀にわたり同じ骨格が保たれた点に、このキャリバーの位置づけが表れている。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

手巻きとテンプ

Cal. 861は自動巻機構を持たない手巻きキャリバーである。直径27mm、厚さ6.87mmで、リュウズから香箱の主ゼンマイを直接巻き上げる。パワーリザーブは約45時間とされるが、48時間と記す資料もあり、記載には揺れがある。秒針停止機能(ハック)は備えない。

振動数は21,600vph (3Hz)である。テンプ(時計の調速を担う往復運動の輪)が1秒間に3往復し、1時間に21,600回振動することを意味する。Cal. 321の18,000vph (2.5Hz)から引き上げられた。振動数が高いほど、姿勢や衝撃による乱れの影響は相対的に小さくなり、精度の安定につながるとされる。

ヒゲゼンマイ(テンプを往復させる渦巻きばね)は、Cal. 321のブレゲ巻上げから平ヒゲへ改められた。ブレゲ巻上げは外端を持ち上げて同心的な伸縮を促す形状で、成形に手間がかかる。平ヒゲは製造と調整の負担が小さく、量産機にふさわしい選択である。テンプも、321のチラネジ付きから平滑なリムへ簡素化されたとされる。

カム式クロノグラフ制御

最大の変更点は、クロノグラフの発停とリセットの制御である。Cal. 321はコラムホイールの回転で各レバーを動かした。これに対しCal. 861は、プッシャーの動きを板状のカムと往復するシャトルで受け、各部品へ伝える。部品点数と調整箇所が少なく、組立と整備が容易になる。操作感はコラムホイール式と異なるとの指摘もあるが、それは設計思想の差であり、計時機能の差ではない。

動力の伝達には水平クラッチを用いる。常時回転する輪列から、揺動するアーム上の中間車を介して、クロノグラフ秒車へ横方向に噛み合わせる方式である。同時代のクロノグラフで広く採られた構造で、作動が目視しやすい。表示は3時位置の30分積算計、6時位置の12時間積算計、9時位置のスモールセコンドで構成される。

クロノグラフを停止した状態では、ブレーキがクロノグラフ秒車を押さえ、針の位置を保持する。リセット時にはブレーキが離れてから、ハンマーが各ハートカムを叩き、針を帰零させる。このブレーキは1970年代に金属製からデルリン(ポリアセタール樹脂)製へ改められた。コスト面に加え、秒車の摩耗を抑える意図があったとされる。

仕上げと石数

標準のCal. 861は、地板と受けに銅色のメッキを施した実用的な仕上げである。裏蓋がソリッドのモデルに搭載されることを前提とした仕様で、コートドジュネーブ(平行の波模様)は施されない。装飾を加えたシースルーバック用はCal. 863として区別され、後継のCal. 1861ではロジウムメッキへ移行した。

石数は当初17石で、1993年頃にクロノグラフ系の中間車へ1石が追加され、18石となった。軸受に人工ルビーを用いることで、摩擦と摩耗を抑える。

認定と耐久性

標準のCal. 861はクロノメーター認定を受けていない。認定機は1992年のCal. 864に限られるとされる。一方、NASAの認定はクロノメーター規格とは性格が異なる。高温・低温、減圧、衝撃、振動、加速度など、宇宙飛行の環境を想定した試験で耐久性を確かめるものである。Cal. 861の評価は、精度規格よりも、この環境耐性の実績に支えられてきた。

構造が単純で部品の互換範囲も広く、長期の保守を前提とした設計である点も、量産クロノグラフとしての性格を示している。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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