系譜と歴史
1. 1924年の音を手がかりに
オーデマ ピゲは創業期から複雑時計を手がけ、1892年に初のミニッツリピーター腕時計を製作したとしている。スーパーソヌリの開発は2006年、同社の時計師と技術者が歴代のミニッツリピーターを聴き比べるところから始まったと伝わる。音の手本に選ばれたのは、同社が所蔵する1924年製の一本であった。開発はスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)と共同で進められ、約8年を要した。プロジェクトを率いたのは、ル・ロックルにある複雑機構の工房APRP(オーデマ ピゲ ルノー&パピ)のジュリオ・パピである。目標は、古いリピーターの澄んだ音色を取り戻しながら、防水ケースに収めても聞こえる音量を得ることに置かれた。
2. コンセプトから古典的な外装へ
成果は2015年、研究開発機RD#1として初めて公開され、翌2016年にロイヤル オーク コンセプト スーパーソヌリとして市販化された。こちらはトゥールビヨンとクロノグラフを併せ持つ複雑機で、同年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)ではメカニカル・エクセプション賞を受けた。同じ2016年、オーデマ ピゲはこの音響技術を古典的な意匠の時計にも展開し、ジュール オーデマ ミニッツリピーター スーパーソヌリを発表する。直径43mmのプラチナケースにエナメル文字盤を組み合わせた一本で、その心臓部が手巻のCal.2944である。ケースの厚さは13.16mm、防水は20mで、ケースバックには作業台に向かう時計師の姿が彫られる。2017年には、内側から外側へ濃くなる青のスモークエナメル文字盤を備えたRef.26590PT.OO.D028CR.01が加わった。
3. 後継機への継承
ジュール オーデマのコレクションは2019年前後に整理され、本機を載せたミニッツリピーターもカタログから外れたとされる。スーパーソヌリ技術は、2019年以降のCode 11.59 ミニッツリピーター スーパーソヌリや、ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリへ受け継がれた。これらが搭載するのは手巻のCal.2953(32石、362部品、約72時間)である。Cal.2944は、スーパーソヌリをトゥールビヨンから切り離し、ミニッツリピーター単独の構成で成立させた初期の機械と位置づけられる。