03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
自社製でも汎用品でもない
AP 2325は、オーデマ ピゲが一から設計した機構ではない。その出自は、ヴァレ・ド・ジューの隣人であるルクルト社(現ジャガー・ルクルト)のエボーシュ(半製品ムーブメント)にある。ETA 2824のような業界共通の量産品とも、ブランドの完全自社製とも異なる、第三の系譜に属する。
26mm級自動巻の四世代
オーデマ ピゲの公式アーカイブは、同社の11½リーニュ(26mm)級の自動巻を世代で整理している。起点は1977年の Cal.2123 で、ルクルト社のエボーシュを基にしていた。1983年に Cal.2124 とその派生が第2世代を、1996年に Cal.2224 とその派生(ロイヤルオーク Ref.14790 の 2225 など)が第3世代を成す。そして2005年、Cal.2325 が第4世代の起点となった。基となったエボーシュはジャガー・ルクルトの Cal.889 系とされる。
派生の広がり
第4世代には、2325 のほか、2326、2326/2840、2326/2841、2326/2839、2326/2847、2326/2848、2329/2845、2329/2846 といった派生が連なる。機能を加えたモジュールを重ねる構成で、同じ基盤から多様な表示を生み出した。系譜が連続しているため、損傷の激しいムーブメントを直系の後継に置き換えられる場合もあったという。基幹の 2325 自体は、ダイバーズのロイヤルオーク オフショア スキューバ(Ref.15701・15702 など)や、ミレネリーの自動巻(Ref.77301 など)の動力源となった。
自社製への転換点
2325 が登場した2005年前後、ロイヤルオークの基幹は自社開発の Cal.3120 へと移っていく。業界全体が垂直統合へ向かう潮流のなかで、エボーシュに依存する時代は終わりに向かった。AP 2325 は、ルクルトとの長い協働が育てた系譜の最後期にあたり、自社製造へ舵を切るオーデマ ピゲの過渡期を映すキャリバーといえる。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
AP 2325 は、ルクルト社のエボーシュを基にしたオーデマ ピゲの自動巻で、ジャガー・ルクルトの Cal.889 系を基礎とするとされる。オーデマ ピゲによる仕上げと調整を経て、独自の型番が与えられている。
基本構造
自動巻で、表示は中央の時・分・秒と日付である。振動数は28,800vph (4Hz)、すなわち1秒あたり8振動で、秒針は滑らかに運針する。振動数が高いほど外乱に対する復元力が増し、姿勢差(時計の置き方による精度差)を抑えやすくなる。石数は32石とされる。系譜の起点である Cal.2123 と同じく、直径は11½リーニュ(約26mm)級に属する。
パワーリザーブ
パワーリザーブは38時間とされるが、オーデマ ピゲがミレネリーの婦人用モデルで示した仕様では「最大40時間」とされており、資料によって値が分かれる。薄型の自動巻であることを考えれば、香箱(ぜんまいを収める部品)の容量との兼ね合いから、この程度の値に落ち着くのは自然である。
仕上げ
ベースとなるエボーシュとの差は、主に仕上げと調整にある。地板やブリッジには面取りや装飾が施され、エボーシュを高級時計の水準へ引き上げている。ローターには金が用いられるとされる。
モジュール構造と派生
この系譜の強みは、文字盤側へ機能モジュールを重ねられる拡張性にある。公式アーカイブが挙げる第4世代の派生には、2326 とそのモジュール付きの 2326/2840・2326/2841・2326/2839・2326/2847・2326/2848、さらに 2329/2845・2329/2846 がある。基幹の AP 2325 単体(日付のみ)は、ダイバーズのロイヤルオーク オフショア スキューバや、ミレネリーの自動巻モデルの動力源となっている。
保守という視点
同じ系譜のムーブメントは世代をまたいで構造がつながっており、損傷の激しい機械を直系の後継に置き換えられる場合もあったと公式アーカイブは記す。派手な独自機構を掲げるキャリバーではないが、確かな基礎設計とオーデマ ピゲの仕上げが、その堅実な評価を支えている。
搭載機種
搭載例としては、ロイヤルオーク オフショア スキューバのブティック限定色(Ref.15701 のオレンジ・ブルー・レッド)、販売店向けの Ref.15340(ヴェンペ)や Ref.15702(バルトレッリ)、そしてミレネリーの婦人用自動巻 Ref.77301 のステンレス・イエローゴールド・ホワイトゴールド・ピンクゴールドの各仕様が挙げられる。ミレネリーでは、裏蓋にコレクションのロゴが刻まれる。