AP 2225
ジャガー・ルクルトの薄型自動巻 Cal.889 を基に、ミドルサイズのロイヤルオークを支えた、自社製以前のオーデマ ピゲ自動巻
Cal.2225 は、ジャガー・ルクルトの薄型自動巻 Cal.889 を基に、オーデマ ピゲが仕上げと調整を施した自動巻ムーブメントである。直径26.6mm、厚さ3.25mmと薄く、28,800vph (4Hz)、36石、パワーリザーブは約40時間。21Kゴールドの半月型ローターをセラミック製ボールベアリングで支持し、双方向に巻き上げる。秒針停止機構を備え、日付は3時位置に表示する。ミドルサイズのロイヤルオーク Ref.14790 や、ミレネリー Ref.15016・15049 に搭載され、自社製 Cal.3120 へ移行する以前のオーデマ ピゲを象徴する一基である。
| Maker | Audemars Piguet |
|---|---|
| Reference | AP 2225 |
| Type | Automatic |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 36 石 |
| Power reserve | 40 h |
| Movement ⌀ | 26.6 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
自社製以前という前提
オーデマ ピゲは現在、ロイヤルオークに自社製ムーブメントを搭載する。しかし2000年代半ばまで、薄型自動巻については事情が異なっていた。当時、極薄の自動巻を量産できるメーカーは限られ、その中心にいたのがジャガー・ルクルトである。オーデマ ピゲは1978年から2000年まで同社の株式を保有しており、両社の関係は深い。Cal.2225 は、この関係のなかから生まれた一基である。基となったのは薄型自動巻 Cal.889。同じエボーシュ(半完成の素材ムーブメント)は、ヴァシュロン・コンスタンタンやIWC(Cal.3254として)にも供給され、高級時計の薄型自動巻における共通基盤となった。
Cal.889 系のなかの位置
オーデマ ピゲは Cal.889 を基に、複数の派生を展開した。ミドルサイズのロイヤルオーク Ref.14790 では、初期の Cal.2125 から Cal.2225、後年の Cal.2325 へと移り変わったと伝わる。より小径の機種には Cal.2123 が用いられた。これらは世代交代というより、同一基盤を細かく改訂した系列とみてよい。なお、初代「ジャンボ」Ref.5402 を支えた Cal.2120/2121 は、より薄い Cal.920 を基にした別系統であり、本機とは出自を異にする。両者はともに21Kゴールドのローターを用いるが、その支持方式は異なる。
薄型ロイヤルオークを支えた役割
Ref.14790 は1992年に登場し、2006年頃まで生産された、息の長いミドルサイズ・ロイヤルオークである。ケース径36mm、厚さ約7.5mmという薄い佇まいは、エボーシュ由来の薄さに支えられていた。Cal.2225 は、この時代のロイヤルオークが持つ端正なプロポーションを、機構の側から成立させた存在といえる。ミレネリーの一部モデルにも搭載され、オーバルケースの薄型ドレスウォッチを動かした。
自社製ムーブメントへの移行
2005年前後、オーデマ ピゲは自社製の自動巻 Cal.3120 を導入し、ロイヤルオークの主軸を移していく。これにより Cal.889 系のムーブメントは役目を終える。同時期、業界全体が外部エボーシュへの依存から自社製化へと舵を切っており、Cal.2225 から Cal.3120 への移行は、その流れを映す一例でもある。
技術解説
基本設計
Cal.2225 は、11 3/4型(直径26.6mm)、厚さ3.25mmの薄型自動巻である。中央に時・分・秒を集約し、3時位置に日付を備える。テンプ(往復回転して時を刻む調速部品)の振動数は28,800vph (4Hz)で、1秒あたり8回の振動を刻む。高めの振動数は外乱に対する復元力を高め、姿勢差を抑える方向に働く。「型(リーニュ)」はムーブメントの直径を表す古典的な単位で、11 3/4型は約26.6mmにあたる。石数は36石。人工ルビーの軸受けを各回転部に配し、摩擦と摩耗を抑える役割を担う。単一香箱(ぜんまいを収める部品)を備える薄型設計のなかに、自動巻と日付の機構をまとめている。
調速機構
調速を担うのは、環状(リング状)のテンプと、平ヒゲゼンマイ(渦巻き状の調速ばね)である。ヒゲゼンマイの固定端を支えるヒゲ持ちは可動式で、片振り(振動の左右の非対称)を抑える調整ができる。ケース裏には「Adjusted to Heat Cold Isochronism and Five (5) Positions」と刻まれ、温度差・等時性・5姿勢にわたる調整が施されたことを示す。これはクロノメーター級の調整基準に準じる内容だが、外部認定(COSC等)を受けたものではない。
自動巻機構
巻き上げは双方向式で、ローター(自動巻の回転錘)の両回転方向の動きを香箱の巻き上げに変換する。錘部分には21Kゴールドが用いられ、セラミック製のボールベアリングで支持される。比重の大きい金を錘に用いることで、限られた回転半径でも効率よくぜんまいを巻き上げられる。ボールベアリングによる支持は、初期の自動巻に多い軸受け方式と比べ、摩耗や片減りを抑えやすい構造である。Cal.920 系がローターを周縁のルビー製ローラーで案内したのに対し、本機は中央のボールベアリング方式を採る。これは設計思想の差であり、優劣ではない。パワーリザーブは約40時間で、薄型の単一香箱という構成に見合った値である。
仕上げと実用機構
エボーシュとして供給された素材ムーブメントに、オーデマ ピゲは自社の仕上げと調整を施した。地板やローターには同社の装飾が加えられる。実用面では、リューズを引いて時刻を合わせる際にテンプを止める秒針停止機構(ハッキング)を備え、秒単位での時刻合わせが可能である。薄型の共通基盤を高級時計向けに仕立て直す姿勢が、これらの細部にうかがえる。