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CALIBER · AUDEMARS PIGUET

AP 2385

自動巻 Automatic Analog

フレデリック・ピゲ1185を母体に、1997年から四半世紀ロイヤル・オーク・クロノグラフを支えた自動巻

AP 2385
movement · AP 2385
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

AP 2385は、1997年のロイヤル・オーク・クロノグラフ初代Ref.25860で初搭載された自動巻クロノ・キャリバーである。母体はフレデリック・ピゲ(現マニュファクチュール・ブランパン)が1988年に発表したCal.1185。コラムホイールと垂直クラッチを備える一体型クロノ機構で、当時最薄級の5.5mmという厚みを実現した。振動数21,600vph(3Hz)、37石、パワーリザーブ約40時間。AP仕様では18Kゴールド・ローターを採用。歴代ロイヤル・オーク・クロノ(Ref.25860/26300/26320/26315ほか)を四半世紀にわたり駆動した、現代クロノ史屈指の名機系列に属する。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerAudemars Piguet
ReferenceAP 2385
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency21,600 bph (3 Hz)
Jewels37 石
Power reserve40 h
Movement ⌀26.2 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Column wheel
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ロイヤル・オーク・クロノグラフの心臓

オーデマピゲがロイヤル・オーク・クロノグラフ初代Ref.25860を発表したのは、1972年のロイヤル・オーク誕生から25周年にあたる1997年であった。この記念モデルに与えられたのが、AP 2385である。

ただしAP 2385は完全な自社開発キャリバーではない。母体は、同じくヴァレ・ド・ジューに拠点を構えるフレデリック・ピゲが1988年に発表したCal.1185であり、AP 2385はこれに独自の仕上げと18Kゴールド製ローター等を加えた仕様にあたる。なおフレデリック・ピゲは1992年にスウォッチ・グループ傘下に入り、2010年にはマニュファクチュール・ブランパンへ統合されている。

2. フレデリック・ピゲ Cal.1185 の誕生

Cal.1185を設計したのは、ヴァルジューで7750の開発時期に技術ディレクターを務めたエドモン・カップである。カップは1985年にメカクォーツCal.1270を完成させた後、1987年に手巻のCal.1180を発表。これは当時のコラムホイール式クロノグラフ機構として最も薄いムーブメントであった。翌1988年、その自動巻バージョンとして登場したのがCal.1185である。

Cal.1185は、コラムホイールによる優美な制御と、当時としては先端的な垂直クラッチによる確実な動力伝達を、わずか5.5mmという厚みに凝縮した。ヴァルジュー7750が代表する「実用クロノの分厚さ」とは対極にある、高級志向の自動巻クロノグラフの新しい基準を提示するものであった。

3. 高級時計界の共有基盤として

Cal.1185は瞬く間に高級時計界の共有基盤となる。フレデリック・ピゲ自身は、姉妹ブランドであるブランパンのレマン・クロノグラフに採用した他、1989年に世界初の自動巻ラトラパント機構を持つCal.1186を、1996年にはフライバック機能を備えたCal.F185を派生として発表した。

外部の採用ブランドも際立つ:ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズ・クロノグラフ(Cal.1137)、ブレゲのマリン・クロノグラフ(Cal.576)、カルティエのパシャ、ショパール、フランク・ミュラー、パネライのルミノール・クロノグラフ2000(Cal.OP V)などが知られる。1990年代、ロレックスがエル・プリメロの後継としてデイトナ用に本機を検討した時期があったとも伝わる(計画は実現せず、後に自社開発のCal.4130へ向かった)。

AP 2385もこの系譜の一員である。ただしオーデマピゲはローター意匠と最終調整を自社で行っていた。

4. キャリバー4401・6401への置換

オーデマピゲが完全自社開発の一体型クロノグラフ・キャリバーCal.4401を初めて発表したのは、2019年のコード11.59発表時である。Cal.4401はその後2021年のロイヤル・オーク・クロノグラフ41mm新世代Ref.26239系に採用され、続く2022年の50周年モデルRef.26240でステンレス版にも展開された。41mmにおけるCal.2385の時代は、ここで一区切りを迎えた。

ただしCal.4401は寸法的に38mmケースに収まらず、38mmラインのみ2026年まで引き続きCal.2385を搭載した。2026年初頭、38mm専用に5年かけて開発したCal.6401が発表され、Ref.26450系から搭載が開始される。これにより、AP 2385は現行ラインから事実上退き、約30年にわたるロイヤル・オーク・クロノグラフでの役割を終えている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

寸法と基本構成

AP 2385の基礎寸法は、母体であるフレデリック・ピゲCal.1185を踏襲する。直径26.20mm(11½ライン)、厚さ5.50mm、構成部品数304、石数37。発表当時、自動巻でありながら厚さ5.5mmという数値は、コラムホイール式の本格派クロノグラフとしては最薄級であり、ロイヤル・オーク・クロノグラフの薄型ケース(初代25860で約11mm前後)を成立させた直接的な根拠となった。

コラムホイールと垂直クラッチ

クロノグラフ機構の制御方式には、支柱(コラム)が並ぶ垂直の歯車を持ち、プッシャー操作で回転して各レバーの噛み合いを切り替える「コラムホイール」が採用されている。これは、より構造的に簡素なカム式と比較して、操作感が滑らかで部品摩耗が少ない反面、製造調整の手間がかかるため、伝統的に高級クロノグラフの証とされてきた機構である。

これに加えてCal.2385の核心が、クロノグラフ秒針の駆動を上下方向の摩擦で伝える「垂直クラッチ(バーティカル・クラッチ)」である。一般的な水平クラッチが歯車同士の側面噛み合いで動力を断続するのに対し、垂直クラッチは2枚の円盤の上下接触で動力を伝達する。これにより、クロノグラフ作動時に針が瞬間的に揺れる「スタッター」現象が抑えられ、長時間連続作動させても歯の摩耗が生じにくい。日常的にクロノグラフを使用する用途において、本機構は理論上きわめて有利である。

振動数と調速系

振動数は21,600vph(3Hz)。これは現代の高級クロノグラフとしてはやや控えめな数字で、後継Cal.4401が28,800vph(4Hz)で駆動するのと対照的である。3Hzは、4Hzに比べて瞬間的な計測解像度では劣るものの、テンプにかかる負荷が小さく、薄型ムーブメントとして耐久性とパワー効率を確保する選択にあたる。

調速機構には、フレデリック・ピゲがCal.1185系で標準採用していた「トリオビス・マイクロメーター緩急針」と、キフ・ウルトラフレックスの耐震装置が組み合わされる。耐震装置はテンプの両軸を保護し、衝撃時の損傷リスクを抑える役割を担う。テンプ自体はフリースプラング型ではなく、緩急針による調整方式を採る。

自動巻機構

ローターは単方向巻き上げ式で、回転方向は時計回り。双方向巻きは構造的にスペースを要するため、これは薄型ムーブメントとしての全体厚を抑える設計選択である。AP仕様では18Kゴールド製のローターが装着され、エングレービングによりオーデマピゲのロゴと意匠が刻まれる。ローターの軸はボールベアリングで支持され、長期使用での摺動部摩耗が抑えられている。パワーリザーブは公称約40時間。

一体型クロノグラフであること

特筆すべきは、Cal.2385がモジュラー方式ではなく 一体型(インテグレーテッド) クロノグラフであることである。同じオーデマピゲでもロイヤル・オーク・オフショア系で長く採用されたCal.2326/2226+2840やCal.3126+3840が、ベース時計ムーブメントに独立クロノモジュールを被せる構造だったのに対し、Cal.2385は基礎ムーブメントの設計段階からクロノグラフ機構を組み込んでいる。結果として、リューズとプッシャーの軸線が水平に整い、文字盤側でも日付窓の位置に違和感が生じない。

また、ベース機構の構造として、4番車を中心軸近傍に配置し、その上に垂直クラッチを重ねる設計を採る。クロノグラフ秒針の作動・停止が、計時系の動力伝達経路に与える影響を抑えやすい。

仕上げ

AP仕様の仕上げとして、ブリッジにはコート・ド・ジュネーブ、地板にはペルラージュ、面取り部分にアングラージュが施される。ジュネーブシール認定機構ではなく、また長年にわたりロイヤル・オーク・クロノグラフの大半はソリッドケースバックを採用していたため、本キャリバーの意匠が裏蓋側から鑑賞される機会は限られていた。シースルーケースバックが標準化されるのは、後継Cal.4401を搭載した2021年以降のロイヤル・オーク・クロノグラフ41mmからである。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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