設計思想
1. 全系列の刷新の中で
2020年のサブマリーナは、特定のRefだけを改めるのではなく、全系列を一度に入れ替える形で更新された。日付なしの124060から金無垢の126618系まで、既存のRefがそろって新世代へ移っている。
126613LBは、その中のイエローロレゾールのサブマリーナ デイトである。イエローロレゾールとは、オイスタースチールと18Kイエローゴールドを組み合わせたロレックスの素材構成を指す。本機は、発表資料で具体的に紹介された4本の1本でもあった。黒一色の定番とは別に、金と青の配色が新世代の顔の一つに据えられていたことがうかがえる。
2. 第4世代のロレゾール
鋼と金を組み合わせたサブマリーナの歴史は、1984年頃のRef. 16803に始まるとされる。1988年のRef. 16613でCal.3135を得た。2009年の116613LBでは、ベゼルがセラクロムへ、文字盤が大ぶりな「マキシ」へ移る。セラクロムは、ロレックス独自のセラミック製ベゼルインサートである。126613LBは、この系譜の4代目にあたる。
前任116613LBから引き継いだものは多い。青い文字盤と青いベゼルの組み合わせ、金を用いる部位の配分、300m防水、グライドロックを備えたブレスレット。いずれも116613LBの時点で整っていた要素である。
変わったのは骨格と中身だ。116613LBは太いラグの「スーパーケース」を採った。同じ40mmでも、先代のRef. 16613より大きく見えると評されたケースである。126613LBは径を41mmに広げ、プロポーションの取り方を改めている。ムーブメントはCal.3135からCal.3235へ移り、パワーリザーブは約48時間から約70時間に延びた。Cal.3235は2015年に別のモデルで先に登場していた。サブマリーナ デイトは、Cal.3135を最後まで使い続けた系列の一つだったとされる。本機の世代で、ようやくその更新が及んだことになる。
文字盤の経緯にも触れておきたい。116613LBは2009年の登場時にマットな青文字盤を採用し、2013年にサンバースト仕上げへ改めたとされる。126613LBは発表時からサンレイ仕上げの青を選んだ。前任が生産の後半に定めた方向が、本機の出発点になっている。
3. 鋼の上の青いベゼル
2020年の新世代で、青いセラクロムベゼルを持つサブマリーナは3本あった。本機と金無垢の126618LB、ホワイトゴールドの126619LBである。このうち、ケースにオイスタースチールを用いたのは本機だけだった。ケースからブレスレットまで金で仕立てた2本に対し、本機は鋼を主体に金を添える構成で青いベゼルを成立させている。
同日発表の126613LNは、ケースと素材構成を共有する黒の兄弟機である。126613LBはその青い片割れとして、金と青の配色を担う。愛好家の間では「ブルーシー(Bluesy)」の通称で呼ばれることがある。この呼び名は、鋼と金の青いサブマリーナに世代を越えて用いられてきたとされる。
意匠分析
126613LBの設計は、41mmの新しいオイスターケースを土台に、金と青をどこに置くかという配分で成り立っている。
金が使われるのは、ベゼル、トリプロック式リューズ、ブレスレットの中駒である。いずれも18Kイエローゴールドで、ミドルケースと裏蓋、ブレスレットの外駒はオイスタースチールが担う。操作で手が触れる部位と視線が集まる部位を金で縁取り、構造体を鋼に任せる配分である。仕上げは、ポリッシュした金の中駒をサテンの鋼の外駒が挟む構成で、ケースも上面のサテンと側面のポリッシュで光を切り分ける。
ベゼルインサートは、ロレックスが自社で製造する青のセラクロムだ。成形した目盛りと数字の凹部にはPVDで金がコーティングされ、ベゼル本体の金と色調をつないでいる。最初の15分は1分刻みで目盛られ、ゼロ位置の三角には、ゴールドのカプセルに夜光が封じられる。
文字盤は光沢のあるロイヤルブルーのサンレイ仕上げである。セラミックのインサートが均質な青を保つのに対し、文字盤は光の角度で明度を変える。同じ青を異なる質感で重ねた構成と言える。アワーマーカーと針は18Kイエローゴールドの枠に夜光塗料クロマライトを充填し、暗所では青く発光する。
刷りの色も前任と異なる。116613LBでは金色だった文字盤の刷りが、本機では白に改められた。濃い青の上での判読性を優先した選択と読める。6時位置の「SWISS」と「MADE」の間には小さな王冠が加わり、新世代のサブマリーナを見分ける手がかりの一つとされる。
寸法も細部が見直された。ラグは細く絞られ、ラグ幅は116613LBの20mmから21mmへ広がった。ブレスレットは全長にわたって1mm幅を増し、ケースとの取り付け部は隠し構造で途切れなく見える。オイスターロック・クラスプには、工具なしで約2mm刻み、最大約20mm延長できるグライドロックが組み込まれている。
ムーブメントは自社製のCal.3235である。クロナジー・エスケープメントは、エネルギー効率を高めた特許取得の脱進機である。ガンギ車とアンクルはニッケル・リン合金製で、磁気の影響を受けにくい。常磁性合金によるブルーパラクロム・ヒゲゼンマイと、自社開発の耐衝撃装置パラフレックスを組み合わせる。毎時28,800振動 (4Hz)という振動数は、前任のCal.3135から変わっていない。
系譜と歴史
126613LBは、2020年9月1日に発表された。この年はBaselworldとWatches & Wonders Genevaが、新型コロナウイルスの影響で中止された。ロレックスの新作公開も、例年の春から秋へずれ込んでいる。発表の場は見本市ではなく、自社サイトとSNSだった。
同日に発表されたサブマリーナの新世代は8本で構成された。日付なしは124060、デイトは126610LNと126610LV、ロレゾールは126613LNと本機である。金無垢は126618LNと126618LB、ホワイトゴールドは126619LBだった。公式資料では、ケースリファレンス126613LBに組み合わされるブレスレットのリファレンスは97JA03とされる。
発表と同時に、前任の116613LBと黒の116613LNはカタログを退いた。以後、ロレゾールのサブマリーナ デイトは、黒の126613LNと本機の2本で構成されている。
発表後、本機の仕様変更が公式に告知された記録は確認できない。ケース径、素材構成、文字盤の仕上げは、確認できる範囲では発表時のまま維持されている。
2026年4月14日、Watches and Wonders Genevaが開幕した。この年のロレックスの新作に、サブマリーナの新しいRefは含まれなかった。一方で、ホワイトゴールドの126619LBがこの年にカタログを離れている。これにより、青いセラクロムベゼルを持つサブマリーナは、本機とイエローゴールドの126618LBの2本となった。
2026年9月時点で、126613LBは公式カタログに掲載される現行モデルである。公式サイトのサブマリーナは7本で構成され、そのうちロレゾールは本機と126613LNの2本である。公式サイト上の品番表記はm126613lb-0002で、発表以来同じ番号が用いられている。