設計思想
2019年、「バットマン」がジュビリーをまとう
2018年、ロレックスはGMTマスター IIを新世代の126710へ移行させた。第1弾は赤青ベゼルの126710BLROである。オイスターブレスを標準としてきたセラミック世代のステンレスGMTに、5列のジュビリーブレスを組み合わせた点が新しかった。翌2019年のBaselworldで、同じ構成にブルーとブラックのベゼルを載せて登場したのが126710BLNR-0002である。
本機の登場は、前任の116710BLNRとの入れ替わりでもあった。2013年以来オイスターブレスで知られてきた青黒ベゼルが、ブレスごと装いを改めたことになる。ロレックスは切り替えの理由を公にしていない。ただ、新世代のステンレスGMTを2色のベゼルとジュビリーで揃え、旧世代との違いを一目で示す狙いがあったと読むこともできる。
受け継いだもの、改められたもの
ケース径やベゼルの配色、青い24時間針を含むダイアルの構成は、116710BLNRからほぼそのまま受け継がれた。青黒の2色セラクロムは2013年、116710BLNRで初めて実用化された。ロレックスはこれを世界初と位置づけている。本機はその系譜をそのまま引き継いだ。
一方で、中身と装いは大きく改められた。ムーブメントはCal.3186から新世代のCal.3285へ置き換わり、ブレスはオイスターからジュビリーへ移った。外観の印象を最も変えたのはブレスで、コレクターの間では本機を「バットガール」と呼び、前任と区別する習慣が生まれた。ロレックス自身は、いずれの愛称も用いていない。
枝番「-0002」の意味
2021年、ロレックスはオイスターブレス仕様の126710BLNR-0003を追加した。これにより126710BLNRという同じリファレンスの下に2つの構成が並び、本機はジュビリーを担う枝番として位置づけ直された。発表当初は126710BLNRの唯一の構成だった本機が、以後は兄弟機と対をなす存在となったのである。赤青ベゼルの126710BLRO-0001とは、ベゼルと24時間針の色を除けば構成を同じくする双子の関係にあたる。
赤が去ったカタログの中で
同世代の色彩は、2022年の126720VTNR、2024年の126710GRNRと、その後も広がった。転機は2026年4月に訪れる。赤青ベゼルの126710BLROがカタログから外れ、本機は現行のステンレス製GMTマスター IIで最も早く登場した構成となった。2013年に2色セラクロムの歴史を開いた青黒の組み合わせは、赤の退場後も現行カタログに残り続けている。
意匠分析
ケースは直径40mmのオイスタースチール製で、径は前任の116710BLNRから変わらない。ただしラグはわずかに形状を改められ、ジュビリーブレスとの接続を前提に整えられた。トリプロック・リューズとリューズガードの構成は前任を踏襲する。
本機の性格を決めるのはベゼルである。両方向回転の24時間目盛りベゼルに、ブルーとブラックの2色からなる一体成形のセラクロム・インサートを収める。2色の境界は6時と18時の目盛りにあり、18時から6時までの半周が黒、6時から18時までの半周が青となる。昼夜の区別を色で示す配色と解される。製法はロレックスが特許を持つ含浸処理で、一体のセラミックの半周に薬剤を含ませ、焼結の過程で発色を変えるとされる。継ぎ目がないため、境界は接合線ではなく発色の差として現れる。
ダイアルはブラックで、太いインデックスと針を備えたマキシダイアルである。夜光にはクロマライトを用い、暗所では青く発光する。矢印形の24時間針は青く塗られ、ベゼルのブルーと呼応する。同じケースの126710BLROでは赤、126710GRNRでは緑が充てられ、針の色で構成を見分けられる。6時位置の「SWISS」と「MADE」の間に置かれた小さな王冠は、新世代キャリバー搭載を示す目印とされる。
ブレスレットは5列リンクのジュビリーで、中央の3列がポリッシュ、外側がサテンに仕上げられる。コマが細かく分かれるため、3連のオイスターブレスを備えた116710BLNRより、手首への沿い方がしなやかになる。留め具はセーフティキャッチ付のオイスターロックで、約5mm延長できるイージーリンクを内蔵する。ケースとの接続部はコンシールドアタッチメントで隠され、ラグからブレスへ途切れなく続く。
ムーブメントはロレックス自社製のCal.3285で、2018年に126710BLROとともに登場した。脱進機はクロナジー・エスケープメント(エネルギー効率を高めた独自の方式)で、常磁性のパラクロム・ヘアスプリングとパラフレックス耐衝撃装置を組み合わせる。振動数は毎時28,800振動 (4Hz) である。前任のCal.3186で約48時間だったパワーリザーブは約70時間へ延び、外したままでも約3日動き続ける。精度はSuperlative Chronometer基準により、ケーシング後に日差-2〜+2秒と規定されている。
系譜と歴史
126710BLNR-0002は、2019年3月のBaselworld 2019で発表された。前年登場の126710BLROとケース、Cal.3285、5列のジュビリーブレスを共有し、ベゼルと24時間針の色だけが異なる。発表と同時に、2013年から生産されてきたオイスターブレス仕様の116710BLNRは生産を終えた。この時点でステンレス製GMTマスター IIはジュビリーブレスのみの展開となり、青黒ベゼルの構成も本機ひとつに絞られた。
2021年4月、ロレックスはオイスターブレス仕様の126710BLNR-0003を追加した。同時に126710BLROにもオイスターブレス仕様が加わっている。両者の違いはブレスのみで、ケース、ベゼル、ダイアル、ムーブメントは共通である。
2022年のWatches and Wonders Genevaでは、リューズを9時側に配した126720VTNRが登場した。2024年には、グレーとブラックのベゼルを持つ126710GRNRが加わっている。いずれも本機と同じ40mmのオイスタースチール製ケースとCal.3285を基盤とする同世代の派生である。
2026年4月14日、Watches and Wonders Geneva 2026が開幕した。これに合わせ、赤青ベゼルの126710BLROと126719BLROが公式サイトから外された。一方で本機は公式サイトへの掲載が続き、2026年9月時点で現行品である。発表から7年余りの生産期間中、公式に告知された仕様変更は確認されていない。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 Watches - Rolex
- 02 専門メディア Rolex Movements Explained