設計思想
ジュビリーから始まったペプシ復活と、3連ブレスへの帰還
ロレックス GMT-Master IIの現行世代にあたる126710BLROがBaselworld 2018で発表されたとき、ステンレス製ボディに赤青のCerachromベゼルを載せた現代版「ペプシ」の誕生は、長年待望されていた瞬間であった。ただし、当初の組み合わせはジュビリーブレス——126710BLRO-0001——のみだった。3連オイスターブレスを選びたい層には、2014年発表の18Kホワイトゴールド版116719BLROしか選択肢が存在しなかった。
この片方だけの構成は、現行世代の特徴となった。GMT-Master IIにおいて、ペプシベゼルとオイスターブレスの組み合わせが最後に存在したのは、アルミ製ベゼルの5桁Ref.16710(2007年生産終了)まで遡る。セラミック化以降、ステンレス・ペプシ・オイスターという三要素はおよそ14年にわたって途切れていた。
2021年、選択肢としてのオイスター
その状況が変わったのは2021年である。ロレックスは126710BLROに3連オイスターブレスの選択肢を追加し、これを-0002として導入した。ジュビリー版-0001と比べて寸法・ケース・ベゼル・ムーブメントは完全に共通であり、差異はブレスのみである。それでもこの追加は、ステンレス製ペプシをスポーティに装着したい層にとって、長く埋まらなかった空白の解消であった。
同じ年、BLNR(バットマン)もまた、ジュビリー仕様(後の-0001)に並んでオイスター仕様(-0002)が用意された。ロレックスは現行GMT-Master II世代において、ベゼルカラーとブレス形式を独立した選択肢として並立させる構成へと舵を切った格好となる。
一世代の終わりと、後継なき退場
126710BLRO-0002の生産は、2026年4月14日のWatches and Wonders Genevaで終わった。ジュビリー版-0001、ホワイトゴールド版126719BLROとともに、Cerachromペプシベゼルを擁する全てのGMT-Master IIが同時にカタログから外れた。直接の後継となる赤青ベゼル機は、本稿執筆時点では発表されていない。
意匠分析
ケースは40mmのオイスタースチール製で、厚みは12.1mm、ラグ間距離は約48mmに収まる。現行GMT-Master II世代の共通設計だが、前世代116710シリーズと比べて、ラグはやや細身に整えられたとされる。3連オイスターブレスはラグ端から段差なく繋がり、コンシールド・アタッチメントによってケースとブレスの視覚的な連続性が保たれる。
ベゼルは赤と青のCerachromで構成された一体型インサートである。2014年の116719BLROで初めて実用化されたこの二色セラミックは、赤セラミックの半周分に特定の化合物を含浸させ、約1,600°Cでの焼成中に化学反応で青を発色させる工程で生産される。約半数が最終検査で弾かれるとロレックスは公表しており、長く供給を制約してきた工程である。24時間目盛と数字の溝には白金がPVDコーティングされ、暗所での視認性と耐摩耗性が両立されている。
ダイヤルは黒の漆仕上げで、ロレックス独自のChromalight夜光を擁する幅広のマーカーが配される。アワー・ミニッツ・セコンドの中心針に加え、矢印先端の赤いGMT針が独立して進む構成は現行世代から踏襲された。
ムーブメントは自社設計のCal.3285である。Chronergy脱進機を採用した次世代機構で、毎時28,800振動 (4Hz)、約70時間のパワーリザーブを備える。Paraflex耐衝撃機構と青色Parachromヒゲゼンマイによる対衝撃・対磁性能、そして「Superlative Chronometer」基準による日差-2/+2秒の精度認定が組み合わさる。
3連オイスターブレスは、Oysterlock安全クラスプと約5mmまで伸縮するEasylink・コンフォート・エクステンションリンクを備える。5連リンク構造のジュビリー版-0001と比較すると、リンク構成がよりシンプルになる分、腕の上では工具時計らしい構造感が前面に出る。ベゼル側の鮮やかな色彩との対比も、ジュビリー版より鋭く感じられる。
系譜と歴史
126710BLRO-0002の発端は、2018年3月のBaselworldに遡る。同地で発表された126710BLRO(後の-0001)は、ジュビリーブレスを唯一の選択肢として出荷が始まった。3連オイスターブレスの選択肢は当初提供されず、この組み合わせの不在はコレクターの間で議論を呼んだ。
2019年には同じ世代の126710BLNR(バットマン)がジュビリー仕様で追加され、現行GMT-Master II世代は二つの二色Cerachromベゼルを擁する形となった。
2021年、ロレックスは沈黙を破り、126710BLROおよび126710BLNRの双方に3連オイスターブレス仕様を導入した。これにより、ペプシベゼルのオイスター版はリファレンス末尾-0002として独立した識別が与えられた。アルミ製ベゼル時代のRef.16710以来、ステンレス製ペプシ・オイスターという組み合わせがおよそ14年ぶりに復活した瞬間でもあった。
2022年にはGMT-Master IIの左用モデル126720VTNR(スプライト、緑黒)、2024年にはRef.126710GRNR(ブルース・ウェイン、灰黒)がGMT-Master IIラインに加わり、世代全体のバリエーションが拡張された。
そして2026年4月14日、ジュネーブで開かれたWatches and Wondersにおいて、126710BLRO-0001、-0002、ホワイトゴールド版126719BLROがいずれも公式カタログから外され、生産終了が確認された。赤青ベゼルを擁する後継機は、同イベントでは発表されなかった。-0002の市場供給期間は、結果として2021年から2026年4月までの約5年間に区切られたことになる。