Cape Cod以来の、本格機械式という空白
エルメスが時計を手がけてきた歴史は長い。だが自社開発の機械式を核に据えた本格的なシリーズという点では、長く空白があった。1978年にビエンヌでラ・モントル・エルメスを設立して以降、ArceauやHeure H、1991年のCape Codといった意匠性の高いモデルを生んできたものの、機械の中身まで自前で語れる円形の定番は持たなかった。
転機は2006年である。この年エルメスは、フルリエの専業ムーブメントメーカーであるヴォーシェ・マニュファクチュールに25%を出資した。自社で薄型の機械を仕立てる足場が、ここで整う。2012年にはダイヤル製造のナテベールも傘下に収め、文字盤と機械の両方を手の内に持つ準備が進んだ。Slim d'Hermèsは、こうして整った地盤の上に立つ、Cape Cod以来となる完全な新ラインだった。