設計思想
1. 開放型ロイヤル オークの転換点
Ref.15407が世に出たのは、2016年1月のSIHHにおいてである。オーデマ ピゲにとってロイヤル オークの開放型は、2010年のRef.15305「オープンワーク・セルフワインディング」ですでに本格化していた。39mm径の同作は、自社製Cal.3120を骨格まで削り出した完全スケルトン仕様で、ハイ・ホロロジーの新たな受け皿として支持を集めていた。
しかし2012年、時計シリーズのスタンダードであったRef.15300は41mm径のRef.15400へ更新された。開放型のRef.15305は39mmのまま据え置かれており、ケース径の整合性は崩れた状態が続いていた。Ref.15407は、この整合を取り戻すと同時に、APの特許機構を投入する場として企画された。
2. 前任Ref.15305からの変更点
Ref.15407は、ケース径を39mmから41mmへと拡大した。ケース厚は9.9mmで、同時期の時計のみのRef.15400(9.8mm)に対してわずか0.1mmの増加にとどまっている。複雑機構を載せながら厚みをほぼ維持した点に、ムーブメント設計の妙が表れている。
中核は新ムーブメントCal.3132である。基本構造はCal.3120を継承しつつ、調速機にダブルバランスホイール機構を新たに組み込んだ点が決定的に異なる。同一軸上に二つのテンプとヒゲゼンマイを重ねることで、重心安定と慣性増大による精度向上を狙うAP独自の特許構成である。
3. このRefがシリーズ史に残した意味
Ref.15407は、開放型ロイヤル オークを「現代APのフラッグシップ」へと位置付け直した参照点である。スケルトンが特殊機械式の見せ場であった時代から、現行コレクションの中軸に組み込まれた時代への橋渡しとして機能した。
同時発表のRef.15407ORがピンクゴールド版を担い、その後ホワイトゴールド、フロステッドゴールド、セラミックなどへ展開する。2024年にはムーブメントカラーを変えたRef.15407ST.OO.1220ST.02、イエローゴールドのRef.15407BA、150本限定のブラックセラミックRef.15416CE.OO.1225CE.02が加わり、41mmファミリーは再編された。Ref.15407ST.OO.1220ST.01は、その系譜の出発点として現行カタログに残されている。
意匠分析
ジェラルド・ジェンタが1972年に描いた八角形ベゼル、八つのビス、一体型ブレスというロイヤル オークの基本骨格は、Ref.15407でも忠実に踏襲される。ケース径41mm、ケース厚9.9mmは同時期の時計のみRef.15400とほぼ同寸であり、開放型かつ複雑機構を備えながら、シリーズの薄型シルエットが維持されている点が特徴である。
ダイヤル面は、スレートグレーに仕上げられたスケルトン構造を持つ。外周のチャプターリングはブラッシュ仕上げのスレートグレー一色で、アワーマーカーとロイヤル オーク針には18Kピンクゴールドのアプライドが用いられる。グレーの硬質な背景にピンクゴールドの暖色が浮かぶことで、工業的な構造と装飾的な細部が両立する。針とインデックスには夜光が塗布され、暗所での視認性も確保されている。
中央にはCal.3132の地板とブリッジが露出する。ブリッジの稜線にはダイヤモンドカットによる鏡面アンガラージュ、平面にはストレートグレイン、内角にはハンドフィニッシュのVアングルが施される。二つのテンプを支えるブリッジはピンクゴールド製で、文字盤側の手前テンプをわずかにオフセット配置することで、奥行きのある三次元的なダイヤル構成を成立させている。バックサイドはグレアプルーフ加工のサファイアクリスタルを介して、もう一方のテンプとローターが視認できる。
ブレスは一体型のステンレススチール製で、ヘアラインとポリッシュの対比仕上げを保ったまま、APフォールディングクラスプで留められる。リューズはねじ込み式で、防水性能は50mとなる。
系譜と歴史
Ref.15407は、2016年1月にスイス・ジュネーブで開催されたSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)で発表された。発表時のラインアップは二本立てで、ステンレススチールケース/ブレス仕様のRef.15407ST.OO.1220ST.01と、18Kピンクゴールド仕様のRef.15407OR.OO.1220OR.01が同時に登場した。ともにスレートグレーのスケルトンダイヤルにピンクゴールドアプライドを組み合わせる、共通のデザインコードを持つ。
発表後、APは41mmファミリーを多様な素材へ展開していった。2020年にはブラックセラミック仕様のRef.15416CE.OO.1225CE.01が加わり、41mm開放型の幅は貴金属と非貴金属の双方へと広がった。ホワイトゴールド・バゲットセッティング仕様のRef.15412や、37mm径のRef.15467OR(ピンクゴールド)、Ref.15466BC(フロステッドホワイトゴールド)といった姉妹サイズも派生している。
2024年、APは41mmファミリーを再編する三本のリファレンスを追加した。本Ref.15407ST.OO.1220ST.01に対し、ピンクゴールドトーンのムーブメントとインナーベゼルを組み合わせたRef.15407ST.OO.1220ST.02、イエローゴールドのRef.15407BA.OO.1220BA.01、150本限定のブラックセラミックRef.15416CE.OO.1225CE.02である。Ref.15407ST.OO.1220ST.01は、これらの派生を生んだ起点として2026年時点でも現行カタログに継続収載されている。