設計思想
1. 20年目のロイヤルオーク・クロノグラフ
ロイヤルオーク・クロノグラフの歴史は、1997年のRef. 25860にさかのぼる。1972年にジェラルド・ジェンタが描いたロイヤルオークが25周年を迎えるにあたり、初のクロノグラフ仕様としてラインアップに加えられたモデルである。以降、Ref. 26300、Ref. 26320と世代を重ね、2012年には39mmから41mmへとケース径を拡大した。2017年のSIHH(現Watches and Wonders Geneva)は、その20年目の節目にあたっていた。
2. 26320からの世代刷新
26331ST.OO.1220ST.01は、5年にわたって生産された26320STを置き換える新世代として登場した。AP自身は今回の更新を全面刷新とは位置づけず、ダイヤル構成を中心とした注意深い改修として提示した。ケース寸法と基本機構を継承することで、ロイヤルオーク・クロノグラフが築いてきた識別性を守る一方、サブダイヤルの拡大と太く短いアワーマーカーによって、スポーティな表情を強める方向に振っている。同時期のロイヤルオーク全体が、ダイヤルの可読性を高める流れの中にあった時期でもある。
3. ブルー文字盤というこのRefの選択
26331ST系のスチール3色のうち、.01はブルーのGrande Tapisserieダイヤルに銀色サブダイヤルを組み合わせた構成である。黒文字盤の.02、シルバー文字盤に黒サブダイヤルを配した.03とは異なり、ロイヤルオークの定番カラーであるブルーをコントラストの軸に据えている。1972年の初代Ref. 5402STに端を発する、ブルー文字盤とスチールケースという古典的な組み合わせが、クロノグラフの文脈で再演された格好でもある。
4. Cal. 4401への伏線と26240への退場
このRefが市場にあった2017年から2022年までは、APにとってロイヤルオーク・クロノグラフの最も大きな転換点が静かに準備されていた期間でもある。自社開発の一体型フライバック・クロノグラフ機構Cal. 4401は2019年のCode 11.59シリーズで発表され、2021年にはピンクゴールドのRef. 26239としてロイヤルオークに初搭載された。そして2022年、ロイヤルオーク誕生50周年に合わせて投入されたRef. 26240が、Frédéric Piguet 1185を起源とするCal. 2385から完全自社製Cal. 4401への世代交代を成し遂げる。26331ST.OO.1220ST.01は、Cal. 2385世代の最後のスチール製ロイヤルオーク・クロノグラフとして役目を終えた。
意匠分析
このRefの視覚的な核は、ブルーの「Grande Tapisserie」ダイヤルとコントラストを成す銀色サブダイヤルにある。深い青の凹凸パターンの上に3つの円形カウンターが浮かぶ。3時位置に30分積算計、9時位置に12時間積算計、6時位置にスモールセコンドという、コラムホイール式クロノグラフに伝統的なトリ・コンパックス配置である。日付窓は4時半位置に配される。
前任の26320STからの最大の更新点は、ダイヤルの再構成にある。9時と3時の積算計が拡大され、対照的に6時のスモールセコンドはやや小さくなった。アプライドアワーマーカーは太く短い形状に改められ、夜光塗料の充填量が増えている。サブダイヤル上の数字書体やプリントも刷新され、視認性を優先した形状に整えられた。12時位置に置かれる「AUDEMARS PIGUET」のロゴはタイポグラフィが見直され、ダイヤル全体のスポーティな印象を強める方向に振られている。アワーマーカーと針はホワイトゴールド製のアプライドで、いずれも夜光塗料を備える。
ケースは41mmの八角形を踏襲しつつ、厚みは11mmへとわずかに増した。ブラッシュ仕上げの上面と、ポリッシュ仕上げのベベルとの対比は健在で、八角形ベゼルを留める8本の六角ネジは整然と並ぶ。クラウンガードに守られたスクリュー式リューズと、ベゼル左右に置かれる六角断面のクロノグラフ・プッシャーが、Royal Oak Chronograph 41mmの輪郭を形づくる。ブレスは一体型のステンレススチール製で、APフォールディング・クラスプを備える。
ムーブメントには自動巻きクロノグラフCal. 2385が搭載される。Frédéric Piguet 1185を母体とする本機は、コラムホイールと垂直クラッチを組み合わせた高級クロノグラフの典型であり、毎時21,600振動 (3Hz)、40時間のパワーリザーブ、37石、304部品から構成される。ケースバックはスチール製のソリッドバックが採用されるため、その姿が表に現れることはない。
系譜と歴史
26331ST.OO.1220ST.01は、2017年1月のSIHH(現Watches and Wonders Geneva)で発表された。1997年に誕生したRoyal Oak Chronographが20周年を迎える年に投入された世代刷新であり、同じ場で発表されたブラック文字盤の26331ST.OO.1220ST.02、シルバー文字盤の26331ST.OO.1220ST.03とともに、スチール版のラインアップを構成した。同じSIHHでは、ピンクゴールド版の26331OR系、およびチタンとプラチナを組み合わせたブティック限定の26331IP.OO.1220IP.01も発表されている。
このRefは、2012年から5年間生産された前世代の26320STを置き換えるかたちで投入された。発表後ほどなくして店頭に並び始めたが、ロイヤルオーク・クロノグラフ全体への引き合いが強かった時期と重なり、正規ルートでの供給は限られたまま推移したと伝わる。
2021年3月、APは自社開発の一体型フライバック・クロノグラフ機構Cal. 4401を、ピンクゴールドのRef. 26239としてロイヤルオークに初搭載した。これは26331からの本格的な世代交代を予告する動きであり、翌2022年、ロイヤルオーク誕生50周年に合わせてRef. 26240が登場、41mmスチール版を含む通常コレクションがCal. 4401世代へと一新される。これに伴い26331ST.OO.1220ST.01も生産を終え、26331系スチール3色は5年あまりでラインアップから退いた。