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CALIBER · Sellita

SW300-1 a

自動巻 Automatic Analog デイト

ETA 2892-A2を範として2008年に確立した、スイス時計産業の薄型自動巻を支える基盤キャリバー

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
56 時間
石数
25 石
ムーブメント径
25.6 mm
Cal. SW300-1 a
movement · SW300-1 a 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

SW300-1は、スイスのセリタ(Sellita)が手がける薄型自動巻キャリバーであり、ETA 2892-A2と同等の設計を範とする。2008年に登場したSW300の改良版で、直径25.6mm・厚さ3.6mmという薄さを特徴とする。毎時28,800vph (4Hz)、25石、双方向巻き上げのローターを備え、2021年以降は新バレルにより56時間のパワーリザーブを得た。末尾の「a」は日付表示付き、「b」は日付なしを指す。タグ・ホイヤーのキャリバー7をはじめ、薄型を求める数多くのスイス時計に搭載される。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerSellita
ReferenceSW300-1 a
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels25 石
Power reserve56 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ETA供給制限とセリタの自立

セリタは1950年、ピエール・グランジャンによりラ・ショー・ド・フォンで創業したエボーシュ(半完成ムーブメント)の組立業者(エタブリスール)である。長らくETAの設計を組み立て・仕上げる立場にあり、後に範とする2892系を含むムーブメントを実際に手がけてきた経緯を持つ。

転機は2002年に訪れる。スウォッチ・グループのニコラス・G・ハイエックが、ETAによるグループ外ブランドへのエボーシュ供給を段階的に縮小・停止する方針を公表した。スイス競争委員会(COMCO)の関与を経て供給は当面継続されたが、各ブランドは代替を迫られた。ETAの基幹ムーブメントは特許が既に満了しており、公知となった設計に基づいて、セリタは互換ムーブメントの自社生産へと舵を切る。2004年に発表されたSW200(2824系)に続き、薄型の2892系を範とするSW300がその系譜に加わった。

2. SW300からSW300-1へ

SW300ファミリーの初出は2008年とされ、2010年頃には広く流通した。SW300-1はその改良版にあたり、歯車のかみ合わせ形状や巻き上げ機構、耐衝撃部品などに見直しが加えられている。2013年にはパレットブリッジが新設計に変わり、構造の最適化が続いた。

大きな更新は2021年である。新型バレルとゼンマイ(RDM+と呼ばれる)の採用により、従来42時間だったパワーリザーブが、最低50時間・標準56時間へと延長された。新旧バレルは互換性を持つため、整備時に換装する例も見られる。

3. グレード体系とファミリー展開

セリタはETAと同様、用途に応じた4段階のグレードを設ける。基本のStandard、調整を高めたSpecial(Élaboré)、上位のPremium(Top)、そしてCOSC認定のChronometerである。同一の基本設計を保ちつつ、調整精度や部品の質で差を付ける構成で、ブランドはこの中から選んで採用する。上位グレードは独自名で呼び替えられることも多く、IWCが上位仕様のSW300を自社呼称で搭載した例や、タグ・ホイヤーがSW300-1を「キャリバー7」として用いる例が知られる。

ファミリーには、GMT針を備えるSW330、スモールセコンドのSW360、ムーンフェイズ付きのSW382、スケルトン仕様のSW300-1 Sなど、薄型の基本設計を共有しつつ機能を広げた派生が並ぶ。

4. 薄型自動巻の業界基盤として

SW300の意義は、汎用自動巻の中でも「薄さ」を担う点にある。厚さ3.6mmという寸法は、ドレスウォッチや端正な三針モデルに収めやすく、より厚いSW200では難しい設計上の自由度をブランドにもたらす。このため、エレガント系から実用系まで幅広い価格帯で採用されてきた。

一方でセリタは、調速機構(ヒゲゼンマイ等の調速組)を依然スウォッチ系のニヴァロックスに依存しており、これは業界構造上の論点として語られることがある。それでもなお、SW300は供給網の変化を受けて産業の選択肢を広げた一例として、現代スイス時計の基盤の一角を占めている。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

設計の出自と薄型の理由

SW300-1はETA 2892-A2と同じアーキテクチャを範とする自動巻である。厚さ3.6mmという薄さは、自動巻機構を地板側へ統合的に組み込む2892系の設計に由来する。より厚いSW200(4.6mm)が巻き上げモジュールで高さを加えるのに対し、SW300系は約1mm薄く、薄型モデルに収めやすい。

石数は25石で、ETA 2892系の21石より4石多い。この差は主に香箱の軸(バレルアーバー)を支える軸受に充てられ、当該部の摩擦低減を意図した構成とされる。

調速と脱進

毎時28,800vph (4Hz)で振動する。これはテンプ(振動錘)が1秒間に8回往復する刻みで、秒針が滑らかに運針し、姿勢差による精度の乱れにも比較的強い周波数帯である。脱進機(エネルギーを一定量ずつ送り出す機構)はスイスレバー式で、ガンギ車は研磨のうえエピラム処理と二硫化モリブデン(MoS2)による潤滑が施される。

調速はヒゲゼンマイ(渦巻状の調速バネ)を緩急針で調整する伝統的な方式で、ヒゲ持(コレット)にはニヴァトロニックが用いられる。リューズを引くと秒針が止まるストップセコンド(ハッキング)を備え、秒単位の時刻合わせができる。「a」仕様は早送り可能な日付表示を持つ。

自動巻とパワーリザーブ

巻き上げはボールベアリングで支持された中央ローターによる双方向式で、腕の動きを左右どちらの回転でも巻き上げに変換する。2021年以降のRDM+バレルとゼンマイにより、標準56時間(最低50時間)のパワーリザーブを得た。従来の42時間版とは香箱単位で互換性がある。

グレード別の構成差と仕上げ

4段階のグレードは、調速部品と調整工程で性能差を作る。StandardとSpecialはパレット石にポリルビーを用い、PremiumとChronometerは赤ルビーを採る。テンプもStandard系がギルト仕上げ、上位はグリュシデュール製となる。調整位置数はStandardが2方位(日差±12〜±30秒)、Specialが3方位(±7〜±20秒)、Premiumが5方位(±4〜±15秒)、ChronometerはCOSC基準(-4〜+6秒)に従う。

仕上げはD1(無装飾)からD2、D3(コートドジュネーブ等)、D4(ブルースクリュー等の豪華装飾)まで段階があり、ブランド固有の要望に応じるテーラーメイド(TAI)も用意される。地板や受けにはコートドジュネーブやペルラージュが施され、ローターには独自装飾が加えられることが多い。

精度の土台と整備性

精度の土台は、4Hzという比較的高い振動数と、グレードごとの調整位置数・部品選択にある。テンプ素材や調速組の質を上げ、より多くの姿勢で調整するほど、姿勢差や温度変化に対する安定が増す仕組みである。また本機はETA 2892-A2と寸法・構造を共有するため、当該設計に通じた時計師であれば取り扱いやすく、部品の入手性も比較的高い。特殊な専用工具を要しない汎用性の高さが、薄型自動巻として長く採用され続ける一因となっている。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア SW300-1 - Grail Watch Reference 専門メディア · Grail Watch Reference · 2026.08.15 閲覧 Grail Watch Reference · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Sellita caliber SW300-1 a 専門メディア · WatchBase · 2026.08.15 閲覧 WatchBase · 2026.08.15