03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. プロジェクト99と1969年の競争
1960年代、自動巻クロノグラフの実用化は業界の悲願であった。Monochromeによれば、1965年末、クロノグラフ専業デプラのジェラルド・デュボアは、マイクロローターの量産で先行していたビューレンの機械を、モジュール式クロノグラフの土台にできると考えた。彼はビューレンのハンス・コッヘルに接触し、商業的な後ろ盾としてジャック・ホイヤー、続いてウィリー・ブライトリングを引き入れた。1966年2月2日に協定が結ばれ、競合どうしのホイヤーとブライトリングが手を組む4社連合が成立する。開発は秘匿のため「プロジェクト99」と呼ばれた。
1967年9月に特許が出願され、1968年末には約100個の先行量産機が組まれた。1969年3月3日、ニューヨークとジュネーブで同時に発表が行われ、その1か月後のバーゼル・フェアで3ブランドが最初のクロノグラフを披露した。この年の自動巻クロノグラフには、高振動の一体型を掲げたゼニスのエル・プリメロと、一体型のコラムホイールを持つセイコーの6139もあった。Monochromeは、ゼニスが1969年1月の記者会見で最初に発表したものの、最初に市場へ届いたのはエル・プリメロではなかったと書き、どれが最初かという議論より、これらの機械が時計の歴史に与えた影響のほうが重要だとしている。
2. 12・14・15への展開
発表直後から最適化が重ねられた。1971年には毎時21,600振動へ高めたキャリバー 12が登場し、ファミリーの主力となる。小秒を組み込むキャリバー 13は商品化されずに終わった。1972年にはGMT機能を加えたキャリバー 14、小秒を備えたキャリバー 15が派生する。1974年のキャリバー 7740は、同じクロノグラフ・モジュールを使いながら、基幹をヴァルジュー製の手巻へ替え、リューズを3時位置へ戻した。PVD仕上げの「ダークロード」など後期のモナコを駆動したこの世代が、このモジュールを使った最後の機械となった。
3. 現代の復活とモジュール構成の継承
キャリバー 11の名は、2009年のモナコ40周年記念の限定版CAW211Aで復活し、2015年の量産のCAW211Pに受け継がれた。ただし現行のキャリバー 11は、初代のような独自の設計ではない。Monochromeによれば、CAW211AはETA系、CAW211Pはセリタ系の3針の自動巻に、同じデュボア・デプラ製のモジュールを組む構成である。その価値は、左リューズという象徴の継承にある。2026年、タグ・ホイヤーはモナコ・クロノグラフ・スティーブ・マックイーンに自社製のキャリバー TH20-11を投入し、外部の基幹とモジュールに頼ってきた長い一章を閉じた。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
キャリバー 11の機構を理解する鍵は、そのモジュール構造にある。時刻を刻む基幹キャリバーと、計時を司るクロノグラフ・モジュールを別々に作り、後者を前者へ重ねて一体化する方式である。初代では、ビューレン製のマイクロローター自動巻が基幹を担った。マイクロローターとは、巻き上げ用の回転錘を機械の内側に収め、全体の厚みを抑える機構を指す。この薄さがあって初めて、上にクロノグラフの機構を載せる設計が成立した。クロノグラフ・モジュールはデプラ(後のデュボア・デプラ)が手がけ、レバーによる機構で計時を制御する。Monochromeによれば、モジュールは基幹の裏側に組み付けられる。
左リューズという最大の識別点も、この構造と結びついている。リューズはクロノグラフのプッシュボタンと反対の9時位置に座り、Monochromeはこれをこの機械の象徴的な特徴と呼んでいる。
初代の諸元は、17石、直径31mm、厚さ7.7mm。毎時19,800振動で、パワーリザーブは42時間。表示は30分計を3時、12時間計を9時に置く2つ目の構成で、常時運針の秒針を持たず、日付を6時に備える。1969年のうちに、トルクを抑えた香箱ばね、改めた日送り機構、鋼製の滑り車への変更といった手直しが加えられた。1971年のキャリバー 12では毎時21,600振動へ高め、より強い香箱ばねを使い、輪列とテンプを見直し、クロノグラフのハンマーを衝撃に強い形に改めた。
2009年に復活した現行のキャリバー 11は、基幹を汎用の自動巻に置き換えている。SJXは2015年のCAW211Pについて、ETA 2892と同等のセリタSW300にデュボア・デプラ製のクロノグラフ・モジュールを組んだ機械だと説明している。Monochromeが伝える2023年の版の諸元は、直径30mm、59石、パワーリザーブ40時間である。毎時28,800振動の基幹は1秒間に8回振れ、1/8秒単位の計時を可能にする。初代と同じく左リューズの配置を守り、30分計と12時間計、6時位置の日付という初代の表示の構成を受け継ぐ。CAW211Pでは、刻印の裏蓋に代えてサファイアの裏蓋から機械を眺められる。
モジュール方式の利点は保守性にも及ぶ。クロノグラフの機構を基幹から分離できるため、整備や部品交換を機構単位で進めやすい。反面、基幹の上に層を重ねるぶん全体の厚みは増す傾向にあり、薄型化には不利という側面も併せ持つ。2026年の自社製キャリバー TH20-11は、一体型でコラムホイールと垂直クラッチを備え、80時間のパワーリザーブを持つ。Monochromeは、セリタSW300にデュボア・デプラのモジュールを載せた従来の世代より大きく進歩したと評している。