HUB1115
2024年、ビッグ・バンに初搭載されたウブロの自動巻。汎用ベースのセリタSW300を独自改修し、48時間のパワーリザーブを実現した一基
| Maker | Hublot |
|---|---|
| Reference | HUB1115 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 25 石 |
| Power reserve | 48 h |
| Movement ⌀ | 25.6 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
セリタSW300という土台
ウブロのキャリバー群は、自社開発のウニコ(Unico)系やメカ-10といった完全自社製と、外部のベースムーブメントを改修した系列とに大きく分かれる。HUB1115は後者に属し、その土台はセリタ製の薄型自動巻SW300である。
セリタは1950年代に創業し、長くETA向けムーブメントの組み立てや仕上げを担ってきた。ETAが外部へのエボーシュ(半完成ムーブメント)供給を絞った2000年代以降、自社設計の互換キャリバーを相次いで投入する。SW300はその一つで、ETAの薄型自動巻2892-A2と同等のアーキテクチャを持つ。2000年代後半に登場し、2010年前後には広く流通した。
ウブロはこのSW300を、クラシック・フュージョンのHUB1110やHUB1112として早くから採用してきた。HUB1115は、その延長線上に置かれる新世代といえる。
ウブロによる改修
ウブロがHUB1115に加えた手は、機能面と意匠面の双方に及ぶ。機能面の核は主ゼンマイ(動力源となる渦巻きバネ)の強化であり、これによりパワーリザーブは48時間へ引き上げられた。あわせて自動巻ローターの軸受けが新設計に置き換えられ、巻き上げ機構の円滑さと信頼性が見直されている。
意匠面では、ブリッジへのサテン仕上げと、全体を覆うアンスラサイト・ルテニウムの暗色コーティングが導入された。ローターにはウブロの刻印が入る。ウブロはこの一連の改修を、技術と意匠の双方にわたる品質の引き上げと位置づけている。
ビッグ・バンへの初搭載
HUB1115が初めて収められたのは、2024年に発表されたビッグ・バン・インテグレーテッド・タイムオンリー38mmである。ケースとブレスレットを同一素材で一体に構成するこのラインにおいて、38mmはシリーズ初のサブ40mm径であり、文字盤を肉抜きしないソリッドダイヤルを採った点も新しい。
同ラインの40mm版には、ゼニスのエリート670を基とするHUB1710が搭載される。両者は基となるムーブメントも仕上げの方向性も異なり、HUB1115はより小径のケースと手の届きやすい価格帯に応える設計選択として置かれる。ビッグ・バンの裾野を広げる役割を担うキャリバーである。
技術解説
HUB1115は、11½リーニュ(直径25.6mm)、厚さ3.6mmの薄型自動巻ムーブメントである。この薄さは、ベースのセリタSW300——ひいてはその範とするETA 2892系——のアーキテクチャに由来する。SW200/2824系より約1mm薄く、一体型ケースの低いプロファイルに収まりやすい。
脱進機とテンプ
調速の心臓部は、スイスレバー式の脱進機(エネルギーを一定間隔で解き放つ機構)と、その上で振動するテンプ(往復回転する輪)である。振動数は28,800vph (4Hz)。毎秒8回の振動はクォーツより粗いが、機械式としては高頻度の部類に入り、外乱に対する安定と滑らかな秒針運針を両立する。ヒゲゼンマイ(テンプの振動周期を司る渦巻きバネ)とテンワの組み合わせが、精度の土台を成す。歩度の調整は緩急針(テンプの有効長を変える指針)による方式で、フリースプラング機構は採らない。
香箱とパワーリザーブ
動力は単一の香箱(主ゼンマイを収める円筒)に蓄えられる。HUB1115では、ウブロがこの主ゼンマイを強化し、巻き上げ時に蓄えるエネルギー量を高めた。結果としてパワーリザーブは48時間に達する。SW300系は標準で42時間前後、2021年以降のセリタ純正仕様では56時間に拡大した経緯があり、48時間という値はその中間に位置する。
自動巻機構と石数
巻き上げは、両方向に回転するローターによる自動巻である。ウブロはローターの軸受けを変更し、回転の円滑さと耐久性を高めた。石数は25石。これはベースのSW300が、香箱の軸を支える位置にETA 2892より4石多く備えることに由来する。ルビー軸受けは摩擦を減らし、長期の安定動作を支える。
仕上げと防磁
意匠面の特徴は、ブリッジ(輪列を押さえる橋状の部品)へのサテン仕上げと、アンスラサイト・ルテニウムの暗色コーティングである。これにより、汎用ベースでありながら独自の表情を獲得している。なお初搭載機ビッグ・バン・インテグレーテッド・タイムオンリーでは、軟鉄製のダイヤルがムーブメントを磁場から保護する設計が採られる。ただしこれはケース側の工夫であり、キャリバー単体の機能ではない。
ベースが広く流通するSW300であるため、その構造に通じた時計師は多く、保守の面でも扱いやすい部類に入る。
機能は時・分・センター秒・日付に加え、リューズを引くと秒針が止まるストップセコンド、および日付の早送り機構を備える。クロノメーターやマスター・クロノメーターのような第三者認定は、本キャリバーには付帯しない。