系譜と歴史
外注の時代と「High Mech」
Orisは1904年の創業以来、1981年までに229種ともいわれる自社製キャリバーを手がけた。だがクォーツ危機の圧力のなか、1982年の経営陣による買収を機に自社製の量産から退き、ETA、のちにSellitaのエボーシュ(半製品ムーブメント)へと軸足を移す。それでも機械式専業の姿勢は崩さず、1990年には「High Mech」のスローガンを掲げた。クォーツを持たないという宣言である。Oris 733は、この外注エボーシュ時代を象徴する主力自動巻きにあたる。
Sellita SW200-1という基盤
733の土台となるSellita SW200-1は、ETA 2824-2を継承する汎用ムーブメントである。ETA 2824は1971年に登場し、その特許は2002年に失効した。長年ETAのアセンブリを担ってきたSellitaは、この機を捉えて自社版を世に出す。初代SW200は2003年頃、改良版のSW200-1は2008年頃に登場した。SW200-1はETA 2824-2と寸法を共有し、ケースや文字盤を変えずに置き換えられる。石数は26石で、香箱側に1石を加えることで自動巻き時の摩擦を抑えている。SW200-1にはStandard、Élaboré、Top、Chronometerの4グレードが用意され、調整精度に応じて選び分けられる。両者は優劣ではなく、同じ設計思想を共有する関係にある。
733と733-1、そして自社製への回帰
Orisは733に最も標準的なStandardグレードを採用し、独自の赤ローターを載せて供給を受ける。同社は公式サイトでベースムーブメントを明示しており、「理にかなったものづくり」という信条を体現する透明性が特徴である。Sellitaがパワーリザーブの公称値を38時間から41時間へ改めたことに伴い、41時間仕様を733-1と区別する運用もみられる。一方で2014年のCal.110、2020年のCal.400により、Orisは35年ぶりに自社製ムーブメントへ回帰した。733は、これら自社製キャリバーと併存しながら、エントリー層を支え続けている。