系譜と歴史
1. 薄型系列の5つ目の記録
ブルガリは2014年のトゥールビヨンを皮切りに、オクト フィニッシモで薄さの記録を重ねてきた。2016年にミニッツリピーター、2017年に自動巻き三針、2018年に自動巻きトゥールビヨンが続く。Cal. BVL 318は、2019年のバーゼルワールドでその5つ目として発表された。
クロノグラフは、薄型化の難しい機構の一つである。発停と帰零を司る部品が多く、それらを並べる面積も要る。Monochrome Watchesは、薄型クロノグラフの開発が長く停滞していたと指摘する。多くのブランドが汎用ムーブメントに頼り、自社開発でも薄さは目標になりにくかった。それまでの最薄のクロノグラフ ムーブメントは、1987年に登場した手巻きのピゲ 1180で、厚さ3.95mmとされる。
時計部門を率いたグイド・テレーニは、BVL 318を白紙から設計した一体型のクロノグラフだと語っている。基礎となる時計にモジュールを重ねれば、その分だけ厚みが増す。BVL 318は、計時と時差表示を最初から1つの機械として組んだ。
2. 厚さを径に置き換える設計
BVL 318の設計は、部品を上へ積まず横へ広げる方針で一貫している。直径は37.2mmに及ぶ。Monochrome Watchesは、ヴァルジュー 7750の約30mmと比べ、この径の大きさが薄さに寄与したと分析する。クラッチには、現在主流の垂直式ではなく、高さを取らない水平式を選んだ。巻き上げの外周式について、SJX Watchesは前年の自動巻きトゥールビヨン Cal. BVL 288と同じ方式だと伝える。
その代償として、ケースは三針のCal. BVL 138を積む40mmから42mmへ広がった。Revolutionも、外周ローターの採用が記録の鍵となる一方、ケース径を押し上げたと評している。厚さを削るために平面の広さを差し出す、それがBVL 318の基本の取引である。
3. 機械を変えずに広がった搭載機
BVL 318は、発表後も機械の諸元を変えないまま搭載先を広げてきた。2020年には、夜光の文字盤とタキメーターを加えたRevolutionとThe Rakeの別注機が作られたとされる。2021年には、スティールケースのオクト フィニッシモ Sが加わった。後者はケースを43mm、厚さ8.75mmへ改め、防水を100mへ高めた。
ケースが厚くなっても、ムーブメントの厚さは3.30mmのままである。記録の数字は外装ではなく、この機械そのものに由来する。2022年には銀文字盤のスティール仕様Ref. 103661が続き、ブルガリ公式の現行品にもBVL 318を積む仕様が並ぶ。
2020年に発表されたCal. BVL 388は、トゥールビヨンとクロノグラフを組み合わせた別のキャリバーである。計時は単独のプッシャーで操作し、計時用に2つのプッシャーを持つBVL 318とは構成が異なる。
4. 薄型クロノグラフの中での位置
比較の基準になるのは、ピアジェが2015年に発表した手巻きのCal. 883Pである。ムーブメントの厚さは4.65mm、ケースは8.24mmで、フライバック機能を備える。BVL 318は自動巻きで、ムーブメントは3.30mm、ケースは6.90mmに収まる。
両者の差は優劣ではなく、何を優先したかの違いとして読める。ピアジェは手巻きに絞り、フライバックという操作性を加えた。ブルガリは自動巻きを残し、外周ローターと水平クラッチで高さを削った。同じ薄型クロノグラフでも、譲った機能と守った機能が異なる。