系譜と歴史
1. 宝飾から時計製造へ
ブルガリは1884年にローマで創業した宝飾ブランドである。腕時計の分野では、1977年に発表したブルガリ・ブルガリが転機となった。ベゼルにブランド名を二重に刻んだこのモデルは、同社を代表する時計へと育つ。当初、ムーブメントは外部の専業メーカーに依存していた。1989年にはジラール・ペルゴと技術提携を結んだと伝わり、機械式時計の開発基盤を整えていく。2000年代以降は、ジェラルド・ジェンタやダニエル・ロートといった工房や、文字盤・ケース・ブレスレットの製造会社を傘下に収め、垂直統合を進めた。2011年にLVMHグループへ加わったのちも、自社マニュファクチュール化の方針は継続された。
2. 2013年、ソロテンポの登場
BVL 191は、2013年に刷新されたブルガリ・ブルガリに搭載され、初めて姿を現した。それまで実用ラインの自動巻には外部ムーブメントが用いられていたが、この世代から自社製のBVL 191へと置き換わる。キャリバー名のうちBVLはブランド名の頭三文字、191は部品点数に由来する。ブルガリはこのムーブメントを「ソロテンポ」(時間のみ)と呼ぶ。日付表示を備えながらも、構造の簡潔さと実用精度を主眼に置いた設計思想を、その名が表している。部品はスイス・ラ・ショー・ド・フォンの工房で、最終組み立てはル・サンティエのオート・オルロジュリー工房で行われるとされる。
3. 設計思想と兄弟キャリバー
BVL 191は、単一の香箱で約42時間のパワーリザーブを確保する設計である。同時期には、近い型番の兄弟キャリバーとしてBVL 193も存在した。こちらは2012年に登場し、二つの香箱で約50時間を実現するが、テンプの配置や受けの構造はBVL 191と大きく異なる。両者は同じ11.5型ながら設計の出自が別系統とされ、BVL 191はブルガリが自社開発・自社製造を掲げるムーブメントに位置づけられる。2017年頃には石数を1石加えた改良版が導入され、社内ではBVL 191 302と呼ばれる。華美な複雑機構ではなく、ブランドの実用ラインを長く支える基幹ムーブメントとして、堅実な役割を担い続けている。