BVL 191
2013年に登場し、ソロテンポの名を冠した、ブルガリの一貫製造体制を象徴する三針自動巻キャリバー
BVL 191は、2013年にブルガリが発表した自動巻キャリバーである。「ソロテンポ」(イタリア語で時間のみの意)の通称で知られ、時・分・秒と日付を表示する三針デイト機構を備える。振動数は28,800vph (4Hz)、パワーリザーブは約42時間、石数は26石(後の改良版は27石)。両方向巻き上げのローターをセラミック製ボールベアリングで支持し、瞬時日付送りとハック秒を持つ。部品点数191という型番の由来どおり、構造を簡潔にまとめた設計が特徴である。スイスの自社マニュファクチュールで製造され、ブルガリ・ブルガリやオクト・ローマなど、実用ラインを支える基幹ムーブメントとして用いられる。
| Maker | Bulgari |
|---|---|
| Reference | BVL 191 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 26 石 |
| Power reserve | 42 h |
| Movement ⌀ | 25.6 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. 宝飾から時計製造へ
ブルガリは1884年にローマで創業した宝飾ブランドである。腕時計の分野では、1977年に発表したブルガリ・ブルガリが転機となった。ベゼルにブランド名を二重に刻んだこのモデルは、同社を代表する時計へと育つ。当初、ムーブメントは外部の専業メーカーに依存していた。1989年にはジラール・ペルゴと技術提携を結んだと伝わり、機械式時計の開発基盤を整えていく。2000年代以降は、ジェラルド・ジェンタやダニエル・ロートといった工房や、文字盤・ケース・ブレスレットの製造会社を傘下に収め、垂直統合を進めた。2011年にLVMHグループへ加わったのちも、自社マニュファクチュール化の方針は継続された。
2. 2013年、ソロテンポの登場
BVL 191は、2013年に刷新されたブルガリ・ブルガリに搭載され、初めて姿を現した。それまで実用ラインの自動巻には外部ムーブメントが用いられていたが、この世代から自社製のBVL 191へと置き換わる。キャリバー名のうちBVLはブランド名の頭三文字、191は部品点数に由来する。ブルガリはこのムーブメントを「ソロテンポ」(時間のみ)と呼ぶ。日付表示を備えながらも、構造の簡潔さと実用精度を主眼に置いた設計思想を、その名が表している。部品はスイス・ラ・ショー・ド・フォンの工房で、最終組み立てはル・サンティエのオート・オルロジュリー工房で行われるとされる。
3. 設計思想と兄弟キャリバー
BVL 191は、単一の香箱で約42時間のパワーリザーブを確保する設計である。同時期には、近い型番の兄弟キャリバーとしてBVL 193も存在した。こちらは2012年に登場し、二つの香箱で約50時間を実現するが、テンプの配置や受けの構造はBVL 191と大きく異なる。両者は同じ11.5型ながら設計の出自が別系統とされ、BVL 191はブルガリが自社開発・自社製造を掲げるムーブメントに位置づけられる。2017年頃には石数を1石加えた改良版が導入され、社内ではBVL 191 302と呼ばれる。華美な複雑機構ではなく、ブランドの実用ラインを長く支える基幹ムーブメントとして、堅実な役割を担い続けている。
技術解説
調速と脱進機
BVL 191の振動数は28,800vph (4Hz)である。テンプ(調速を担う振動体)が1秒間に8回振動し、時間を細かく刻むことで、日常使用に十分な安定性を得る。1秒あたりの振動を多く取る設計は、姿勢差や外乱の影響を平均化しやすく、実用域での精度安定に寄与する。テンプは文字盤側から見て6時位置に置かれ、両持ちのテンプ受け(ブリッジ)で支持される。片持ちの受け(コック)を用いる兄弟キャリバーのBVL 193とは、この点で構造を異にする。脱進機(動力を一定間隔で解放する機構)はスイスレバー式で、ヒゲゼンマイ(渦巻き状のバネ)とテンプの共振により、毎時28,800回の振動を刻む。耐衝撃機構を備えるとされるが、方式の詳細は公表されていない。
巻き上げと動力
自動巻機構は両方向巻き上げ式で、ローターが左右どちらに回っても主ゼンマイを巻き上げる。このローターはセラミック製のボールベアリングで支持される。金属同士の摩擦に頼らないこの方式は、潤滑への依存を抑え、回転の滑らかさと長期の耐久性に寄与すると説明される。動力源は単一の香箱で、満巻状態から約42時間のパワーリザーブを確保する。二香箱で約50時間を得るBVL 193に対し、本機は単一香箱で日常使用に足る駆動時間をまとめている。日付は瞬時送り式を採用し、深夜0時前後で表示が瞬時に切り替わる。秒針はリューズを引くと停止するハック機構を備え、秒単位での時刻合わせを可能にする。
仕様と仕上げ
直径は25.6mm(11.5型)、厚さは3.8mmで、薄型のオクト・ローマのケースにも収まる寸法である。石数は当初26石で、2013年の登場時から用いられてきた。2017年頃には1石を加えた27石仕様へ改良され、社内ではBVL 191 302と区別される。これに伴い部品点数も191から192へ増えるが、キャリバー名は191のまま据え置かれた。仕上げには、ブリッジとローターに細いコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ縞)を施し、エッジには面取りを加える。サファイアクリスタルの裏蓋を通して、これらの装飾を鑑賞できる仕様である。日付窓は3時位置に配され、時字の視認を妨げない設計とされる。構成は標準的な自動巻の枠組みに沿っており、保守の面でも扱いやすい部類に入る。クロノメーター認定を前提とした上級機ではなく、ブランドの実用ラインを支える日常的な自動巻として位置づけられている。