系譜と歴史
1. 新しいオクトとともに
BVL 193が初めて姿を現したのは、2012年7月である。ブルガリはローマの旧施療院サント・スピリト・イン・サッシアで、新しいオクトを披露した。発表されたのはスティールとピンクゴールドの2本で、どちらもこの機械を積んでいた。
ブルガリはこのとき、ケースと文字盤に加えて、BVL 193も自社で作るものとして示した。翌2013年にGPHGへ出品したブレスレット仕様の資料でも、この機械を「マニュファクチュール・キャリバー」と呼んでいる。同じ発表の場で、LVMHウォッチ&ジュエリーの会長であったフランチェスコ・トラパーニは、自社製ムーブメントに触れた。生産はまだ限られた量にとどまり、その年の後半から増え、翌年に大きく伸びる見通しだと述べている。
2. ヴォーシェの基幹機という出自
発表から間もなく、専門誌はこの機械の出自に触れた。Watchonistaは2012年10月のレビューで、BVL 193はまだ自社製の機械ではないと書いた。ヴォーシェのVMF 3000を基に、ブルガリが自社の仕様に整えたものだという。クロノス日本版も、自社製のソロテンポ・キャリバーは2012年の発表に間に合わなかったと記す。それ以前のオクトが積んでいたのは、ヴォーシェ製の機械だったという。
ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエは、スイスのフルリエに拠点を置く専業ムーブメントメーカーである。Europa Starによれば、同社はサンド・ファミリー財団に属し、パルミジャーニ・フルリエの製造を担う中核の工房であった。エルメスも同社の25%を保有していた。同誌は2011年、ヴォーシェが外部のブランドに向けて品揃えを組み直したと報じている。そこで加わった新しい基幹機がVMF 3000である。上位機VMF 4000を工業生産向けに改めた自動巻で、径は10½リーニュと11½リーニュの2種が用意された。二つの香箱を持ち、毎時28,800振動 (4Hz)で50時間を確保する。BVL 193の径と諸元は、このうち11½リーニュ版と重なる。
3. ソロテンポとの並走
やがてブルガリは、自社で開発したBVL 191をブルガリ・ブルガリに載せる。2014年に加わった38mmのオクトも、この機械を積んだ。それでも、41mm級のオクト・ソロテンポはBVL 193を積み続けた。aBlogtoWatchは2016年、両者の径がともに25.60mmであることに触れている。そのうえで、41mmにはBVL 193、38mmにはBVL 191が載ると整理した。同じ年のバーゼルワールドで示されたブラックDLCの41mmも、機械はBVL 193であった。WatchBaseは、ブレスレット仕様やウルトラネロなど9本を、この機械の搭載機として収録している。
二つの機械は、径も振動数も、日付付きの三針という構成も共通する。異なるのは動力の持ち方で、BVL 191は単一の香箱で42時間、BVL 193は二つの香箱で50時間である。ブルガリは同じ形の時計の中で、外部の基幹機を自社の仕様に整えた機械と、自社で設計した機械を並行して用いた。生産終了の時期を示す公式資料は確認できない。