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TUDOR · SERIES

Black Bay

ブラックベイ

1950年代のチューダー・サブマリーナの語彙を一本に統合した、復興期チューダーの中核ダイバーズシリーズ

41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Black Bay(ブラックベイ)は、2012年にチューダーがバーゼルワールドで発表した道具時計のシリーズである。1954年に始まる自社サブマリーナの系譜から特定の一本を復刻するのではなく、複数世代の意匠語彙を一台へ統合する手法で再構成された。現行ラインは41mmの本流Black Bay、39mmのBlack Bay 58と58 GMT、37mmのBlack Bay 54、固定ベゼルGMTのBlack Bay Pro、そしてセラミック仕様のBlack Bay Ceramicで構成される。

02 — STORY · 物語

Black Bay(ブラックベイ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

復興の意志と2012年

チューダーは2000年代に北米市場から長く撤退しており、復興の途上にあった。2010年に発表されたHeritage Chronograph「Monte Carlo」がその端緒であり、2012年に続く一本が試金石となる。同年のバーゼルワールドで、バーガンディの回転ベゼルを纏った41mmのダイバーズウォッチが姿を現した。Ref. 79220R、Heritage Black Bay。チューダー・サブマリーナの歴代モデルを単一の物語に再構成する試みは、ここから始まる。

02

名作の集合体としての初期Ref. 79220

79220Rは特定の1本を復刻したのではない。1954年Ref. 7922の小ぶりなクラウンが想起する初期サブマリーナの面影、1958年Ref. 7924「ビッグクラウン」が刻んだ8mmの王冠、1969年Ref. 7016が確立したスノーフレークハンド——これらが一台に集約されている。文字盤に弧を描いて配される「self-winding」の表記から、コレクター層で「スマイリー」の愛称が定着した。搭載キャリバーはETA 2824、防水は200m。「サブマリーナ」の文字を文字盤から外し、新しい名のもとに歴史を再編する判断が当初から貫かれている。2014年のRef. 79220B(青)、2015年のRef. 79220N(黒)を加え、初期三部作が完結する。

03

マニュファクチュール化と派生の年代

2016年、Ref. 79230世代でブランドは自社製ムーブメントMT5602を導入する。COSCクロノメーター認定、70時間パワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ。同年にはブロンズ製のRef. 79250BM、翌2017年にはBlack Bay Chrono Ref. 79350が登場する。後者はブライトリングのB01をベースに共同開発されたキャリバーMT5813を搭載し、両社が三針機とクロノグラフを相互に供給するという当時として異例の協業を結実させた。

04

2018年——58とGMTの分岐

2018年は分岐の年である。Black Bay GMT Ref. 79830RBは赤と青の「ペプシ」ベゼルと真正GMT機構MT5652を備え、シリーズ初の二地時間モデルとなった。同時に発表されたBlack Bay 58 Ref. 79030Nは、1958年Ref. 7924を起点にしつつ39mmケースと薄型化された新キャリバーMT5402を備え、ヴィンテージ寄りのプロポーションを現代に再提示した。58は発売直後から評価を集め、シリーズの代名詞的存在へと成長していく。

05

認証と回帰——METASと小径化

2021年、Black Bay Ceramicがチューダー初のMETASマスター・クロノメーター認証を取得した。日差0/+5秒、磁気耐性15,000ガウス、200m防水という上位規格への移行が始まる。2022年には固定ベゼルGMTのBlack Bay Pro Ref. 79470が登場し、2023年のWatches & Wondersで41mmの本流Black Bay(Ref. 7941A1A0RU)がMETAS仕様のMT5602-Uに更新され、ケース厚は13.6mmまで薄型化された。同年発表のBlack Bay 54 Ref. 79000Nは、1954年Ref. 7922へ最も忠実に立ち返った一本である。37mm径、目盛り表記を排した簡素なベゼル、小型クラウン。ヴィンテージへの誠実さという観点で、シリーズ中もっとも純度の高い構成となった。

06

現在地

2024年に発表されたBlack Bay 58 GMT Ref. 7939G1A0NRUは、Black Bay 58の39mmケースへ真正GMT機構MT5450-U(METAS認証)を統合した。黒とバーガンディの「コーク」ベゼル、ギルトの数字。多くの愛好家が長く待ち望んだ構成と受け止められた。2026年にはBlack Bay 58本体もMETAS規格のMT5400-Uに更新され、ケース厚は11.7mmへ縮小、五連リンクのブレスレットが選択肢に加わっている。Black Bayは発表から十数年でチューダーの中核シリーズへと成長し、過去のサブマリーナを「素材」として現代の精度規格に翻訳するという独自の方法論を確立しつつある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Black Bayの設計思想は、単一モデルの忠実な再発行(リイシュー)の対極にある。1954年から1999年まで存在したチューダー・サブマリーナのうち、特定の一本を選んで復刻するのではなく、複数世代から最も雄弁な要素を抽出し、ひとつの「文法」として再構築する。これがブラックベイの方法論である。

中核となる意匠言語は四つに整理できる。第一に、雪片の形を取る「スノーフレーク」ハンド。1969年のRef. 7016で初めて採用されたこの針は、低照度下での視認性向上を求めた仏海軍ダイバーの要望に応えて設計されたと伝わる。第二に、ドーム型サファイアクリスタル。ヴィンテージのプレキシガラス風防が描いた湾曲を、現代の耐久素材で置き換えている。第三に、ダイアル上の古いチューダー・ローズのロゴと、年代によってはギルトのアクセント。盾のロゴ採用以前の意匠を呼び戻す装飾である。第四に、リベット風ブレスレットや、潜水ベゼルの幾何学。1950年代の道具感を、現代の仕上げ精度で再現している。

ブラックベイをもっとも特徴づけるのは、しかし「サブマリーナ」の名を文字盤から外した判断である。歴史的シリーズ名を継承せず、新たな名を与えた。これは「過去のモデルの再生産」ではなく「過去を素材として現在のものを設計する」という宣言にほかならない。同時代の競合——たとえばオメガのシーマスター300やブランパンのフィフティ・ファゾムスがそれぞれ単一の歴史的モデルを基点とするのに対し、ブラックベイは複数のRefの統合体として立ち上がっている点で位相が異なる。

変わったものと変わらなかったものの境界線も明瞭である。ケース径は41mmから39mm、37mmへと小径化が進み、ムーブメントはETA 2824から自社MT5602系へ、さらにMETAS認証規格へと進化した。一方で、スノーフレーク針の輪郭、ドーム風防の曲面、ベゼルの目盛り配置、ローズのロゴ——シリーズを一目で識別させる視覚の核は十数年を通じて変わっていない。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2012-2016
ETA Cal. 2824-2
Black Bay初期、38時間PR、ETAベース。
2016-現在
Cal. MT5602
Tudor初の自社製、70時間PR、Kenissi製。
2021-現在
Cal. MT5602-1U
Ceramic用METAS版、Master Chrono機。
2023-現在
Cal. MT5602-U
標準モデル用METAS版、現行機。
2016-現在
Cal. MT5601
Bronze 43mm用、5602の拡大版。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2012

初代Black Bay誕生

79220R (Burgundy)
2012発表、41mm鋼ケース、Cal.2824-2、burgundy起点機。
2014-2015

色展開と意匠定着

79220B 79220N
Blue/Black bezel追加、ETA時代のBlack Bay意匠が定着。
2016-2020

自社製Cal.MT5602

79230系
Cal.MT5602導入、COSC、70時間PR、現代Black Bayの骨格機。
2017-2022

Date初投入

79730 (BB Steel)
BB初の日付付Ref.79730、Steel/S&G二色展開、サイズ拡張期。
2021-現在

Ceramicと初METAS

79210CN (Ceramic)
全ceramic黒ケース、Cal.MT5602-1U、初のMETAS認定機。
2023-現在

METAS化と意匠刷新

M7941A1A0RU
Cal.MT5602-U搭載、13.6mm薄型化、T-fit+Jubilee。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive