03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. 自社製ムーブメント路線とクロノグラフ
チューダーは、「Manufacture Tudor」の頭文字を冠した自社製の自動巻MT56系を、第2世代のペラゴスやブラックベイに載せていた。70時間のパワーリザーブ、シリコン製のヒゲゼンマイ、調整錘付きのテンプ、COSCの認定を備えた機械で、ブランドの新しい技術の土台となった。ただし、この系統にクロノグラフは含まれていなかった。
2. ブライトリングとの相互供給
2017年のバーゼルワールドで、チューダーはヘリテージ・ブラックベイ・クロノグラフを発表し、MT5813を初めて載せた。SJXによれば、名前に「Manufacture Tudor」を意味するMTを冠しながら、MT5813はブライトリングが製造する機械であり、チューダーはそのことを率直に明かした。中身はブライトリングが2009年に発表した自社製のクロノグラフ、Cal. 01(B01)の変種である。両社は数年前から協力関係にあり、その見返りとして、チューダーは第2世代のペラゴスやブラックベイに載る自社製の自動巻MT56系をブライトリングに供給する。SJXは、双方が自社の需要を上回る生産能力を持っていたとみられることから、この相互の取り決めは理にかなっていると評している。
3. B01からMT5813への改変
B01とMT5813は同じ機構の土台を共有するが、チューダーは独自の手を加えた。大きな違いは調速機で、チューダーの自社製ムーブメントと同じ、4つの調整錘を持つフリースプラングのテンプを使い、シリコン製のヒゲゼンマイを組み合わせる。外見の違いとしては、受けと地板のサンドブラスト仕上げと、チューダー独自のローターの意匠がある。文字盤の側では、経過分の積算計が一般的な30分ではなく45分となっている。
4. 搭載モデルの広がり
MT5813を積むブラックベイ・クロノは、2021年にパンダ文字盤のモデルなどへ刷新された。SJXは、外観はほぼ同じながらケースがわずかに薄くなったと書いている。同じ基盤のB01を積むブライトリングのプレミエより、まだ少し厚いという。2024年には、自転車のチーム、チューダー・プロ・サイクリングにちなむペラゴスFXDクロノ・サイクリング・エディションにも載った。2026年には、直径39mmのブラックベイ・クロノ39が加わっている。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
基本構成
MT5813は、両方向巻き上げのローターを持つ自動巻きクロノグラフ・キャリバーである。振動数は28,800vph (4Hz)、石数は41石、パワーリザーブは約70時間。表示は時・分・小秒、6時位置の日付、そしてクロノグラフ(中央の積算秒針と45分積算計)である。
クロノグラフ機構──コラムホイールと垂直クラッチ
クロノグラフの起動制御には、コラムホイール方式が採用される。コラムホイールとは、円周上に複数の柱(コラム)を配置した回転部品で、ボタン操作のたびに一定角度回転し、レバーを切り替えてスタート/ストップ/リセットを制御する機構である。この方式の利点は、ボタン操作の感触が均質で、操作中の誤動作が起きにくいことにある。半面、コラムの精密な加工と各レバーの調整に高い精度を要する。
計時系と原動機構の接続には、垂直クラッチが用いられる。クロノグラフ秒針を駆動する車を、軸方向に重ねた摩擦で接続する方式で、水平に歯車を噛み合わせる方式で起こりやすい始動時の秒針の跳ねを抑え、滑らかに動き出す。SJXは、コラムホイールと垂直クラッチが、ロレックス・デイトナのCal. 4130のような中級から高級の現代クロノグラフに標準的な構成だと説明している。Monochromeも、一体型の構成を持つ現代の上級クロノグラフと位置づける。
調速系──シリコンのヒゲゼンマイと可変慣性テンプ
調速機の中核は、シリコン製の非磁性ヒゲゼンマイと、4つの調整錘を持つフリースプラングのテンプである。シリコンは、温度変化による弾性の変化が金属製のヒゲゼンマイより小さく、磁気の影響を本質的に受けない素材で、精度の長期の安定に寄与する。
フリースプラング方式は、緩急針(レギュレーター)を用いず、テンプ自体の慣性モーメントを錘で整えて歩度を調整する設計である。緩急針による調整に比べ、衝撃によるヒゲゼンマイの位置ずれや、それに伴う歩度の変動が起こりにくい。このテンプは、チューダーの自社製ムーブメントと同じものである。
自動巻機構とパワーリザーブ
ローターの意匠はチューダー独自で、自社製ムーブメントと共通する。満巻きの状態で約70時間、すなわち3日間の駆動が可能で、金曜の晩に外した時計が、月曜の朝にも動き続けている計算になる。
仕上げとクロノメーター認定
仕上げは、受けと地板のサンドブラストを基調とした工業的な意匠である。SJXは、構造はしっかりしていて凝ってさえいるものの、明らかに機械で作られていると書いている。鋼のクロノグラフのレバーは打ち抜きのうえバレル研磨され、金色の歯車はサンドブラスト仕上げ、地板の縁の渦巻き模様も機械で彫られている。
精度はスイス公式クロノメーター検査協会(COSC)の認定を受ける。Monochromeによれば、チューダーはさらに日差-2/+4秒という精度を掲げている。