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CALIBER · TUDOR

MT5813

自動巻 Automatic Analog

2017年、ブライトリングB01を基盤にチューダーが磨き上げたコラムホイール式自動巻クロノグラフ

MT5813
movement · MT5813
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

キャリバーMT5813は、2017年のヘリテージ・ブラックベイ・クロノグラフ Ref. 79350で初搭載されたチューダーの自動巻クロノグラフキャリバーである。ブライトリングが2009年に発表した自社製クロノCal. B01を基盤とし、シリコン製ヒゲゼンマイを備えた可変慣性テンプと専用仕上げを組み合わせた、両社の協業による産物である。コラムホイールと垂直クラッチによる本格的な構成を持ち、振動数28,800vph (4Hz)、70時間のパワーリザーブ、COSCクロノメーター認定を備える。現行のブラックベイ・クロノとペラゴスFXDクロノに搭載される、チューダーのクロノグラフラインの基幹ムーブメントである。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerTudor
ReferenceMT5813
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels41 石
Power reserve70 h
Movement ⌀33.8 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Column wheel
AdditionalChronometer
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 自社製ムーブメント路線とクロノグラフの空白

チューダーは2015年、自社製キャリバーMT5621をペラゴスに搭載し、長らくETA系ムーブメントに依存してきた供給体制から自社開発路線へと舵を切った。「Manufacture Tudor」の頭文字を冠するMT56シリーズは、70時間のパワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ、可変慣性テンプ、COSC認定という現代的スペックを揃え、ブランドの新たな技術基盤として急速に拡張された。

ただし、この系統は3針およびGMT機構までを射程とし、クロノグラフを含まなかった。独自開発には数年単位の時間と巨額の投資を要する。同じグループのロレックスにはCal. 4130という熟成された自社製クロノキャリバーが存在するが、これを供与する選択は採られなかった。

2. ブライトリングとの相互供給協定

2017年、チューダーはバーゼルワールドでヘリテージ・ブラックベイ・クロノグラフ Ref. 79350を発表し、MT5813を初搭載した。同時に明かされたのが、ブライトリングとの相互供給協定である。チューダーはB01の供給を受けてMT5813として採用し、ブライトリングはチューダーのMT5612をベースとしたCal. B20をスーパーオーシャン・ヘリテージIIなどに搭載する。完成度の高い既存ムーブメントを相互融通する形で、開発投資の重複を避け互いの不得意領域を補完する合理性を持つ。

基盤となったB01は、ブライトリングが2009年に発表した同社初の完全自社製クロノグラフキャリバーである。コラムホイールと垂直クラッチを備えた本格的な機構として設計され、ラ・ショー=ド=フォンの専用工場で生産される。

3. B01からMT5813への改変

B01とMT5813は同じ機構基盤を共有するが、調速機・カウンター配置・仕上げの三領域で明確な差異がある。

機構面で最も重要な差異は調速機である。MT5813はチューダーのMT56シリーズと共通する機構──四つの慣性調整ブロックを備えるフリースプラング(自由テンプ)・バランスと、非磁性のシリコン製ヒゲゼンマイ──を組み込む。温度変動と磁気の影響を抑え、長期にわたる精度安定性を担保する設計である。

レイアウト面では、B01が三つのカウンターを持つトリコンパクス構成であるのに対し、MT5813は3時位置に45分積算計、9時位置にスモールセコンドを置くビコンパクス構成へと変更される。45分計はダイバーズウォッチとクロノグラフを融合させたブラックベイ・クロノの設計意図を反映する。石数は41石(B01は47石)で、ビコンパクスへの簡略化に対応する。

仕上げはサンドブラスト処理を基調とした工業的な意匠で、装飾性を排した実用主義として一貫する。ローターはタングステン製のモノブロック構造で、チューダー独自のデザインが与えられる。

4. 搭載モデルの拡張と生産体制

初搭載のブラックベイ・クロノ Ref. 79350は、その後パンダ/逆パンダ、S&G、ダーク、フラミンゴブルー等のダイヤルバリエーションへ展開された。2023年にはペラゴスFXDクロノ「アリンギ・レッドブル・レーシング」Ref. 25807KNでカーボンコンポジットケースに搭載され、2024年にはサイクリングエディション Ref. 25827KNが発表されている。

生産体制面では、2023年にチューダーがスイス・ル・ロックルに独自のマニュファクチュール施設を稼働させたことが大きな転換点となる。創業100周年に合わせた整備で、自立的な生産体制を構築する象徴的な動きとなった。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

基本構成

MT5813は、直径30.4mm、厚さ7.23mmの自動巻きクロノグラフキャリバーである。振動数は28,800vph (4Hz)、石数は41石、パワーリザーブは約70時間。両方向巻き上げのローター方式を採用する。表示機能は時・分・秒(ハック機能付)、日付、クロノグラフ(中央積算秒、9時位置スモールセコンド、3時位置45分積算)である。日付窓は6時位置に設けられる。

クロノグラフ機構──コラムホイールと垂直クラッチ

クロノグラフの起動制御には、コラムホイール方式が採用される。コラムホイールとは、円周上に複数の柱(コラム)を配置した回転部品で、ボタン操作のたびに一定角度回転し、レバーをカム的に切り替えてスタート/ストップ/リセットを制御する機構である。この方式の利点は、ボタン操作の感触が均質で、操作中の誤動作が起きにくいことにある。半面、コラムの精密な切削加工と各レバーの調整に高い精度を要するため、廉価なクロノグラフでは採用されにくい。

計時系と原動機構の接続には、垂直クラッチが用いられる。クロノグラフ秒針を駆動する歯車が、四番車と垂直方向(軸方向)に接続するこの方式は、噛み合いの瞬間にクロノ秒針が跳ねる現象──水平方向のスイング・ピニオン式で発生しやすい──を抑え、滑らかにスタートする。さらに、計時中の主機への負荷が小さく、振幅低下による精度への影響が抑えられる。コラムホイールと垂直クラッチの組み合わせは、現代の高級クロノグラフキャリバーの典型的な構成であり、ロレックスCal. 4130系などと同じ系譜に位置する。

調速系──シリコンヒゲゼンマイと可変慣性テンプ

調速機の中核は、シリコン製の非磁性ヒゲゼンマイと、四つの慣性調整ブロックを持つフリースプラング(自由テンプ)・バランスである。シリコンは、温度変動による弾性係数の変化が金属製ヒゲゼンマイよりも小さく、磁気の影響を本質的に受けない素材で、長期的な精度の安定性を担保する。

フリースプラング方式は、緩急針(レギュレーター)を用いず、テンプ自体の慣性モーメントを微調整ネジで整えて歩度を調整する設計である。緩急針による調整に比べ、衝撃によるヒゲゼンマイの位置ずれや、それに伴う歩度の変動が起こりにくい。テンプブリッジは橋渡し型のトラバース構造で、左右両端から支持されるため、片持ち式に比べ外部衝撃に対する耐性が高い。

自動巻機構

ローターはタングステンを用いた一体成型のモノブロック構造である。タングステンは比重19.3に達する重金属で、限られた体積で大きな質量を確保でき、巻上げ効率の向上に寄与する。これにより腕の動きが少ない場面でも一定のトルクが香箱に伝達される。ローターは両方向巻き上げ式で、双方向の回転をリバーサー機構を介して巻上げに変換する。

香箱のフル巻上げ状態で約70時間の駆動が可能となる。これは金曜の晩に外した時計が、月曜の朝に手巻きを要せずそのまま稼働している水準で、週末の連続着用と平日の着用を切り替える使用パターンに対応する設計と言える。

仕上げとクロノメーター認定

仕上げはサンドブラスト処理を基調とした工業的な意匠で、地板とブリッジには装飾彫りを伴わない一貫した質感が与えられる。ローターには独自のレーザー加工によるパターンが施される。スチール製のソリッドケースバックに隠れる構造のため、装飾性よりも組立精度と耐久性が優先された設計判断と捉えられる。

精度認定は、スイス公式クロノメーター検査機関(COSC)による認定を取得する。COSC基準は単体ムーブメント状態で日差-4/+6秒以内であるが、チューダーはケーシング後の完成状態で日差-2/+4秒以内という、より厳格な自社基準を適用する。これは組立公差・ケース効果・耐磁性能までを含めた、ケーシング後の総合的な精度保証となる。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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