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SEIKO · SERIES

Prospex Divers

プロスペックス ダイバーズ

1965年の62MASを起点に、飽和潜水を独自の構造で解いた、日本のダイバーズ系譜

39.9 mm – 47.7 mm
01 — 概要 / SUMMARY

セイコー プロスペックス ダイバーズは、1965年に発表された Ref. 6217-8000「62MAS」を起点とする、日本最初のダイバーズウォッチに連なる系譜である。300m級のRef. 6215-7000、世界初のハイビート・ダイバーRef. 6159-7001、ヘリウムエスケープバルブを排した1975年の「ツナ」へと発展し、独自の構造で深海と向き合ってきた。現行は1965年系譜のSPB143/SPB453、復活したマリーンマスター、頂点のSLA081、そして大衆価格帯のタートル、サムライ、モンスターまで、プロスペックスの冠下に展開される。

02 — STORY · 物語

Prospex Divers(プロスペックス ダイバーズ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1965年、ダイバーズの「日本流」誕生

スイスでブランパン Fifty Fathoms とロレックス サブマリーナーが世に出てから12年。1965年6月、セイコーは日本初のダイバーズウォッチ Ref. 6217-8000 を発表した。後に「62MAS」と呼ばれることになる、SeikoMAtic Selfdater を語源とする略号を名に持つ機械式150m防水である。

ケース径37mm、Cal. 6217A は毎時18,000振動の自動巻き。最初の数か月のみ生産された6217-8000 は後に「スモールクラウン」と呼ばれ、グローブ越しでも操作可能な大型リュウズを求めて同年中にRef. 6217-8001(ビッグクラウン)へ更新された。仕様改良の即応性が、後年のセイコー・ダイバーズの開発姿勢を予告している。

1966年から1969年にかけて、日本南極地域観測隊(JARE)の隊員がセイコー・ダイバーを携行し、極限環境下の実用検証を担った。

02

プロフェッショナルという思想

1967年、セイコーは300m防水のRef. 6215-7000 を投入した。ケースバックを持たない一体構造(モノブロックケース)を採用し、リュウズは4時位置へ移されている。手首と干渉せず、グローブ越しでも掴みやすい位置である。以降、セイコーのプロ系ダイバーズの大半がこの4時位置を継承していく。Cal. 6215A は毎時19,800振動の自動巻きであった。

生産期間は約1年。翌1968年、Cal. 6159A を搭載するRef. 6159-7000(後にRef. 6159-7001)が登場し、文字盤に「PROFESSIONAL」の文字が初めて刻まれた。毎時36,000振動のハイビートを実装した世界初のダイバーズであり、セイコー自身が公式に「最初のプロフェッショナル・ダイバー」と位置づけるモデルである。歩度精度、モノブロックの耐圧性、4時リュウズの装着性。この三点が、現代のプロ系ダイバーの基本骨格として完成した。

03

1975年、「ツナ缶」が解いた難題

1968年、広島県呉市の飽和潜水士からセイコーに一通の手紙が届いたと伝わる。セイコーのダイバーが飽和潜水の現場では破損する、という指摘であった。同時代、ロレックス Sea-Dweller やオメガ Seamaster 600 はヘリウムエスケープバルブで内圧を逃がす方式を採っていたが、セイコーは異なる解を模索した。

開発を率いたのは技術者・徳永郁夫。チームは7年をかけてヘリウム侵入そのものを抑制する設計に到達する。L字型ガスケットと一体ケース構造により、ヘリウム透過率を従来比で約100分の1に圧縮し、エスケープバルブを廃した。完成したRef. 6159-7010 は1975年に発表され、20件を超える特許に支えられていた。

世界初のチタン製600m飽和潜水対応ダイバー。チタンとセラミックの外装シュラウドが、缶詰のような外観から「ツナ」の愛称を生んだ。

04

量産化と名称の統合

1968年のRef. 6105 は150m防水のレクリエーション・ダイバーで、映画『地獄の黙示録』のウィラード大尉が腕にしていたとされ「キャプテン・ウィラード」の愛称を得た。1976年のRef. 6306/6309 はクッションケースから「タートル」と呼ばれる。1978年のRef. 7549-7000「ゴールデンツナ」はクォーツ式600m飽和潜水ダイバー、1986年のRef. 7C46-7009/7010 では1000m防水とセラミック・シュラウドが導入された。

これら高機能スポーツウォッチ群を統合する呼称として、セイコーは1990年代に「PROSPEX」(Professional Specifications の略)を採用する。当初は日本国内(JDM)中心の展開で、2014年に世界市場へ正式に再展開された。2000年のRef. SBDX001「マリーンマスター300」は、Cal. 8L35 とRef. 6159-7001 の意匠を継ぐ現代版プロフェッショナルとして、シリーズの中核に据えられている。

05

再解釈の時代

2017年、Baselworld でRef. SLA017(SBDX019)が登場した。1965年の62MAS をほぼ忠実に再現した数量限定2,000本のモデルで、ケース径39.9mm、Cal. 8L35、200m防水。翌2018年のRef. SLA025(SBEX007)は、Ref. 6159-7001 の50周年を機にCal. 8L55(毎時36,000振動)を搭載した300m防水のハイビート再現である。

2020年にはRef. SPB143 を頂点とする「1965 Diver's Modern Re-interpretation」が投入される。ケース径40.5mm、Cal. 6R35、200m防水。現代的な解釈に踏み込んだ意匠は広範な支持を得て、2024年にはケース径40mmのRef. SPB453 が後継となった。

06

現代の到達点

2019年、スプリングドライブCal. 5R65 を搭載するプロスペックス LX シリーズが発表され、ジュネーブ・グランプリ(GPHG)2019 のダイバーズ部門賞を受賞した。2024年にはJDM中心だった「マリーンマスター」が正式にグローバル展開され、Cal. 6L37 を搭載する39.5mm径・厚12.3mmの薄型機械式ダイバーが世に出る。62MAS の系譜を直接受け継ぐコレクションである。

2025年7月、Ref. SLA081 が登場する。1968年のRef. 6159-7001 を意匠の基底に、1975年のツナで培われたモノブロック構造とL型ガスケット技術を統合し、Cal. 8L45 を搭載した600m飽和潜水対応のチタン製プロフェッショナル。60周年記念の限定600本。2026年にはMarinemaster 1968 Heritage Diver のRef. HBF001、JAMSTEC との連携を表したRef. HBF002 が発表された。1965年の62MAS から60余年、シリーズは原点を絶やすことなく更新を続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

セイコー プロスペックス ダイバーズが60年以上にわたって維持してきた中核は、「道具としての時計」という一貫した立場である。装飾を犠牲にして実用を残すのではなく、実用そのものを意匠化する設計判断、と言ったほうが正確だろう。

視認性が最も明確な表れである。62MAS 以来の太いハンドと面の大きいインデックス、強コントラストの文字盤、そして高輝度のLumiBrite(1993年初出)。これらは深海の限られた照度下で時刻を読むためにあり、装飾要素として配置されたものではない。文字盤上の情報量は意図的に抑えられ、必要な秒読みのみが瞬時に把握できる。

ケース構造もまた、用途から逆算されている。Ref. 6215-7000 で導入された4時位置のリュウズは、装着時に手首と干渉せず、グローブの厚みでも操作しやすい位置として選ばれた。多くのスイス勢が3時位置のリュウズガードで対応するなか、セイコーは位置そのものを変える解を選び、以降のプロ系で継承している。

モノブロックケースは、Ref. 6215-7000 から現代のRef. SLA081 まで貫かれる構造哲学である。ケースバックを排し、文字盤側から機械を組み込むこの方式は、潜在的な漏水経路を物理的に減らすことを目的とする。1975年のRef. 6159-7010 で完成したL型ガスケット技術は、ヘリウムエスケープバルブを設計から排除した。スイス勢の解とは異なる、機構の追加ではなく構造の最適化による解である。

ツナ系のシュラウド構造は、シリーズ内でも特異な意匠だが、その目的は明快である。ベゼルとケースを外周のチタン(後にセラミック)で囲うことで、衝撃と干渉から機構を守る。「装飾的に見える形が、機能に従っている」という設計言語の象徴と言ってよい。

意匠の継承という観点では、62MAS のケース造形がRef. SPB143、SPB453、HBF001 まで連続している点が興味深い。短いラグ、角を持つケースサイド、シンプルな円形ベゼル。田中太郎の「Grammar of Design」(1962年)はグランドセイコーで光の演出として開花したが、プロスペックスにおいては幾何学的な明瞭さと面の整然とした構成として、より道具的に翻訳されている。

同時代のロレックス サブマリーナーが3時リュウズと安定したケース言語を磨き込み、ブランパン Fifty Fathoms やオメガ Seamaster 300 が独自の意匠を継承するなか、セイコーは異なる出発点と異なる解で深海に向き合い続けている。同じ目的に対し、異なる構造で答えること。これがプロスペックス ダイバーズの設計思想を最も端的に表す態度であろう。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1965-1970
Cal. 6217
18,000bph、62MAS用、日本初のダイバー機。
1968-1971
Cal. 6159A
36,000bphのHi-Beat、GS派生の300m用。
1976-1988
Cal. 6309
7S26の祖型、Turtle系に搭載された普及機。
1975-現在
Cal. 7C46 (Tuna quartz)
Tuna 1000m用、高精度quartzの長寿機。
2000-現在
Cal. 8L35
Grand Seiko Cal.9S55派生、MM300系用。
2017-現在
Cal. 6R35
70時間PR、SPB143系などmid-rangeに搭載。
2024-現在
Cal. 8L45
新世代Hi-Beat、HBF001/HBF002搭載機構。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1965-1970

Japan初のダイバー

6217 (62MAS)
150m防水、Cal.6217搭載、南極観測隊向けに開発、ダイバー史の起点機。
1968-1971

300m+Hi-Beat

6159-7001
初の300m防水、Hi-Beat Cal.6159A、monobloc構造で量産。
1975-1980s

Tuna case誕生

6159-7010 (Tuna)
外装シュラウド構造のTuna case誕生、professional diver用。
1976-1988

Turtle期

6306 6309 (Turtle)
クッション型ケース、200m、Cal.6309、recreational普及機。
2000-2015

Marinemaster 300復活

SBDX001 (MM300)
Cal.8L35搭載、monobloc復活、GS派生でMM300期を確立。
2017-現在

62MAS復刻期

SLA017 SPB143系
8L35のSLA017、6R35のSPB143系で1965年意匠を再構築。
2024-現在

8L45と新世代MM

HBF001 HBF002
新Cal.8L45搭載、1968年6159-7001意匠継承の現行旗艦。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 6 モデル

6 references in archive