設計思想
9年の沈黙と、復活への伏線
初代サムライは、2004年にチタン製のSBDA001(黒)・SBDA003(青)・SBDA005(橙)としてJDM限定で登場し、その後ステンレス製のSNM009系へと拡張された。鋭角的な刀身を思わせる剣型針が愛称の由来であり、生産は2008年頃に静かに幕を閉じる。以降、入手難から中古市場で価格が上昇し、ファンの間で半ば伝説化していた。
2016年、ドイツ市場限定の「ブルーラグーン」SRPB09が予告編のように投入され、6,000本が短期間で完売。市場の渇望が確認されたのち、セイコーは2017年のバーゼルワールドで本格的な復活コレクションを発表する。
2017年コレクションにおける位置づけ
復活時に同時投入されたのは、SRPB49(青文字盤・SSブレス)、SRPB51(黒文字盤・SSブレス)、SRPB53(青文字盤・ペプシベゼル・ラバー)、SRPB55(黒PVDケース・金差し色・ラバー)の4本である。SRPB51はこのうち最も保守的な構成、すなわち黒文字盤と黒/グレーのアルミニウムベゼル、ステンレスブレスを纏う「基準点」として位置づけられた。日本国内向けにはSBDY009として展開され、文字盤に「MADE IN JAPAN」が刷られる。
二代目が選んだもの、捨てたもの
復活にあたり、最も象徴的な変更は剣型針の廃止である。初代の名の由来であった鋭角的なハンドセットは、モンスター系の幅広い剣型針へと置き換えられた。視認性と現代ダイバーズとしての量感を優先した判断と読める。一方で、鋭く面取りされたラグや、独立したクラウンガード、4時位置のねじ込み式リューズといった「サムライらしさ」の骨格は維持された。後年、2020年には「キングサムライ」SRPE35等としてサファイア風防・セラミックベゼル仕様の上位機が派生し、2024年には全面再設計の41.7mmモデル(SRPL11/13/15)へと世代が進む。SRPB51は後にSRPF03へとリファレンス番号が振り直され、内容は据え置かれた。
意匠分析
ケースは43.8mm径・厚さ13.4mm、ラグ間48mmの鋼鉄製である。リューズ脇の極小面を除きほぼ全面がサテン仕上げで、ポリッシュをほとんど用いない潔さが工具らしい質感を作る。多面体的にカットされたケースサイドと、急峻に絞り込まれたラグが、数値以上の硬質な印象を生む。
リューズは4時位置のオフセット配置で、ダイヤモンドカットの滑り止めを備える。クラウンガードは独立したブロックとして突き出し、初代サムライの造形言語を踏襲する。単方向回転ベゼルには、黒とグレーの2トーンを刷ったアルミニウムインサートが収まる。エッジには細かな鋲打ちのパターン(ホブネイル)が施され、グローブ越しでも回しやすい。12時位置のピップにはルミブライトが充填される。
文字盤はクル・ド・パリ(ワッフル)パターンによる立体的なテクスチャを纏う。これは初代にはなかった意匠であり、二代目の視覚的な署名となる。バー型のアプライドインデックスとモンスター由来の太剣型針にはルミブライトが厚く充填され、夜間視認性は高い水準にある。針はサテンではなくポリッシュ仕上げで、ワッフル地のマットなテクスチャに対してエッジを際立たせる役割を担う。秒針の先端には赤が差し、単色構成の中で時刻の動きを浮かび上がらせる。
風防はハードレックス(強化ミネラル)で、サファイアではない。ブレスは3連の鋼鉄製、押しボタン式の三つ折れバックルを備える。ラグ幅は22mmで、社外ストラップとの交換余地は広い。
系譜と歴史
2017年3月、バーゼルワールドにて二代目プロスペックス・サムライ・コレクションが発表され、SRPB51K1は同年第4四半期に市場投入された。発表時の構成はSRPB49・51・53・55の4本で、SRPB51はこのうち黒文字盤・ステンレスブレス仕様として位置づけられた。日本国内向けには、文字盤に「MADE IN JAPAN」を刷ったSBDY009として並行的に展開される。
投入と同年の2017年末から2018年にかけて、コレクションには派生が追加されていく。SRPB97(オレンジ)、SRPB99(PADIコラボ)、SRPC43(黒/金「ゾンビ」)、SRPC93(セイブ・ジ・オーシャン)、SRPD03(ドーン・グレイ)など、色違い・特別仕様が継続的に展開された。
2020年には上位派生として「キングサムライ」SRPE33/35/37が登場し、サファイア風防とセラミックベゼル、サイクロップスを備える形で同じ43.8mmケースを継承した。SRPB51本体はこの時点でも併売が続けられた。
その後、セイコーは型番体系の整理を進め、SRPB51は内容を据え置いたままSRPF03(JDMはSBDY009継続)へとリファレンス番号が振り直された。2024年、20周年を機に発表されたSRPL11/13/15では43.8mmから41.7mmへとケースが縮小され、剣型針が復活した全面再設計が施されたため、SRPB51系統は二代目世代の最終形として位置づけられる。