設計思想
1. ロレゾール・デイトナの系譜
デイトナにロレゾール仕様が加わったのは、1988年の16523が最初とされる。オイスタースチールと18Kイエローゴールドを組み合わせるこの構成を、ロレックスは1930年代初頭から用いてきた。1933年には名称も商標登録されている。
以後、ロレゾール・デイトナは2000年の116523、2016年の116503と世代を重ねた。126503はその4代目にあたり、本機126503-0003は黒文字盤の仕様である。スチールの実用性と金の華やかさを1本に同居させるという役割は、1988年以来変わっていない。
2. 2023年の刷新で変わったもの、残ったもの
2023年、ロレックスはデイトナ発表60周年を機に全ラインナップを更新した。前任116503の黒文字盤(116503-0004)から本機への移行で、ムーブメントはCal.4131へ替わった。ケースは外装の造形が改められ、文字盤の意匠も細部が描き直されている。
一方で、40mm径と100m防水、金の固定タキメーターベゼル、オイスター・ブレスレットという骨格は継承された。オイスターロック・クラスプとEasylinkによる調整機構も前任から続く。刷新は輪郭を保ったまま細部を締め直す方向で行われ、黒と金という配色の組み立ても踏襲された。
3. 黒文字盤という選択
126503の現行カタログには4種の文字盤が並ぶ。白ラッカーに金色のカウンターリングを合わせた-0001と、ゴールデン文字盤に黒いリングの-0004。これにダイヤモンドを配した黒と金の-0002と、本機-0003が加わる。本機は、-0001と同じ金色のリングを黒地の上に置いた構成といえる。
黒文字盤同士で比べると、-0002が金色のカウンターを備えるのに対し、本機は金をリング、インデックス、針という「線」に限る。金のベゼルとセンターリンクが外周を囲み、文字盤だけが暗く沈む。ツートーンの華やかさを保ちつつ、計器としての読み取りやすさを前に出した組み合わせと読める。
4. 2026年以降の位置
2026年には、オイスタースチールとプラチナを組み合わせたロレジウム仕様の126502が、オフカタログのモデルとして加わった。イエローロレゾール以外の2素材構成がデイトナに現れたのは、これが初めてとされる。それでも通常カタログにおいて、金とスチールを組み合わせるデイトナの役割は、引き続き126503が担っている。
意匠分析
ケースの中央部はオイスタースチールの一体成形で、ベゼル、リューズ、2つのプッシャーに18Kイエローゴールドが充てられる。金はケースの上面と操作部に集まり、側面から見るとスチールの胴に金の縁取りが載る構成になる。2023年の刷新ではラグと側面の造形が見直され、光の反射でケースの輪郭が際立つよう面が整えられた。厚みは11.90mmとされ、前任からわずかに薄くなっている。
ベゼルは固定式で、18Kイエローゴールドの地にタキメーター目盛が彫り込まれる。同世代のセラクロム仕様は外周に金属の細い縁を得たが、本機はベゼル全体が金属であるため、縁は研磨のみで仕上げられる。刷新前後で、金属ベゼルという本機の性格は変わっていない。
黒文字盤のカウンターは吹き付け塗装(スプレーコート)で仕上げられ、外周を金色のリングが縁取る。リングは前世代より細く描き直され、18Kゴールド製のアプライドインデックスも細く長くなった。金は面ではなく線として置かれ、黒地の余白が広く残る。針とインデックスにはクロマライト夜光が施され、暗所では青く光る。
ブレスレットは3連のオイスター・ブレスレットである。センターリンクが18Kイエローゴールド、両側のリンクがオイスタースチールとなる。センターリンクは鏡面、外側はサテン仕上げとされ、ケースと同じ金とスチールの割り振りが手首まで続く。クラスプはオイスターロック式で、Easylinkにより着用者自身が長さを約5mm調整できる。
ムーブメントは自社製のCal.4131である。脱進機には、エネルギー効率を高めた特許機構のクロナジー・エスケープメントを採用する。ヒゲゼンマイには常磁性合金製のブルー・パラクロムを用いる。ローターは肉抜きされ、ブリッジにはロレックス独自のコート・ド・ジュネーブ装飾が施された。ただし本機の裏蓋は密閉式で、この仕上げは外から見えない。シースルーバックは同世代のプラチナ仕様126506などに限られる。
系譜と歴史
前任の116503は、2016年のBaselworldで116523の後継として登場した。黒文字盤は116503-0004として展開され、Cal.4130を積むロレゾール・デイトナとして2023年まで生産された。
2023年3月のWatches and Wonders Geneva 2023で、ロレックスはデイトナの新世代を全素材にわたって発表した。ロレゾール仕様はこのとき126503として更新された。公式の発表資料で紹介されたのは白ラッカー文字盤の個体である。一方でWatchBaseは、黒文字盤の本機とダイヤモンド入りの-0002を、いずれも2023年登場として記録している。2023年10月付の保証書を伴う-0002の個体も流通しており、兄弟Refは初年度から出揃っていたとみられる。本機も初年度から公式カタログに並んだとされ、116503はこの世代交代によりカタログから外れた。
2024年から2025年にかけて、本機の文字盤、ベゼル、ブレスレットに関する公表された仕様変更は確認されていない。
2026年4月のWatches and Wonders Geneva 2026では、ロレジウム仕様の126502がオフカタログで発表された。同年、ロレックスはSuperlative Chronometer認定に、耐磁性、信頼性、耐久性の3つの評価基準を加えている。設計と製造の段階で適用される全製品共通の改定であり、現行生産の本機もこの枠組みの下で製造される。
2026年9月時点で、本機は公式サイトの現行カタログに掲載されており、生産は継続している。
出典
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