設計思想
60周年が要請した世代交代
2023年3月27日、ロレックスはWatches and Wonders Genevaでコスモグラフ デイトナの全面刷新を発表した。初代Ref.6239の登場から60周年にあたる年である。ステンレススチールの126500LNからプラチナの126506まで、ラインアップは一斉に116系から126系へ移行し、ムーブメントも2000年以来のCal.4130から新世代Cal.4131へ置き換えられた。126506はこの新世代の最上位に立つリファレンスであり、同時に、2013年にデイトナ50周年を記念して登場した初のプラチナ製デイトナ116506の直系後継でもある。プラチナ仕様の誕生から10年という、二重の節目に世へ出た1本だった。
116506から受け継いだ定式
116506が2013年に確立した「プラチナ950ケース、アイスブルー文字盤、チェスナットブラウンベゼル」という配色の定式は、126506にそのまま引き継がれた。アイスブルーはロレックスがプラチナモデルだけに用いる文字盤色であり、ブラウンのセラクロムベゼルもこの系統の専用色である。ケース径も40mmで変わらない。つまり外観上の同一性を保ったまま、世代交代の実質は内部と細部に集中している。コレクターの間で「プラトナ」と通称された前任のキャラクターを壊さないことが、設計の前提だったと読める。
デイトナ初のシースルーバック
126系デイトナのうち、発表時にシースルーバックが与えられたのはプラチナの126506だけである。デイトナ史上初の試みであり、量産オイスターモデルとしても初とされる。裏蓋の先に見えるCal.4131は、コート・ド・ジュネーブ・ロレックスによる装飾とスケルトン仕様の18ctイエローゴールド製ローターを備え、従来の工業的な仕上げとは一線を画す。機械を見せるという選択そのものが、126506をラインアップの頂点として差別化する仕掛けになっている。発表時、ロレックスが本機の価格を公表せず「要問い合わせ」としたことも、その位置づけを物語る。
派生と波及
126506には発表当初から2つの文字盤構成が用意された。バーインデックスの126506-0001と、バゲットダイヤモンドをインデックスに据えた126506-0002である。また、本機が開いた「裏蓋から機械を見せるデイトナ」という方向は、2023年6月のル・マン100周年記念モデル126529LN、さらに2026年のロレジウム仕様126502へと受け継がれていく。126506はその起点として、現行デイトナの系譜に位置づけられる。
意匠分析
ケースは40mmのプラチナ950製。径は前任116506と同じだが、プロファイルは見直され、ラグはより細くテーパーが強められた。厚みも抑えられ、わずかに薄く、長くなったと評される。WatchBaseの登録値は厚さ11.9mm。総重量は200gを超えるとされ、プラチナ特有の比重が装着感を支配する。
ベゼルはチェスナットブラウンのモノブロック・セラクロム。タキメーター目盛はモールド成形され、126系で導入された、ケースと同素材のプラチナ製エッジが外周を縁取る。セラミックの端部を金属で保護するこの構造は、前任のベゼルにはなかった要素である。ブラウンのベゼル自体もプラチナ仕様の専用色で、黒ベゼルの126500LNとの明確な識別点になっている。
文字盤はサンレイ仕上げのアイスブルー。インダイヤル外周のリングはベゼルと呼応するチェスナットブラウンのスプレー塗装で、126系での再設計によりカウンターの比率と外周チャプターリングの面積が整理された。インデックスは前任より細く長く引き直され、針とともに18ctホワイトゴールド製。クロマライト夜光が組み込まれる。
裏蓋はサファイア製のシースルーバックで、反射防止コーティングが施される。視界に入るCal.4131は、クロナジー・エスケープメント(エネルギー伝達効率を高めたロレックスの脱進機)とパラフレックス耐震機構を備え、パワーリザーブは約72時間。ケーシング後の日差±2秒というSuperlative Chronometer認定を受ける。
ブレスレットは3列リンクのプラチナ製オイスター。セーフティキャッチ付きのオイスターロックと、約5mmの延長が可能なイージーリンクを備え、重量級のケースを手首に留める。
系譜と歴史
126506は2023年3月27日、ジュネーブで開幕したWatches and Wonders 2023で発表された。デイトナ誕生60周年に合わせてラインアップ全体が126系へ世代交代した日であり、プラチナ仕様としては2013年発表の116506以来10年ぶりの刷新となった。発表当初から、バーインデックスの126506-0001とバゲットダイヤモンドインデックスの126506-0002の2構成が用意されている。出荷は発表と同じ2023年に始まったが、流通量は前任同様に限られた状態が続いたとされる。
2023年6月には、ル・マン24時間レース100周年を記念したホワイトゴールド製の126529LNが登場し、126506に続く2例目のシースルーバック付きデイトナとなった。126506自体については、発表以降、文字盤や仕様の変更は公式には案内されていない。
2026年4月のWatches and Wonders 2026では、オイスタースチールにプラチナの縁取りを組み合わせたロレジウム仕様の126502が加わり、シースルーバックを持つデイトナは3系統に広がった。一方、126529LNは2026年までにカタログから外れている。126506は2026年現在もカタログに残り、デイトナにおける唯一のプラチナ無垢リファレンスとして現行を続けている。