設計思想
第2世代アクアテラが生まれた文脈
アクアテラは2002年、コーアクシャル脱進機を組み込んだCal.2500を載せて登場した。シーマスターの中で、ダイバーズの装備を持たない日常向けの系譜である。2007年にオメガが自社開発・製造のCal.8500を発表すると、翌2008年、アクアテラはこれを搭載する第2世代へ移行した。
この刷新で変わったのは機械だけではない。平滑だった文字盤は、高級帆船の木製デッキを思わせる縦縞の「ティーク・コンセプト」に改められた。インデックスは立体的な造形となり、日付窓には枠が付いた。スポーツウォッチでありながらスーツにも合う、いわゆる「一本で済む時計」としての性格は、この世代で輪郭がはっきりしたと評される。
ブルーが加わった経緯
2008年の発表時、ステンレス仕様の文字盤はグレーとオパーリンシルバーの2色とされる。ブルーは後年に加わった色で、本機はその41.5mm版にあたる。
ブルーのアクアテラが広く知られるきっかけは、2012年公開の『007 スカイフォール』だった。ダニエル・クレイグが劇中で着けたのは38.5mmの231.10.39.21.03.001である。公式の販促には組み込まれず、クレイグ自身の好みで選ばれたと伝わる。本機は劇中着用機ではないが、同じ文字盤設計を大きなケースで受け止めた兄弟機であり、愛好家の間では「スカイフォール41」と呼ばれることもある。
前後の世代との関係
Cal.8500世代のアクアテラは、生産期間中に耐磁性能の強化を経験した。2013年には15,000ガウス超の耐磁性を持つ専用モデルが現れ、2014年にはマスター コーアクシャル仕様への展開が始まる。本機の直接の後継は、同じ41.5mmのブルーで耐磁仕様のCal.8500を積んだ231.10.42.21.03.003である。この移行に際し、日付窓の枠が省かれ、ブレスのセンターリンクが鏡面仕上げに変わったと指摘されている。
2017年にはCal.8900を載せた第3世代(220系)が登場し、ストライプは横方向に、日付窓は6時位置へ移った。つまり本機は、縦縞・3時の枠付き日付・耐磁化以前のCal.8500という3要素が揃った最後期の構成の一つといえる。後継機の変更点が明快であるだけに、この世代の意匠を確かめるための基準点として参照されることが多い。
意匠分析
ケースは41.5mm径のステンレススチール製で、オメガが古くから用いるリラ(竪琴)型のラグを持つ。ラグは側面でわずかにねじれた曲面を描き、ポリッシュとサテンの面が交互に現れる。公式値でラグ・トゥ・ラグは48.5mm、ラグ幅は20mm。ベゼルは幅広く平滑で、回転機構を持たない。そのため文字盤の占める面積が大きく、実寸以上に存在感があると評される。厚さは公式で12.95mm。150m防水とツインバレルの機械を収めた結果の数字で、ねじ込み式のリューズがその防水性を支える。
文字盤の主役は縦方向のストライプである。中央部にだけ刻まれ、外周のミニッツトラックは一段低い平滑面として分けられた。そこには5分ごとのアラビア数字が並び、ストライプの反復と対比をなす。ブルーは光の角度で明度が大きく変わり、屋内では沈んだ紺、陽光の下では明るい青に見える。
時・分のインデックスはアプライドで、ファセットを持つ矢じり形である。先端には夜光が入り、3時位置の日付窓にも同じ造形言語の枠が与えられた。針もファセット仕上げで、分針の先端は矢印形、秒針の先端にも夜光が置かれる。風防はドーム型のサファイアクリスタルで、両面に反射防止処理が施される。
ムーブメントは自社製のCal.8500である。フリースプラングテンプ、直列に配した2つの香箱、両方向巻き上げを備え、パワーリザーブは60時間。振動数は毎時25,200振動(3.5Hz)で、コーアクシャル脱進機が摩擦を抑える。時針だけを単独で動かせる機構を持ち、旅先での時差修正に向く。シースルーバックからは、アラベスク状のジュネーブウェーブで装飾されたブリッジとローターが見える。
ブレスは3連リンクで、留め具はバタフライクラスプである。仕上げはサテンを主体とし、控えめな外観に寄与していたとされる。一方、工具を使わない長さの微調整機構は備えない。
系譜と歴史
前史として、オメガは2007年に自社開発・製造のCal.8500を発表した。翌2008年、アクアテラはこれを搭載する第2世代へ移行し、縦縞のティーク・コンセプト文字盤が導入された。この時点でステンレスの41.5mmに用意されたのは、グレーとオパーリンシルバーの文字盤とされる。
ブルー文字盤の本機がカタログに加わった正確な年月は、公式資料では確認できていない。ただし2013年付の保証書を伴う個体が複数流通しており、遅くともこの頃には販売されていた。2012年公開の『007 スカイフォール』では、38.5mmの兄弟機231.10.39.21.03.001が劇中で着用された。
2013年、アクアテラには15,000ガウス超の耐磁性を持つ専用モデルが加わった。2014年以降、オメガはマスター コーアクシャル仕様のムーブメントを主要キャリバーに展開していく。その流れの中で、41.5mmのブルーは耐磁仕様Cal.8500を積む231.10.42.21.03.003へ引き継がれた。本機の生産終了時期は公式に示されていないが、この後継への移行に伴うものとみられる。
2015年公開の『007 スペクター』にあわせ、ブルー文字盤のアクアテラ限定モデル231.10.42.21.03.004が登場した。2017年にはCal.8900を搭載する第3世代が発表され、縦縞と3時位置の日付という本機の構成はシリーズの主流から外れた。現在、本機は公式サイト上で取り扱い終了と表示されている。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア Review: Omega Seamaster Aqua Terra Master Chronometer
- 02 専門メディア Hands-On Omega Seamaster Aqua Terra 2017 Review
- 03 専門メディア Omega 231.13.39.21.01.001 Aqua Terra 150M Co-Axial 38.5
- 04 オークション Omega INTERSECT: Online Auction
- 05 ブログ Omega Seamaster Aqua Terra 'Skyfall'
- 06 ブログ Omega Seamaster Aqua Terra Chronometer